やしあか動物園の妖しい日常

流川おるたな

仕事の段取り

「黒川さん、そろそろ飼料の配合を始めよう。僕が飼料をタンクに入れるから、ここにある飼料袋を全部開けてくれるかな?」

「了解です!魔法でやっちゃいますね!」

 女性が20㎏の飼料袋を扱うのはやっぱり重労働、こういう時は魔法を使うのが一番!
 積み重なった飼料袋に魔法をかける。

「ほいっと!袋さんたち整列してくださ~い!」

 わたしがそう言うと、久慈さんの立つすぐ隣を基点として、魔法のかかった飼料袋が一つずつ並んで行った。

「はい!今度は上の口だけ開けてくださ~い!」

 整列した飼料袋が前から順に口をパカッと開けて行く。

「魔法って便利で良いなぁ。よし、こっちもじゃんじゃん入れちゃうよ!」

 久慈さんが機械のタンクに次々と飼料を入れる。袋達がそれに合わせて前へ進み、袋の長い列はあっという間に短くなって行った。

「これでOKですか?久慈さん!」

「ああ!OKだよ!」

 タンクへの飼料投入が終わり、久慈さんがスタートボタンを押すとタンクがグルグルと廻り始める。

「配合が終わるまでにここの片づけと野菜の準備をしよう」

「はい!了解です!」
 
 こうして朝一の給餌の準備を、昨日より段取り良く済ませる事が出来た。
 
「黒川さんの仕事覚えが早いから僕も助かっているよ」

「あ、ありがとうございます!何だか照れますね」

 学生時代のバイトでも想っていたけれど、自分が仕事を頑張った時に上司や先輩から褒められると、例え短い一言でも格別に嬉しいものだ。

「時間に余裕があるから、また小動物コーナーの動物と妖怪を紹介しようかな」

「そう言えば、わたしがサトリさんから逃げてしまってから、それっきり他の動物や妖怪を見てませんでしたね」

「ハハハ、昨日も言ったけれど、妖怪を紹介する時は事前情報をちゃんと伝えるよ」

「そうしてもらえると助かります」

 サトリさんの件は昨日のうちに解決したから良いんだけど、初見の妖怪の情報はやっぱり前もって教えて欲しい。

 二人で小動物コーナーに向かい、サトリさんに挨拶したあとネズミの居る小屋を覗いた。

 ハツカネズミやモルモット、テンジクネズミなどが見える。小さくてかわいい...

「実は小動物の妖怪は数が少ないんだ。でも、ここのネズミ達の中には妖怪が混ざっている。どれが妖怪なのか分かるかい?」

 おっと、事前情報を伝えると言ったばかりなのに、早くも情報無しでクイズを出す久慈さん。昨日から密かに想っていたけれど、やっぱり天然が入っているらしい。

 今のわたしは魔力解放モードで妖怪探しなど楽勝!妖気を発しているネズミを瞬時に見つけ指差した。

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