やしあか動物園の妖しい日常
鉄鼠のテツさん
「あの毛がボサボサになってるネズミですよね!」
「ピンポーン、正解。もう妖怪探すのはお手のものか」
簡単に当てられて久慈さんが残念そうな顔をしている。
「あれは鉄鼠(てっそ)という妖怪でテツさんだ。どんな能力を持ってるかは知らないけど、人間と普通に話せるよ」
わたしはそのテツさんの傍へ近づき、挨拶することにした。
「おはようございます!テツさん」
普通に挨拶したつもりがテツさんをビックリさせたらしく、ビクッとして一瞬固まり、小さな木箱の中に素早く隠れてしまった。
「すみません、テツさん。そんなにビックリするとは思わなかったんです。挨拶だけでもさせて貰えませんか?」
声のボリューム調節して再度話し掛けてみる。
すると、木箱に空いた丸い穴からゆっくりとテツさんが顔を出した。
「な、なんだよぉ、オイラは「ビビりのテツ」ってあだ名が付くくらいビビリ症なんだぜ。それくらい調べておけよ」
わたしは久慈さんの方を見て訊く。
「そうなんですか?久慈さん」
「いやぁ、ごめんごめん。伝えるのを忘れてしまっていた。あ、でも今回のは悪気があって黙ってた訳じゃ無いからね」
うぅ、久慈さん...
でも顔を出してくれたから挨拶しなきゃ。
「初めまして黒川紗理亞と言います。よろしくお願いします」
「しょうがねえなぁ、鉄鼠のテツだ。次からは驚かさないでくれよ!」
「はい、気をつけますね」
普通は人間を驚かせる立場の妖怪なのにビビりだなんて...
ネズミコーナーの隣には、リスやプレーリードッグの小屋があった。
「ここに妖怪は居ないんだ。普通の動物達も可愛がってあげてね」
「もちろんです。と言うか妖怪は可愛がれません!」
昨日から動物の中に紛れ込んでいる妖怪を見て来たけれど、一つも可愛いという感情は芽生えていなかった。
そもそも可愛い妖怪っているのだろうか?...
純粋に動物とコミュニケーションを取ろうと、妖怪の居ない動物小屋のリス達に話し掛けてみた。
「おはよう。リスさん達」
「.......」
目の前のリスは少しこちらを見て目を逸らし、餌のクルミを無心になって食べている。他のリスの何匹かはその場に残り、数匹は逃げてしまった。
奇しくもわたしはこの現象に物足りなさを感じる。相手が妖怪ならば必ず何かしらのリアクションをとってくれるし、会話も思いの外スムーズに出来てしまうからだ。
わたしが魔女という特殊な人間ということもあるけれど、人間の慣れとは不思議なもので、妖怪の居ない動物小屋に早くも、物足りなさを感じ始めてるのかも知れない。
「ピンポーン、正解。もう妖怪探すのはお手のものか」
簡単に当てられて久慈さんが残念そうな顔をしている。
「あれは鉄鼠(てっそ)という妖怪でテツさんだ。どんな能力を持ってるかは知らないけど、人間と普通に話せるよ」
わたしはそのテツさんの傍へ近づき、挨拶することにした。
「おはようございます!テツさん」
普通に挨拶したつもりがテツさんをビックリさせたらしく、ビクッとして一瞬固まり、小さな木箱の中に素早く隠れてしまった。
「すみません、テツさん。そんなにビックリするとは思わなかったんです。挨拶だけでもさせて貰えませんか?」
声のボリューム調節して再度話し掛けてみる。
すると、木箱に空いた丸い穴からゆっくりとテツさんが顔を出した。
「な、なんだよぉ、オイラは「ビビりのテツ」ってあだ名が付くくらいビビリ症なんだぜ。それくらい調べておけよ」
わたしは久慈さんの方を見て訊く。
「そうなんですか?久慈さん」
「いやぁ、ごめんごめん。伝えるのを忘れてしまっていた。あ、でも今回のは悪気があって黙ってた訳じゃ無いからね」
うぅ、久慈さん...
でも顔を出してくれたから挨拶しなきゃ。
「初めまして黒川紗理亞と言います。よろしくお願いします」
「しょうがねえなぁ、鉄鼠のテツだ。次からは驚かさないでくれよ!」
「はい、気をつけますね」
普通は人間を驚かせる立場の妖怪なのにビビりだなんて...
ネズミコーナーの隣には、リスやプレーリードッグの小屋があった。
「ここに妖怪は居ないんだ。普通の動物達も可愛がってあげてね」
「もちろんです。と言うか妖怪は可愛がれません!」
昨日から動物の中に紛れ込んでいる妖怪を見て来たけれど、一つも可愛いという感情は芽生えていなかった。
そもそも可愛い妖怪っているのだろうか?...
純粋に動物とコミュニケーションを取ろうと、妖怪の居ない動物小屋のリス達に話し掛けてみた。
「おはよう。リスさん達」
「.......」
目の前のリスは少しこちらを見て目を逸らし、餌のクルミを無心になって食べている。他のリスの何匹かはその場に残り、数匹は逃げてしまった。
奇しくもわたしはこの現象に物足りなさを感じる。相手が妖怪ならば必ず何かしらのリアクションをとってくれるし、会話も思いの外スムーズに出来てしまうからだ。
わたしが魔女という特殊な人間ということもあるけれど、人間の慣れとは不思議なもので、妖怪の居ない動物小屋に早くも、物足りなさを感じ始めてるのかも知れない。
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