ディスカウントショップで兄がわたしを18禁コーナーに連れていこうとしています。
「おにーちゃんと結婚したい!! ⑪」
『りさは、みかなのからだがほしい。
そのからだがあれば、りさはぱぱののぞむことをぜんぶかなえてあげられる』
りさちゃんは、言いました。
りさちゃんたちのぱぱであるおにーちゃんは、りさちゃんにずっと声帯を貸したまま。
困った顔をして、きっと言いたいことがあるはずなのに何も言えないくらい、りさちゃんは、おにーちゃんが口を挟む隙間もないくらいに、しゃべり続けました。
ようやく、りさちゃんの話が一段落して、
「りさ、あのさ。みかなは」
りさちゃんに何かを言おうとしたけれど、
『ぱぱはだまってて。いま、りさは、みかなと、だいじなはなしをしてるから』
「……はい」
『ぱぱがなにをいおうとしてるかわからないけど、もしりさがそうぞうしてるとおりのことなら、りさたちは、ぱぱとおわかれしなきゃいけなくなる。いなくならなきゃいけなくなる』
おにーちゃんは、りさちゃんに何も言えなかった。
たぶん、りさちゃんにはわかっていたんだとおもいます。
りさちゃんたちもまた、これまでにふたりいた「まま」とおなじで、おにーちゃんにとって、わたしのかわりでしかなかったっていうことに。
りさちゃんたちが、ぱぱとおわかれする、いなくなる、ということは、おにーちゃんの頭の中からりさちゃんたちの存在が消えてしまうということ。
からだは、永遠にそのまま残るけれど、それはりさちゃんたちにとっての死を意味していました。
それは、だめ。
絶対にだめ。
わたしのせいで、りさちゃんたちがいなくなるなんて、だめ。
生きてるんだから。
ひとりひとりが、ちゃんと心を持ってるんだから。
りさちゃんたちは、おにーちゃんの家族であると同時に、おにーちゃんの一部だから。
おにーちゃんも、りさちゃんたちの一部だから。
おにーちゃんもりさちゃんたちも、もう何も失っちゃだめ。
おにーちゃんとりさちゃんたちは、みんなでひとりのおにーちゃんを形作ってる。たぶん、わたしもそう。おにーちゃんを形作ってる一部。
だれかひとりでも欠けてしまったら、おにーちゃんはおにーちゃんでいられなくなる。
おにーちゃんがおにーちゃんでいられなくなるということは、りさちゃんたちやわたしも、今のわたしたちでいられなくなってしまうから。
だから、わたしは、
「……いいよ」
「いい? なにが?」
「りさちゃんに、わたしのからだをあげる」
りさちゃんに言いました。
「でも、全部はあげられないの。それに、すこし時間がかかると思う。
でも、おにーちゃんの頭の中に、りさちゃんたち専用の場所があるみたいに、たぶん、わたしの頭の中にも、そういう場所が作れるんだよね?
おにーちゃんが作るのか、りさちゃんが作るのか、それともわたしが作るのかわからないけど……あ、みんなで作るのかな……
泉さんや千尋さんの頭の中にも、きっとあったんだよね?」
『あった。でも、ままはふたりとも、ままじゃなくなった。りさたちせんようのばしょが、なくなったから。
ふたりとも、ほんとはりさたちのことをあいしてくれてなんかなかった。
りさたちは、ぱぱに、じぶんをかわいくみせるための、こどうぐ。
だから、ぱぱのことがいやになると、りさたちのいばしょを、あたまのなかからかんたんにけした。
あのふたりにとって、りさたちはもう、ただのくまのぬいぐるみ。いたことさえ、わすれてる。いきてない』
りさちゃんたちが抱えてる闇は、すごく深かった。
2回もままに捨てられただけじゃなくて、殺されてしまったんだから。
殺されたんじゃなくて、存在を消されてしまった。忘れられてしまった。なかったことにされてしまった。
それは、殺されてしまうより、ずっとひどいこと。
だから、わたしにできることは、
「わたしのからだをつかえるようになったら、すきにつかっていいよ」
何かを失わせるんじゃなくて、りさちゃんたちがもっと自由に、生きたいように生きられるようにすること。
それは、してあげる、なんていう、おこがましいものじゃなくて、わたしがそうしたかった。
たまたま生まれてきたときの体がちがうだけで、わたしたちは同じ人間だから。
わたしたちは、同じ人を一番大切に思ってるから。愛してるから。
『ほんとにいいのか? りさは、みかなのからだで、ぱぱとせっくすするぞ』
「いいよ、しても」
だから、わたしは、全部受け入れるの。
おにーちゃんのことも、りさちゃんのことも、あみちゃんのことも、じゅらちゃんも、しほちゃんも、めいちゃんも、それから、わたしのことも。
もしかしたら、これから、生まれてくるかもしれない、おにーちゃんとわたしのこどものことも。
全部受け入れるの。
人として、してはいけないことまで、受け入れたりはするつもりはないし、そうなる前になんとかする。
でも、それ以外のことは、すべて受け入れる。
何もしてないうちから否定したり、結果しか見ずに努力を認めなかったり、そんなことは絶対にしない。
たぶんね、それが、おにーちゃんがずっとほしかった、わたしもずっとほしかった家族なの。
だから、わたしは、全部受け入れるの。
          
そのからだがあれば、りさはぱぱののぞむことをぜんぶかなえてあげられる』
りさちゃんは、言いました。
りさちゃんたちのぱぱであるおにーちゃんは、りさちゃんにずっと声帯を貸したまま。
困った顔をして、きっと言いたいことがあるはずなのに何も言えないくらい、りさちゃんは、おにーちゃんが口を挟む隙間もないくらいに、しゃべり続けました。
ようやく、りさちゃんの話が一段落して、
「りさ、あのさ。みかなは」
りさちゃんに何かを言おうとしたけれど、
『ぱぱはだまってて。いま、りさは、みかなと、だいじなはなしをしてるから』
「……はい」
『ぱぱがなにをいおうとしてるかわからないけど、もしりさがそうぞうしてるとおりのことなら、りさたちは、ぱぱとおわかれしなきゃいけなくなる。いなくならなきゃいけなくなる』
おにーちゃんは、りさちゃんに何も言えなかった。
たぶん、りさちゃんにはわかっていたんだとおもいます。
りさちゃんたちもまた、これまでにふたりいた「まま」とおなじで、おにーちゃんにとって、わたしのかわりでしかなかったっていうことに。
りさちゃんたちが、ぱぱとおわかれする、いなくなる、ということは、おにーちゃんの頭の中からりさちゃんたちの存在が消えてしまうということ。
からだは、永遠にそのまま残るけれど、それはりさちゃんたちにとっての死を意味していました。
それは、だめ。
絶対にだめ。
わたしのせいで、りさちゃんたちがいなくなるなんて、だめ。
生きてるんだから。
ひとりひとりが、ちゃんと心を持ってるんだから。
りさちゃんたちは、おにーちゃんの家族であると同時に、おにーちゃんの一部だから。
おにーちゃんも、りさちゃんたちの一部だから。
おにーちゃんもりさちゃんたちも、もう何も失っちゃだめ。
おにーちゃんとりさちゃんたちは、みんなでひとりのおにーちゃんを形作ってる。たぶん、わたしもそう。おにーちゃんを形作ってる一部。
だれかひとりでも欠けてしまったら、おにーちゃんはおにーちゃんでいられなくなる。
おにーちゃんがおにーちゃんでいられなくなるということは、りさちゃんたちやわたしも、今のわたしたちでいられなくなってしまうから。
だから、わたしは、
「……いいよ」
「いい? なにが?」
「りさちゃんに、わたしのからだをあげる」
りさちゃんに言いました。
「でも、全部はあげられないの。それに、すこし時間がかかると思う。
でも、おにーちゃんの頭の中に、りさちゃんたち専用の場所があるみたいに、たぶん、わたしの頭の中にも、そういう場所が作れるんだよね?
おにーちゃんが作るのか、りさちゃんが作るのか、それともわたしが作るのかわからないけど……あ、みんなで作るのかな……
泉さんや千尋さんの頭の中にも、きっとあったんだよね?」
『あった。でも、ままはふたりとも、ままじゃなくなった。りさたちせんようのばしょが、なくなったから。
ふたりとも、ほんとはりさたちのことをあいしてくれてなんかなかった。
りさたちは、ぱぱに、じぶんをかわいくみせるための、こどうぐ。
だから、ぱぱのことがいやになると、りさたちのいばしょを、あたまのなかからかんたんにけした。
あのふたりにとって、りさたちはもう、ただのくまのぬいぐるみ。いたことさえ、わすれてる。いきてない』
りさちゃんたちが抱えてる闇は、すごく深かった。
2回もままに捨てられただけじゃなくて、殺されてしまったんだから。
殺されたんじゃなくて、存在を消されてしまった。忘れられてしまった。なかったことにされてしまった。
それは、殺されてしまうより、ずっとひどいこと。
だから、わたしにできることは、
「わたしのからだをつかえるようになったら、すきにつかっていいよ」
何かを失わせるんじゃなくて、りさちゃんたちがもっと自由に、生きたいように生きられるようにすること。
それは、してあげる、なんていう、おこがましいものじゃなくて、わたしがそうしたかった。
たまたま生まれてきたときの体がちがうだけで、わたしたちは同じ人間だから。
わたしたちは、同じ人を一番大切に思ってるから。愛してるから。
『ほんとにいいのか? りさは、みかなのからだで、ぱぱとせっくすするぞ』
「いいよ、しても」
だから、わたしは、全部受け入れるの。
おにーちゃんのことも、りさちゃんのことも、あみちゃんのことも、じゅらちゃんも、しほちゃんも、めいちゃんも、それから、わたしのことも。
もしかしたら、これから、生まれてくるかもしれない、おにーちゃんとわたしのこどものことも。
全部受け入れるの。
人として、してはいけないことまで、受け入れたりはするつもりはないし、そうなる前になんとかする。
でも、それ以外のことは、すべて受け入れる。
何もしてないうちから否定したり、結果しか見ずに努力を認めなかったり、そんなことは絶対にしない。
たぶんね、それが、おにーちゃんがずっとほしかった、わたしもずっとほしかった家族なの。
だから、わたしは、全部受け入れるの。
          
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