H.I.S.A.H.I.T.O. みだりにその名を口にしてはならない小説がある。
最終章 プロローグ
「アメノトリフネは、これよりテトラグラマトンに挑む」
イザナミの凛とした声がブリッジに響き渡った。
「ヤマヒトも、サブローも、ヨモツもコヨミもおらぬが、我らには、真王ヒサヒトがおる。
妾もいる。イザナギもいる。概念そのものである灰音もいる。
ヤマヒトらも、近々我らに合流するであろう。
真王の誕生は、アメノトリフネのすべてのリミッターを解除し、人型への変形とカミシロ・イザナギの強化ユニットへの変形を可能とした。
ヒサヒトは、なぜかはわからぬが、それをマクロスだのデンドロビウムだのと呼んでおるが……
これより、アメノトリフネは、通常の戦艦形態をアマテラス、人型形態をスサノオ、強化ユニット形態をツクヨミと呼称する」
「父さんや叔父さん、叔母さんが究極召喚した神様の名前だ……」
「妾が死んだ後、イザナギが黄泉の国の穢れを禊によって落としたときに生まれた三柱の神で、妾はあまり好かぬが……
ヒサヒトやアイコの親たち同然の神たちの名だ。この際、致し方あるまい」
ヒサヒトは、イザナミの心遣いに感謝した。
「また、アメノトリフネのリミッターの解除は、すべてのカミシロのリミッターも同時に解除した。
すべてのカミシロが、以前の数倍の力を引き出せるようになっておる。
また、当艦に残ってくれた三千人のカオスヒューマンたちもまた、それぞれ八十三式とカミシロを手にしている!
相手は大洪水を起こし、雷を落とし、海を割る……
おそろしい相手だが、これまでに数多くの苦難を真王ヒサヒトと我らなら必ずや……」
「イザナミ様、邪馬台国の女王様から通信が入っています」
オペレーターの細川莉乃がイザナミの話に割って入った。
「姉さんから?」
と、ヒサヒト。
「ちっ、大事なところであったのに。まあ、よい、つないでくれ」
イザナミは話の腰を折られ、不機嫌そうにそう言った。
「お久しぶりです、イザナミ様。
と言っても、皆さんとはつい先日お別れしたばかりですが……
ヒサヒト、ほんの少し見ない間に、ずいぶんたくましくなりましたね……」
邪馬台国の現女王であるヒサヒトの二番目の姉は、今日も美しかった。
「あ、ありがとう、姉さん」
褒められたヒサヒトは頬を赤らめる。
姉さんが無事で本当によかったと思う。
「地上の現状は、こちら側からも把握しております」
「なるほど。もとはひとつの世界であったが、今は上位レイヤーに位置する世界、そういったことも可能か」
「正直アメノトリフネだけでは、テトラグラマトンと戦うには戦力不足かと……」
イザナミは、女王に痛いところを突かれ、
「……確かにな」
認めざるを得なかった。
「わたくしの側近の瑞希ホープが、まもなくそちらに向かいます」
「あの小童に何ができるというのだ?」
イザナミは、ふん、と鼻を鳴らした。
「こーらー!
いくらイザナミ様でも瑞希の悪口を言うのは、許しませんよ?」
女王は、ぷんすか、という擬音がぴったりの顔で言う。
「もしかして、そなたらは出来ておるのか?」
「ちょっ、姉さん、どういうこと!?」
ヒサヒトがイザナミの問いに食い気味で割り込んだ。
「おふたりとも何を言ってらっしゃるんですか!?
私が女王様とだなんて……」
モニターに映る顔が女王から瑞希に代わった。
「出たな、小童」
「瑞希です!」
「で、ほんとのところ、どうなの? できてんの? ふたり」
「ヒサヒト、顔がこわいですよ?」
モニターには映っていないが、姉の声がした。
「できてはいません!
まだ、その、手を繋ぐ程度の関係といいますか……私の片思いというか……とにかく接吻はまだです! したいです!!」
「それ、もう完全にできてんじゃねーか!
人様の姉ちゃんの手を勝手に握ってんじゃねー!!」
「落ち着けヒサヒト」
「そうですよ、落ち着きなさいヒサヒト」
黄泉の国と邪馬台国、ふたつの国の女王にたしなめられるのは、真王ならではの特権だ。
「うぅ……」
しかし、そんな贅沢もヒサヒトには自覚がなく、
「わっ、こやつ、真王のくせに泣きおった!」
そんな有様なのだった。
「瑞希は、こちらの世界に存在する、蓬莱の国や平原広沢と同盟関係を結んでくれたのです
蓬莱の国、平原広沢、そして邪馬台国の連合軍を、瑞希が指揮します」
「アメノトリフネほど大きな戦艦ではありませんが、大艦隊を率いて向かいますので。
それでは、のちほど」
通信は、瑞希のアップで切れた。
「いやいや、最後は姉さんに代われよ!!」
「落ち着け、ヒサヒト」
再び、たしなめられてしまった。
「……イザナミさん、俺、テトラグラマトンをあの瑞希ってやつだと思うことにする、、、
「それで汝がやる気がでるなら、もう好きにしてくれ……」
通信は終わり、再びイザナミが話し出す。
「それでは、これより、アメノトリフネは、」
「イザナミ様! 今度は混沌の方舟から通信です!」
再びそれを遮ったのは、やはり細川莉乃だった。
「混沌の方舟から? サブローか? ヤマヒトか?」
しかし、モニターに写し出されたのは、そのどちらでもない、けれどヒサヒトのよく見知った顔の男だった。
「アサクラ……?」
イザナミの凛とした声がブリッジに響き渡った。
「ヤマヒトも、サブローも、ヨモツもコヨミもおらぬが、我らには、真王ヒサヒトがおる。
妾もいる。イザナギもいる。概念そのものである灰音もいる。
ヤマヒトらも、近々我らに合流するであろう。
真王の誕生は、アメノトリフネのすべてのリミッターを解除し、人型への変形とカミシロ・イザナギの強化ユニットへの変形を可能とした。
ヒサヒトは、なぜかはわからぬが、それをマクロスだのデンドロビウムだのと呼んでおるが……
これより、アメノトリフネは、通常の戦艦形態をアマテラス、人型形態をスサノオ、強化ユニット形態をツクヨミと呼称する」
「父さんや叔父さん、叔母さんが究極召喚した神様の名前だ……」
「妾が死んだ後、イザナギが黄泉の国の穢れを禊によって落としたときに生まれた三柱の神で、妾はあまり好かぬが……
ヒサヒトやアイコの親たち同然の神たちの名だ。この際、致し方あるまい」
ヒサヒトは、イザナミの心遣いに感謝した。
「また、アメノトリフネのリミッターの解除は、すべてのカミシロのリミッターも同時に解除した。
すべてのカミシロが、以前の数倍の力を引き出せるようになっておる。
また、当艦に残ってくれた三千人のカオスヒューマンたちもまた、それぞれ八十三式とカミシロを手にしている!
相手は大洪水を起こし、雷を落とし、海を割る……
おそろしい相手だが、これまでに数多くの苦難を真王ヒサヒトと我らなら必ずや……」
「イザナミ様、邪馬台国の女王様から通信が入っています」
オペレーターの細川莉乃がイザナミの話に割って入った。
「姉さんから?」
と、ヒサヒト。
「ちっ、大事なところであったのに。まあ、よい、つないでくれ」
イザナミは話の腰を折られ、不機嫌そうにそう言った。
「お久しぶりです、イザナミ様。
と言っても、皆さんとはつい先日お別れしたばかりですが……
ヒサヒト、ほんの少し見ない間に、ずいぶんたくましくなりましたね……」
邪馬台国の現女王であるヒサヒトの二番目の姉は、今日も美しかった。
「あ、ありがとう、姉さん」
褒められたヒサヒトは頬を赤らめる。
姉さんが無事で本当によかったと思う。
「地上の現状は、こちら側からも把握しております」
「なるほど。もとはひとつの世界であったが、今は上位レイヤーに位置する世界、そういったことも可能か」
「正直アメノトリフネだけでは、テトラグラマトンと戦うには戦力不足かと……」
イザナミは、女王に痛いところを突かれ、
「……確かにな」
認めざるを得なかった。
「わたくしの側近の瑞希ホープが、まもなくそちらに向かいます」
「あの小童に何ができるというのだ?」
イザナミは、ふん、と鼻を鳴らした。
「こーらー!
いくらイザナミ様でも瑞希の悪口を言うのは、許しませんよ?」
女王は、ぷんすか、という擬音がぴったりの顔で言う。
「もしかして、そなたらは出来ておるのか?」
「ちょっ、姉さん、どういうこと!?」
ヒサヒトがイザナミの問いに食い気味で割り込んだ。
「おふたりとも何を言ってらっしゃるんですか!?
私が女王様とだなんて……」
モニターに映る顔が女王から瑞希に代わった。
「出たな、小童」
「瑞希です!」
「で、ほんとのところ、どうなの? できてんの? ふたり」
「ヒサヒト、顔がこわいですよ?」
モニターには映っていないが、姉の声がした。
「できてはいません!
まだ、その、手を繋ぐ程度の関係といいますか……私の片思いというか……とにかく接吻はまだです! したいです!!」
「それ、もう完全にできてんじゃねーか!
人様の姉ちゃんの手を勝手に握ってんじゃねー!!」
「落ち着けヒサヒト」
「そうですよ、落ち着きなさいヒサヒト」
黄泉の国と邪馬台国、ふたつの国の女王にたしなめられるのは、真王ならではの特権だ。
「うぅ……」
しかし、そんな贅沢もヒサヒトには自覚がなく、
「わっ、こやつ、真王のくせに泣きおった!」
そんな有様なのだった。
「瑞希は、こちらの世界に存在する、蓬莱の国や平原広沢と同盟関係を結んでくれたのです
蓬莱の国、平原広沢、そして邪馬台国の連合軍を、瑞希が指揮します」
「アメノトリフネほど大きな戦艦ではありませんが、大艦隊を率いて向かいますので。
それでは、のちほど」
通信は、瑞希のアップで切れた。
「いやいや、最後は姉さんに代われよ!!」
「落ち着け、ヒサヒト」
再び、たしなめられてしまった。
「……イザナミさん、俺、テトラグラマトンをあの瑞希ってやつだと思うことにする、、、
「それで汝がやる気がでるなら、もう好きにしてくれ……」
通信は終わり、再びイザナミが話し出す。
「それでは、これより、アメノトリフネは、」
「イザナミ様! 今度は混沌の方舟から通信です!」
再びそれを遮ったのは、やはり細川莉乃だった。
「混沌の方舟から? サブローか? ヤマヒトか?」
しかし、モニターに写し出されたのは、そのどちらでもない、けれどヒサヒトのよく見知った顔の男だった。
「アサクラ……?」
「SF」の人気作品
-
-
1,798
-
1.8万
-
-
1,274
-
1.2万
-
-
477
-
3,004
-
-
452
-
98
-
-
432
-
947
-
-
432
-
816
-
-
415
-
688
-
-
369
-
994
-
-
362
-
192
コメント