H.I.S.A.H.I.T.O. みだりにその名を口にしてはならない小説がある。
第04話 偽史
「草薙の剣。別名アメノムラクモノツルギ。
伊勢神宮や壇之浦のレプリカではなく、これこそが本物。
歴史学者の血が騒ぐよ。
その成分は純度百パーセントのヒヒイロカネ。
つまりは、電気信号を加えれば……」
摂政棗弘幸は、アンダーグラウンドの自室で、ヒサヒトの持ち帰った草薙の剣を前に、隠匿された歴史をひとつひもとこうとしていた。
棗には直接触れることさえできない草薙の剣に機械で電気信号を加える。
剣の形状が変化し槍となる。
「それがロンギヌスの槍か」
突然声をかけられ、棗はあわててその身で槍を隠した。
ヤマヒトが、部屋を覗きこんでいた。
「な、なんだ、君か……覗き見とは趣味が悪いな」
「何度かノックをしたのだが」
気づかなかった。
「歴史的発見に立ち会えてうれしく思うよ」
「草薙の剣がロンギヌスの槍である可能性に気づいていたのか?」
「君は歴史学者だが、専門は偽史だったろう」
偽史。
それは、源義経が暗殺を免れチンギス・ハンになったという説や、明智光秀は秀吉に殺されず、生き延び、天海という名の坊主となり江戸幕府の発展に貢献したという説が代表的なものとしてあげられる。
この国の歴史には、史実とされるものと偽史とされるものがある。
歴史は時の権力者によって都合よくねじ曲げられ、歪められる。
棗弘幸は、そういった偽史こそが真実の史実であると信じ、収集し、この国の新しい歴史教科書を作ろうとしていた歴史学者だった。
ラグナロクの日が起きるまでは。
「この国の最古の偽史は、日本人のユダヤ人始祖説だ。
それは同時にイエス・キリストがこの国に来訪したことを示す」
「なるほど。そこからロンギヌスの槍の所在を導きだしたというわけか。
さすがは、君のその存在そのものが、最古の偽史のひとつでもあるだけのことはある」
この国に山人なる先住民族がいたなどということもまた、史実ではなく、偽史のひとつだ。
いうならば、ヤマヒトは歩く偽史なのだ。
「セカンドバベル攻略の話をしたい」
「ふむ」
「どうしても、ヒサヒト様を担ぎ出すつもりか?」
「セカンドバベルは、軌道エレベーター。この星のエネルギー資源のすべてをになう。
それを手にすれば、教会の力は半減する」
「ヒサヒト様がいなくても、我々だけでどうにかなるのではないか?」
「どうにかなるのなら、とうのむかしにすでにしていたはずだ。
ヒサヒト様が我々を率いてセカンドバベルを奪うことに意味があるのだ」
「軌道エレベーターを手にしても、教会にはまだセフィロトの樹がある」
「それもいずれ、我々が手にする」
「ならば、ヒサヒト様は私が守ろう。
改めて攻略班への参加を希望する」
「もとよりそのつもり」
「君はどうする?」
「私は、君たち攻略班が失敗した場合に、外側からセカンドバベルを破壊する」
「本気でアイコ様に究極召喚をさせる気か?」
「でなければ、四大天使は倒せない。
その場合は、ヒサヒト様もアイコ様も失うことになる。
つまり、セカンドバベル攻略班に失敗は許されない」
伊勢神宮や壇之浦のレプリカではなく、これこそが本物。
歴史学者の血が騒ぐよ。
その成分は純度百パーセントのヒヒイロカネ。
つまりは、電気信号を加えれば……」
摂政棗弘幸は、アンダーグラウンドの自室で、ヒサヒトの持ち帰った草薙の剣を前に、隠匿された歴史をひとつひもとこうとしていた。
棗には直接触れることさえできない草薙の剣に機械で電気信号を加える。
剣の形状が変化し槍となる。
「それがロンギヌスの槍か」
突然声をかけられ、棗はあわててその身で槍を隠した。
ヤマヒトが、部屋を覗きこんでいた。
「な、なんだ、君か……覗き見とは趣味が悪いな」
「何度かノックをしたのだが」
気づかなかった。
「歴史的発見に立ち会えてうれしく思うよ」
「草薙の剣がロンギヌスの槍である可能性に気づいていたのか?」
「君は歴史学者だが、専門は偽史だったろう」
偽史。
それは、源義経が暗殺を免れチンギス・ハンになったという説や、明智光秀は秀吉に殺されず、生き延び、天海という名の坊主となり江戸幕府の発展に貢献したという説が代表的なものとしてあげられる。
この国の歴史には、史実とされるものと偽史とされるものがある。
歴史は時の権力者によって都合よくねじ曲げられ、歪められる。
棗弘幸は、そういった偽史こそが真実の史実であると信じ、収集し、この国の新しい歴史教科書を作ろうとしていた歴史学者だった。
ラグナロクの日が起きるまでは。
「この国の最古の偽史は、日本人のユダヤ人始祖説だ。
それは同時にイエス・キリストがこの国に来訪したことを示す」
「なるほど。そこからロンギヌスの槍の所在を導きだしたというわけか。
さすがは、君のその存在そのものが、最古の偽史のひとつでもあるだけのことはある」
この国に山人なる先住民族がいたなどということもまた、史実ではなく、偽史のひとつだ。
いうならば、ヤマヒトは歩く偽史なのだ。
「セカンドバベル攻略の話をしたい」
「ふむ」
「どうしても、ヒサヒト様を担ぎ出すつもりか?」
「セカンドバベルは、軌道エレベーター。この星のエネルギー資源のすべてをになう。
それを手にすれば、教会の力は半減する」
「ヒサヒト様がいなくても、我々だけでどうにかなるのではないか?」
「どうにかなるのなら、とうのむかしにすでにしていたはずだ。
ヒサヒト様が我々を率いてセカンドバベルを奪うことに意味があるのだ」
「軌道エレベーターを手にしても、教会にはまだセフィロトの樹がある」
「それもいずれ、我々が手にする」
「ならば、ヒサヒト様は私が守ろう。
改めて攻略班への参加を希望する」
「もとよりそのつもり」
「君はどうする?」
「私は、君たち攻略班が失敗した場合に、外側からセカンドバベルを破壊する」
「本気でアイコ様に究極召喚をさせる気か?」
「でなければ、四大天使は倒せない。
その場合は、ヒサヒト様もアイコ様も失うことになる。
つまり、セカンドバベル攻略班に失敗は許されない」
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