H.I.S.A.H.I.T.O. みだりにその名を口にしてはならない小説がある。
第45話 千のコスモの会
新たな、そして、不老不死の肉体を得た聖人と聖母を迎え、十三評議会はその名を千のコスモの会と改めた。
聖人が、2000年の時を経て、新たな教えを彼らだけに説いたからである。
その教えを、聖人も彼らも、2000年前のように広めることはない。
かつての教えは、時の権力者の都合のいいように教えが歪んでいき、信者を増やすために教えが変わっていった。
もはやそれは聖人が説いたものとは別のものになりさがっていた。
2000年前に聖人が説いた教えは、千のコスモの会にとっては、もはや傀儡の教えでしかない。
千のコスモの会にその名を連ねる者たちだけが、聖人の教えを知り、理解していれば良い。
彼らは選ばれた者たちだ。人として肉体はすでに次のステージに進んでいる彼らは、聖人とともにこれから歩み続け、その魂も次のステージへ進んでいく。
選ばれた者たちだけで世界を変えていく。作り直す。
そのための不老不死の肉体。
もはや聖人は神の子ではなかった。
彼は神そのもの。
あるいは悪魔か。
十三評議会の面々のナンバーだけは、聖人の新たな使徒たちの番号としてそのまま引き継がれた。
1.エース、欠番
2.デュース、欠番
3.トレイ、ニコラ・フラメル
4.ケイト、カリオストロ伯爵
5.シンク、カグヤ
6.サイス、徐福
7.セブン、欠番
8.エイト、旗本慧子
9.ナイン、サンジェルマン
10.テン、ミカド
11.ジャック、エビスサブロー
12.クイーン、アリス・T・テレス
13.キング、トランプ
ジョーカー、欠番
ジョーカーを含め、14ある席は、そのうちの4つが空席となっており、聖人は頭を悩ませていた。
「どうしたの、ベイビーちゃん?」
聖母は、加藤麻衣の顔と声で、悩める聖人に声をかけた。
「やめてくれよ、母さん。
母さんにはわからないかもしれないけど、ぼくにも一応威厳てものがあるんだよ。
ほら、新たな使徒たちがぼくらを見て笑っている」
皆笑いを堪えるのに必死であったが、カグヤだけは腹を抱えての大爆笑であった。
それをエビスサブローとミカドが止めるのに必死であったが、ミカドもまた吹き出してしまい、サブローもそれにつられてしまった。
しかし、皆は聖人の言う威厳とは無関係に、アラサーのアルマーニのスーツを着た聖人と、尼の姿をやめセーラー服を甘ロリ風にリメイクした服に着替えた14~5歳の聖母が、「母さん」「ベイビーちゃん」と呼び合っているのが、たまらなくおかしかったのだ。
「それで? ベイビーちゃんは、一体何を悩んでるの?」
聖人は、聖母にベイビーちゃんと呼ばれるのは2000年ぶりだったから、余計に恥ずかしかった。
しかし2000年前に、聖母から散々、30歳をすぎ、神の教えを人々に説きはじめてからもそう呼ばれていたことを思い出し、諦めた。
「使徒はやっぱり、十三人いないとなー、って。
その中にひとり、裏切り者がいてくれないとつまらないなー、ってさ」
ジョーカーの席は空席のままでよかったが、エース、デュース、セブンの席は埋めたかった。
この際、不老不死の存在でなくてもよかった。この世界の人間でもよかった。
十三人いて、いつか誰かが自分を裏切る。だが、それが誰だかわからない。
2000年前と同じ状況を楽しみたかったのだ。
「この世界の人間でもよろしいので?」
カリオストロ伯爵の問いに、
「ああ、構わないよ。不老不死でなくてもいい」
聖人は答える。
しかし、不老不死の者でなければ、デウスエクスマキナで戦うことができない。
アメノトリフネは、聖人と聖母、サンジェルマンと旗本慧子が破壊したが、おそらく生き残った者たちがいる。
残党だけでなく、九頭龍人を倒したヒサヒトやイザナミ、イザナギもいる。
おまけにヒサヒトは、神人合一を果たしたという話だ。
聖人は、十三人ということにこだわりすぎて、目的を見失っていた。
だから、カリオストロは、
「この世界の不老不死の者をふたり知っています。彼らに声をかけてみましょうか」
と言った。
「それでも、まだひとり足りないよ」
困ったお人だ、とカリオストロは思った。
「しかたがありません。
我々の持つ不老不死の秘薬を、教皇にでも飲ませるとしましょう」
「それがいい!」
聖人は大いに喜び、
「さすがはカリオストロ。君には素敵な城をそのうちプレゼントしよう」
と言った。
カリオストロに、城。ろくな予感がしなかった。すぐに泥棒に入られる。なぜだろう。不思議とそうとしか思えなかった。
かくして、千のコスモの会に、新たな三人の不老不死の体を持つ者たちが、空席を埋めることとなった。
天津祝人(あまつ のりと)。
禍津祝斗(まがつ のりと)。
そして、教皇。
教皇は、ファティマの預言以来、教会が秘密裏に進めていたあるものを起動させる。
バチカン宮殿はその日より姿形を変え、混沌の方舟とよばれるようになった。
聖人が、2000年の時を経て、新たな教えを彼らだけに説いたからである。
その教えを、聖人も彼らも、2000年前のように広めることはない。
かつての教えは、時の権力者の都合のいいように教えが歪んでいき、信者を増やすために教えが変わっていった。
もはやそれは聖人が説いたものとは別のものになりさがっていた。
2000年前に聖人が説いた教えは、千のコスモの会にとっては、もはや傀儡の教えでしかない。
千のコスモの会にその名を連ねる者たちだけが、聖人の教えを知り、理解していれば良い。
彼らは選ばれた者たちだ。人として肉体はすでに次のステージに進んでいる彼らは、聖人とともにこれから歩み続け、その魂も次のステージへ進んでいく。
選ばれた者たちだけで世界を変えていく。作り直す。
そのための不老不死の肉体。
もはや聖人は神の子ではなかった。
彼は神そのもの。
あるいは悪魔か。
十三評議会の面々のナンバーだけは、聖人の新たな使徒たちの番号としてそのまま引き継がれた。
1.エース、欠番
2.デュース、欠番
3.トレイ、ニコラ・フラメル
4.ケイト、カリオストロ伯爵
5.シンク、カグヤ
6.サイス、徐福
7.セブン、欠番
8.エイト、旗本慧子
9.ナイン、サンジェルマン
10.テン、ミカド
11.ジャック、エビスサブロー
12.クイーン、アリス・T・テレス
13.キング、トランプ
ジョーカー、欠番
ジョーカーを含め、14ある席は、そのうちの4つが空席となっており、聖人は頭を悩ませていた。
「どうしたの、ベイビーちゃん?」
聖母は、加藤麻衣の顔と声で、悩める聖人に声をかけた。
「やめてくれよ、母さん。
母さんにはわからないかもしれないけど、ぼくにも一応威厳てものがあるんだよ。
ほら、新たな使徒たちがぼくらを見て笑っている」
皆笑いを堪えるのに必死であったが、カグヤだけは腹を抱えての大爆笑であった。
それをエビスサブローとミカドが止めるのに必死であったが、ミカドもまた吹き出してしまい、サブローもそれにつられてしまった。
しかし、皆は聖人の言う威厳とは無関係に、アラサーのアルマーニのスーツを着た聖人と、尼の姿をやめセーラー服を甘ロリ風にリメイクした服に着替えた14~5歳の聖母が、「母さん」「ベイビーちゃん」と呼び合っているのが、たまらなくおかしかったのだ。
「それで? ベイビーちゃんは、一体何を悩んでるの?」
聖人は、聖母にベイビーちゃんと呼ばれるのは2000年ぶりだったから、余計に恥ずかしかった。
しかし2000年前に、聖母から散々、30歳をすぎ、神の教えを人々に説きはじめてからもそう呼ばれていたことを思い出し、諦めた。
「使徒はやっぱり、十三人いないとなー、って。
その中にひとり、裏切り者がいてくれないとつまらないなー、ってさ」
ジョーカーの席は空席のままでよかったが、エース、デュース、セブンの席は埋めたかった。
この際、不老不死の存在でなくてもよかった。この世界の人間でもよかった。
十三人いて、いつか誰かが自分を裏切る。だが、それが誰だかわからない。
2000年前と同じ状況を楽しみたかったのだ。
「この世界の人間でもよろしいので?」
カリオストロ伯爵の問いに、
「ああ、構わないよ。不老不死でなくてもいい」
聖人は答える。
しかし、不老不死の者でなければ、デウスエクスマキナで戦うことができない。
アメノトリフネは、聖人と聖母、サンジェルマンと旗本慧子が破壊したが、おそらく生き残った者たちがいる。
残党だけでなく、九頭龍人を倒したヒサヒトやイザナミ、イザナギもいる。
おまけにヒサヒトは、神人合一を果たしたという話だ。
聖人は、十三人ということにこだわりすぎて、目的を見失っていた。
だから、カリオストロは、
「この世界の不老不死の者をふたり知っています。彼らに声をかけてみましょうか」
と言った。
「それでも、まだひとり足りないよ」
困ったお人だ、とカリオストロは思った。
「しかたがありません。
我々の持つ不老不死の秘薬を、教皇にでも飲ませるとしましょう」
「それがいい!」
聖人は大いに喜び、
「さすがはカリオストロ。君には素敵な城をそのうちプレゼントしよう」
と言った。
カリオストロに、城。ろくな予感がしなかった。すぐに泥棒に入られる。なぜだろう。不思議とそうとしか思えなかった。
かくして、千のコスモの会に、新たな三人の不老不死の体を持つ者たちが、空席を埋めることとなった。
天津祝人(あまつ のりと)。
禍津祝斗(まがつ のりと)。
そして、教皇。
教皇は、ファティマの預言以来、教会が秘密裏に進めていたあるものを起動させる。
バチカン宮殿はその日より姿形を変え、混沌の方舟とよばれるようになった。
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