ディスカウントショップで兄がわたしを18禁コーナーに連れていこうとしています。

雨野美哉(あめの みかな)

「おにーちゃんとえっちした(い)。⑫」

「わたしは、おにーちゃんが、わたしのこと愛してくれてるの、ちゃんとわかるよ。ちゃんと伝わってるよ。
わたしとの将来のことを、しっかり考えてくれてたり、大事にされてるのちゃんとわかるよ。
まだ付き合いはじめたばかりだけど、その前からずっとずっとわたしはわかってたよ。
だからね、おにーちゃんは、おとーさんとは違うんだよ。
ちゃんと人を愛せる人なんだよ。
愛し方もちゃんとわかってる人なんだよ」

わたしが急にそんなことを言ったからか、おにーちゃんはきょとんとした顔をしました。

だけど、おにーちゃんがびっくりしていたのは、それが理由じゃなくて、

「えっちしてなくても?」

自分が、体を重ねる以外の方法で、相手を愛しているということを伝えることができない、愛し方がわからないと思い込んでいたからでした。

「うん。えっちしてなくてもだよ。
おにーちゃんがわたしのこと愛してくれてるのちゃんとわかるよ。
大切に思ってくれてること、ちゃんと伝わってるよ。
今こうして、そばにいるだけでも、わたしはしあわせでいっぱいなんだよ。
こんなにしあわせでいいのかなっていうくらい、わたしはしあわせなんだよ?」

おにーちゃんが自覚している通り、確かにえっちしてるときは、もっとすごく強く伝わってくるけど……
でも、それは今は言うべきことじゃなかったから、わたしは言いませんでした。

おにーちゃんがわたしのことをすごく好きでいてくれるから、えっちのときにちゃんと大事にされてることとかが改めてわかるからだとか、説明しようと思えばいくらでも説明できるんだけど……

おにーちゃんは今、すっごく、恋愛について、えっちについて、こじらせにこじらせてる状態だから、今はそのこじらせたいくつもの知恵の輪を、一個ずつ丁寧に解いてあげなきゃいけないの。


おにーちゃんは、ほっと胸をなでおろしたように、そして、とても安心したように、

「よかった……」

と、小さくつぶやきました。

これが、わたしがおにーちゃんにちゃんと伝えたかったこと。


そして、

「おにーちゃんに、わたしの愛はちゃんと伝わってる?」

これが、わたしがおにーちゃんに確認したかったこと。

「わたしがおにーちゃんのこと、どれだけ好きで、どれだけ愛してるか……
わたしにとって、おにーちゃんがどれだけ大切な人で、どれだけ必要としてるか……」

それから、

「わたしが、おにーちゃんとずっといっしょにいたいって思ってること、おにーちゃんが今生きていることや生まれてきたことが間違いじゃないってこと……
えっちしてなくても、おにーちゃんにちゃんと伝わってる……のかな……?」

わたしが、一生懸命、おにーちゃんにわたしの想いを伝えると、おにーちゃんの目には涙が溢れました。
涙はすぐに大きな粒になって、ぽろぽろとこぼれはじめて、おにーちゃんは声を殺して、泣き出してしまいました。

わたしは、そんなおにーちゃんを目の前にして不安な気持ちでいっぱいになってしまいました。

伝わってなかったのかな……
だから、わたしに責められてるような気持ちになっちゃって、泣いちゃったのかな……

だけど、そうじゃありませんでした。

「ちゃんと、わかる……
みかなのきもち……ちゃんとぼくにも……
こんなぼくにも……伝わってる……」


おにーちゃんは、わたしに尋ねられて、このときはじめて、そのことに気づいてたみたいでした。

おにーちゃんは、涙といっしょに出てきた鼻水をすすりながら、

「体を、重ねな、くても……
えっちして、るときだけ、じゃなくても……
ちゃんと、みかな、に、愛されて、ること、わかるよ……
みかなに、必要と、されてい、ること……
みかなが、ぼくに、生きて、いてほしいって、思ってく、れていること……わかる……」

わたしは、その言葉がうれしくて、おにーちゃんを思いっきりだきしめました。

いっぱいキスをして、溢れてくる涙も鼻水も全部なめてあげました。

おにーちゃん、知ってた?
こんなこと、本当に好きじゃなかったらできないんだよ?

おにーちゃんのことが世界で一番大好きな、わたしにしかできないことなんだよ?



          

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