H.I.S.A.H.I.T.O. みだりにその名を口にしてはならない小説がある。
第34話 セフィロトの樹②
混沌の樹海。
そこに存在する数えきれないほどの数のセフィロトの樹は、上空の2機のカミシロ、ハニヤスビコとハニヤスビメ、その中にいる比良坂ヨモツとコヨミを危険分子として判断した。
数えきれないほどのセフィロトの樹に実る、数えきれないほどの混沌の果実が、ぼとぼとと地面に落ちる。それはひとつひとつの音ならば、ヨモツやコヨミの耳に届くはずのない音だ。それが聞こえる。ヨモツはその意味を即座に理解した。
その混沌の果実の中にはさらに数えきれないほどのカオスシードが存在する。
一体どれほどの数の神や天使、悪魔が孵化するのだろう。
「これが八百万やおよろずってやつかな。旧約聖書にはない言葉だけど」
「お兄ちゃん?」
不安そうに自分を呼ぶ妹に、
「コヨミ」
とヨモツは優しく声をかけた。
「ここはぼくがなんとかする。
だからコヨミは逃げて」
「どうして? お兄ちゃんを置いてきぼりにして逃げるなんてできないよ」
「わかって、コヨミ。
ふたりでここで戦っても、ふたりとも死ぬだけ。それでは、ただの無駄死に、犬死にになってしまう。
セフィロトのこの現状を、イザナミ様に伝えなければいけないんだ」
「だったらふたりで逃げよう?ふたりでイザナミ様のところにいこ
「それは無理かな」
「ふたりで逃げたら、これから孵化するカオスたちをすべてイザナミ様のところに案内することになる。
この状況をイザナミ様に伝えるには、どちらかがここに残って、カオスたちを足止めしなきゃいけない。
それはコヨミにはできない」
「できるもん」
「いいかい?
ハニヤスビメよりハニヤスビコの方が装甲が厚く、武器も強力だし、種類も豊富にある。
逆に、ハニヤスビコよりハニヤスビメの方が、スピードに優れている。
コヨミがぼくの大切な妹だからとか、もちろんあるよ。
でも、カミシロの能力の違いから言っても、ぼくがここに残るべきなんだ」
「お兄ちゃん、大事なこと忘れてる」
「大事なこと?」
カオスシードから真っ先に孵化した2体のカオスが、コヨミの返事を待つヨモツのハニヤスビコに、返事をしようとしていたコヨミのハニヤスビメに襲いかかった。
ハニヤスビコとハニヤスビメは、カミシロ同士での合体を想定して作られている。
零式強化外骨格と百式強化外骨格の同時起動に成功したエビスサブローが、その技術をカミシロに転用して作られた試作機だった。
そのカミシロの名は、ハニヤス・喰人クラウド。
「お兄ちゃん、合体しよ?」
「コヨミが言う」
「確かに、合体すれば……。
いや、カミシロの戦闘力は飛躍的に向上するが、それでもいつかはふたりとも力尽きる」
コヨミがカミシロの合体を口にしなければ。
あるいは、ヨモツが迷わずコヨミをこの場から逃げださせていれば。
愛し合う兄と妹が互いが互いを思いやる気持ちが、不幸な結果を招くこともある。
2体のサキュバスとインキュバスは、それぞれハニヤスビコとハニヤスビメにとりついた。
ハニヤスビコの神の子宮の中で、サキュバスはコヨミの姿となり、ヨモツを誘う。
ハニヤスビメの神の子宮の中では、インキュバスはヨモツへと姿を変えた。
2体の婬魔は、神の子宮の中で、ふたりが愛する者の姿で、ふたりを誘う。
「お前はお兄ちゃんなんかじゃない」
コヨミは目の前の兄の姿をした婬魔を百式に内蔵された武器で破壊した。
しかし、ハニヤスビコは、操縦者を失ったかのように落下していく。
「お兄ちゃん!?」
コヨミはハニヤスビメで落下するハニヤスビコを受け止めた。
「お兄ちゃん、それ私じゃない! だまされちゃだめ!」
しかし、ヨモツの返事はなく、ハニヤスビコの神の子宮からは彼の荒い吐息が聞こえてきた。
「お兄ちゃん……? 何してるの? コヨミがここにいるのに、浮気してるの?」
2体の婬魔に続き、百を越えるカオスたちが、一斉にハニヤスビコとハニヤスビメにとりついた。
千、二千、三千、四千、五千、六千、七千……
2体のカミシロにとりついたカオスはもう数えきれない。
カオスは2体のカミシロの装甲をはがし、さまざまな部位を破壊する。
「お兄ちゃん? どうして? コヨミを裏切るの? ねぇ、どうして? どうして!?」
コヨミはぼろぼろと涙を流しながら
「許さない」
その言葉は、敵であるカオスではなく、愛する兄に向けられたものだった。
「殺してやる。
お兄ちゃんを殺して、私も死ぬ」
かつてイスラエルという名の国があり、近隣に諸国があった地に存在していた混沌の樹海は、そこに生えるすべてのセフィロトの樹は、2体のカミシロと一万を越えるカオスと共に世界から姿を消した。
そこに存在する数えきれないほどの数のセフィロトの樹は、上空の2機のカミシロ、ハニヤスビコとハニヤスビメ、その中にいる比良坂ヨモツとコヨミを危険分子として判断した。
数えきれないほどのセフィロトの樹に実る、数えきれないほどの混沌の果実が、ぼとぼとと地面に落ちる。それはひとつひとつの音ならば、ヨモツやコヨミの耳に届くはずのない音だ。それが聞こえる。ヨモツはその意味を即座に理解した。
その混沌の果実の中にはさらに数えきれないほどのカオスシードが存在する。
一体どれほどの数の神や天使、悪魔が孵化するのだろう。
「これが八百万やおよろずってやつかな。旧約聖書にはない言葉だけど」
「お兄ちゃん?」
不安そうに自分を呼ぶ妹に、
「コヨミ」
とヨモツは優しく声をかけた。
「ここはぼくがなんとかする。
だからコヨミは逃げて」
「どうして? お兄ちゃんを置いてきぼりにして逃げるなんてできないよ」
「わかって、コヨミ。
ふたりでここで戦っても、ふたりとも死ぬだけ。それでは、ただの無駄死に、犬死にになってしまう。
セフィロトのこの現状を、イザナミ様に伝えなければいけないんだ」
「だったらふたりで逃げよう?ふたりでイザナミ様のところにいこ
「それは無理かな」
「ふたりで逃げたら、これから孵化するカオスたちをすべてイザナミ様のところに案内することになる。
この状況をイザナミ様に伝えるには、どちらかがここに残って、カオスたちを足止めしなきゃいけない。
それはコヨミにはできない」
「できるもん」
「いいかい?
ハニヤスビメよりハニヤスビコの方が装甲が厚く、武器も強力だし、種類も豊富にある。
逆に、ハニヤスビコよりハニヤスビメの方が、スピードに優れている。
コヨミがぼくの大切な妹だからとか、もちろんあるよ。
でも、カミシロの能力の違いから言っても、ぼくがここに残るべきなんだ」
「お兄ちゃん、大事なこと忘れてる」
「大事なこと?」
カオスシードから真っ先に孵化した2体のカオスが、コヨミの返事を待つヨモツのハニヤスビコに、返事をしようとしていたコヨミのハニヤスビメに襲いかかった。
ハニヤスビコとハニヤスビメは、カミシロ同士での合体を想定して作られている。
零式強化外骨格と百式強化外骨格の同時起動に成功したエビスサブローが、その技術をカミシロに転用して作られた試作機だった。
そのカミシロの名は、ハニヤス・喰人クラウド。
「お兄ちゃん、合体しよ?」
「コヨミが言う」
「確かに、合体すれば……。
いや、カミシロの戦闘力は飛躍的に向上するが、それでもいつかはふたりとも力尽きる」
コヨミがカミシロの合体を口にしなければ。
あるいは、ヨモツが迷わずコヨミをこの場から逃げださせていれば。
愛し合う兄と妹が互いが互いを思いやる気持ちが、不幸な結果を招くこともある。
2体のサキュバスとインキュバスは、それぞれハニヤスビコとハニヤスビメにとりついた。
ハニヤスビコの神の子宮の中で、サキュバスはコヨミの姿となり、ヨモツを誘う。
ハニヤスビメの神の子宮の中では、インキュバスはヨモツへと姿を変えた。
2体の婬魔は、神の子宮の中で、ふたりが愛する者の姿で、ふたりを誘う。
「お前はお兄ちゃんなんかじゃない」
コヨミは目の前の兄の姿をした婬魔を百式に内蔵された武器で破壊した。
しかし、ハニヤスビコは、操縦者を失ったかのように落下していく。
「お兄ちゃん!?」
コヨミはハニヤスビメで落下するハニヤスビコを受け止めた。
「お兄ちゃん、それ私じゃない! だまされちゃだめ!」
しかし、ヨモツの返事はなく、ハニヤスビコの神の子宮からは彼の荒い吐息が聞こえてきた。
「お兄ちゃん……? 何してるの? コヨミがここにいるのに、浮気してるの?」
2体の婬魔に続き、百を越えるカオスたちが、一斉にハニヤスビコとハニヤスビメにとりついた。
千、二千、三千、四千、五千、六千、七千……
2体のカミシロにとりついたカオスはもう数えきれない。
カオスは2体のカミシロの装甲をはがし、さまざまな部位を破壊する。
「お兄ちゃん? どうして? コヨミを裏切るの? ねぇ、どうして? どうして!?」
コヨミはぼろぼろと涙を流しながら
「許さない」
その言葉は、敵であるカオスではなく、愛する兄に向けられたものだった。
「殺してやる。
お兄ちゃんを殺して、私も死ぬ」
かつてイスラエルという名の国があり、近隣に諸国があった地に存在していた混沌の樹海は、そこに生えるすべてのセフィロトの樹は、2体のカミシロと一万を越えるカオスと共に世界から姿を消した。
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