H.I.S.A.H.I.T.O. みだりにその名を口にしてはならない小説がある。
第23話 歴史の空白
『かくして、後に歴史の空白と呼ばれる、暦も元号もない時代の中で起きた開闢戦争は、日本の王族の少年であるヒサヒトが率いるアンダーグラウンドによるセカンドバベルの崩壊と山人の末裔ヤマヒトの裏切りによるヒサヒトの死によって幕を閉じた。
混沌の瘴気により、草木一本生えぬ地となっていた日本列島は、アメノトリフネより見つかったアメノヌボコとヒサヒトの力により、イザナギ神イザナミ神による天地開闢以来、二度目の天地開闢が行われ、大地はよみがえるはずであった。
しかし、ヒサヒトが注ぎ込んだ力をヤマヒトは奪い、負のエネルギーに変換、日本列島は浮上し、本来あるべき姿から、禍津九頭龍獄まがつくずりゅうごくへと姿を変えてしまった。
禍津九頭龍獄まがつくずりゅうごくが口からはく業火の直撃を受けたアメノトリフネは、中国の首都北京に落下し、首都機能を壊滅させる。
教会はすぐに中国全土に1000発のカオスシードミサイルを発射。
カオスシードから孵化した1000体のカオスは、世界有数の軍隊であった中国軍を瞬く間に壊滅させ、15億の民を皆殺しにし、四本の軌道エレベーターを作り上げる。
四本は、それぞれ、サードバベル朱雀、フォースバベル青龍、フィフスバベル白虎、シクスバベル玄武と名付けられ、セフィロトの樹と教会に属する国々に、安定したエネルギーを供給するようになる。
それにより、ゴルゴダの丘のセフィロトの樹はより大きく育ち、花を開かせた。
さらには、その数を増していく。
教会はもはや無尽蔵といっても過言ではないほどに採取できるようになったカオスシードを、教会に属さない国々に「神のご慈悲」として分け与え始めるようになる。
神のご慈悲のその裏側では、国家予算レベルの金が国家間で動いていたという。
カオスシードを手に入れ、真っ先に教会に牙を向いたのは、イスラム過激派であった。
しかし、それは教会の思惑通りの展開であり、イスラム過激派は、中東の国々ごと殲滅され、次はロシアが同じ結末を迎えた。
それぞれに、セブンスバベル、エイスバベルが建造され、教会はユーラシア大陸だけで実に六本もの軌道エレベーターを得ることになる。
世界中のすべての国家が教会にひれふすまでにかかったのは、わずか数ヶ月。
カオスシードは、かつての核兵器のように、実際に使われることのない、世界のパワーバランスを一定に保つための力の象徴として扱われはじめる。
しかし、まもなく、そのうちの四本は山人の末裔が操る禍津九頭龍獄まがつくずりゅうごくに破壊され、世界の半分以上の国家もまた滅亡する。
教会はさらなる軌道エレベーターを建造するため、教会に属する国さえも犠牲にしはじめる。
山人は再びそれを破壊する。
不毛ないたちごっこは、たった一年弱で世界を滅亡の危機に追いやった。
だが、そんな世界情勢の中でも、決して折れない心を持つ者たちがいた。
神王となる者を失い、教会や山人との間には圧倒的な戦力差があった。
帰るべき国ももはやなければ戦うすべももたなくても。
それでも諦めない者たちがいた。
だから、この世界はやがて、新しい暦と元号を迎えることになる。
いや、迎えることになるかもしれない。
私はこの時代について、何十年も研究を続けているが、この時代に起きたことが、すでに変えられない、過ぎ去った過去であるはずなのに、日々研究資料の内容が変わるのだ。
しかも、その変化に気づいている歴史学者は、世界でこの私だけなのである。
この時代は、過去でありながら、現在進行形であるのだ。』
佐野友陽著「歴史の空白」より
混沌の瘴気により、草木一本生えぬ地となっていた日本列島は、アメノトリフネより見つかったアメノヌボコとヒサヒトの力により、イザナギ神イザナミ神による天地開闢以来、二度目の天地開闢が行われ、大地はよみがえるはずであった。
しかし、ヒサヒトが注ぎ込んだ力をヤマヒトは奪い、負のエネルギーに変換、日本列島は浮上し、本来あるべき姿から、禍津九頭龍獄まがつくずりゅうごくへと姿を変えてしまった。
禍津九頭龍獄まがつくずりゅうごくが口からはく業火の直撃を受けたアメノトリフネは、中国の首都北京に落下し、首都機能を壊滅させる。
教会はすぐに中国全土に1000発のカオスシードミサイルを発射。
カオスシードから孵化した1000体のカオスは、世界有数の軍隊であった中国軍を瞬く間に壊滅させ、15億の民を皆殺しにし、四本の軌道エレベーターを作り上げる。
四本は、それぞれ、サードバベル朱雀、フォースバベル青龍、フィフスバベル白虎、シクスバベル玄武と名付けられ、セフィロトの樹と教会に属する国々に、安定したエネルギーを供給するようになる。
それにより、ゴルゴダの丘のセフィロトの樹はより大きく育ち、花を開かせた。
さらには、その数を増していく。
教会はもはや無尽蔵といっても過言ではないほどに採取できるようになったカオスシードを、教会に属さない国々に「神のご慈悲」として分け与え始めるようになる。
神のご慈悲のその裏側では、国家予算レベルの金が国家間で動いていたという。
カオスシードを手に入れ、真っ先に教会に牙を向いたのは、イスラム過激派であった。
しかし、それは教会の思惑通りの展開であり、イスラム過激派は、中東の国々ごと殲滅され、次はロシアが同じ結末を迎えた。
それぞれに、セブンスバベル、エイスバベルが建造され、教会はユーラシア大陸だけで実に六本もの軌道エレベーターを得ることになる。
世界中のすべての国家が教会にひれふすまでにかかったのは、わずか数ヶ月。
カオスシードは、かつての核兵器のように、実際に使われることのない、世界のパワーバランスを一定に保つための力の象徴として扱われはじめる。
しかし、まもなく、そのうちの四本は山人の末裔が操る禍津九頭龍獄まがつくずりゅうごくに破壊され、世界の半分以上の国家もまた滅亡する。
教会はさらなる軌道エレベーターを建造するため、教会に属する国さえも犠牲にしはじめる。
山人は再びそれを破壊する。
不毛ないたちごっこは、たった一年弱で世界を滅亡の危機に追いやった。
だが、そんな世界情勢の中でも、決して折れない心を持つ者たちがいた。
神王となる者を失い、教会や山人との間には圧倒的な戦力差があった。
帰るべき国ももはやなければ戦うすべももたなくても。
それでも諦めない者たちがいた。
だから、この世界はやがて、新しい暦と元号を迎えることになる。
いや、迎えることになるかもしれない。
私はこの時代について、何十年も研究を続けているが、この時代に起きたことが、すでに変えられない、過ぎ去った過去であるはずなのに、日々研究資料の内容が変わるのだ。
しかも、その変化に気づいている歴史学者は、世界でこの私だけなのである。
この時代は、過去でありながら、現在進行形であるのだ。』
佐野友陽著「歴史の空白」より
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