やしあか動物園の妖しい日常

流川おるたな

秘密の場所

 それにしても、あまり進捗しないブログの計画は時間が勿体ない気がする。
 何か別の仕事はないだろうか...試しに訊いてみよう。

「久慈さん、ホームページの更新は終わっているので、わたしでもやれそうな仕事があれば回してください」

「お、丁度良かった。これをお願いしようと思っていたんだよ」

 どうやらタイミングが良かったようで、久慈さんが資料の束をわたしのデスクに置いた。

「この資料を5枚で1部として30部作ってくれないかな?ホッチキスはデスクの引き出しに入ってると思う」

「了解です!え~っとホッチキスはデスクの引き出しに...あっ!ありました」

 言われた通り資料をホッチキスで止めて作成して行く。
 単純作業はあまり頭を使わなく済むからたまには良いなぁ、あれ!?服装はおもいっきり作業服だけれど、事務作業はOLのやってる事と変わりないんじゃない?などと想いながらやっていると直ぐに片付いてしまった。

「久慈さん、終わっちゃいました〜」

「えっ!?もう終わったの?なかなか手際が良いねぇ。じゃあこれもお願いしちゃうかな」

 こんな感じで事務作業を進めていると、やしあか動物の閉園時間になった。
 
 本日最後の給餌をするために担当の動物コーナーへ向かう。

「今夜の歓迎会は7時にやしあか食堂だから、給餌を済ませたらやしあか温泉に行ってさっぱりしよう」

 昨日、事務所で久慈さんに着替えを持って来るように言われていた。
 事務所の何処かにシャワーでもあるのかな?とばかり思っていたのだけれど...

「園内に温泉があるんですか?」

「あるよ〜、一般人では絶対に分からない秘密の場所に。そこは人間に化けられる妖怪達の寮と、やしあか温泉が並んで建てらているんだ」

 そう言えば、やしあか動物園で人間の姿をしている妖怪達が、どんな所で寝泊まりしているのか気にはなっていた。

「そこって秘密の場所なんですよね?わたしと久慈さんだけで行って大丈夫なんですか?」

「ああ、大丈夫!園長に許可は取ってあるし、僕は何度も利用してるからね。因みに混浴じゃ無いから安心して良いよ」

「そ、そうなんですね...」

 混浴だったら流石に無理でした。
 そこはクリア出来たとして、妖怪達の使用する温泉は大丈夫なのだろうか?今はおどろおどろしいイメージしか湧かない。

 わたしの顔が物語っていたのか、久慈さんが笑顔でフォローする。

「そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫だよ。やしあか温泉の中を見たらきっと喜んで貰えるはずだから」

「分かりました。その言葉を信じて楽しみにしておきます」

 まだ不安は残っていたけれど、取り敢えず自分を納得させる意味も含めてそう言った。

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