ディスカウントショップで兄がわたしを18禁コーナーに連れていこうとしています。
2020/08/29 「エアまごころを兄に」
朝おにーちゃんを起こしに行くと、おにーちゃんはもう起きていて、部屋の隅で体育座りをして、エヴァ旧劇場版のシンジくんみたいになっていました。
「もう何もしたくない……死にたい……生きていたくない……」
ネルフはあれだけチルドレンたちのシンクロ率を気にするなら、ちゃんとシンジくんやアスカにお薬を処方すべきだったと思うんだけど……
そんな場合じゃなくて!
だめだ、これ、まじでやばいやつだ……
おにーちゃんのメンタルが、深い井戸の底の、さらに底無し沼に落ちてる……
おにーちゃんがもしマリオだったら、1機減ってる……
ルイージだったとしても1機減ってる……
車の免許とっといてよかった……
まさかわたしがおにーちゃんを病院に連れていく、なんていう事態が起きるとは夢にも思わなかったけど。
高3の冬休みの浜名湖自動車学校の合宿以来だから……
車の運転は、半年ぶり?
しかも、隣に教官の先生はいないし、旧劇場版シンジくん仕様になったおにーちゃんが代わりに助手席で体育座りをしているだけ……
ペーパードライバーだったわたしは、免許を取ってから初の運転で、赤信号に気づかずにブレーキ踏み忘れて信号無視したり、ブレーキのつもりがアクセル踏んでたり、おしっこがね、ちょっと出ちゃったよね……
それくらい怖かった! 怖かったの!!
でもねでもね、手のかかるおにーちゃんほどかわいい人はいないの!
だって、わたしがいないと生きていけないんだもん。
でも、おにーちゃんは、かかりつけの病院で診察が終わって、お薬を飲ませても、ほとんど症状は変わりませんでした。
いつもと同じお薬を出してもらっただけで、そのお薬を毎日飲んでるのに、こうなっちゃったんだから、急に元気になったりはしない……
よく考えたらわかることでした。
病院に連れていけば、お薬をもらえば、って思ってたけど、そんな簡単な問題じゃなかった。
どうしてこのひとばかり、こんなにつらい思いをしなきゃいけないんだろう。
どうしてこのひとが3年間も無理をし続けてることに誰も気づかなかったんだろう。気づいていても誰も手を差しのべてくれなかったのかな。
このひとは、「大丈夫?」って聞いたら、「大丈夫です」って必ず答える。
大丈夫じゃなくても。そういう人。
ずっとわたしが、そばにいなきゃいけなかった。
高校をやめてでも、ついていかなきゃいけなかった。
彼女がいるからって遠慮したわたしが馬鹿だった。
兄のことを何にもわかってない人にまかせちゃいけなかった。
兄をよろしくお願いしますなんて、つきたくもない嘘、つくんじゃなかった。
このひとが二度と傷つかないですむように、無菌室みたいな場所をわたしが1日でも早く作ってあげなくちゃ。
外に働きに出なくてもいいようにしてあげなきゃ。
このひとを傷つけることしかできないひとを、近づけさせないようにしなきゃ。おかーさんとか。
これからは、ずっとわたしがそばにいてあげなきゃ。
わたしは、相変わらずずっと体育座り(今度はベッドの上で)しているおにーちゃんを見て思いました。
愛されていることや、必要とされていること、
生きていてもいいこと、生まれてきたことはまちがいじゃないことを、
言葉でどれだけ伝えても、実感できない人がいます。
体を重ねているときだけしか実感できない人がいます。
あなたを世界で一番愛しているのはわたし。
理解してるのもわたし。
わたしだけは、あなたを否定しない。すべてを受け入れられる。
わたしを抱いたら楽になれるのに。
おにーちゃんも、それはわかってるんだよね。
でも、そのときは良くても、あとできっと自分のことがもっと嫌いになるから、抱くのがこわいんだよね。
だったら、毎日抱いていいんだよ。
それでおにーちゃんが元気になってくれるなら、それがわたしのしあわせ。
でも、おにーちゃんは、絶対に、わたしを抱いたりはしない。
大好きな人の気持ちが少しでも楽になる方法を知ってるのに、手を繋いだり、頭を撫でてあげたり、抱き締めてあげたりしかできない。
わたしはおにーちゃんの妹にうまれてよかったけど、妹にはしてあげられないことがある。
わたしじゃない誰かだったら、お互いに好きじゃなくてもできてしまうことが、わたしがどれだけおにーちゃんを好きでも、してあげられないし、してもらえない。
つらい。……本当につらい。
わたしは、ずっとおにーちゃんを抱きしめて、頭をなでました。
おにーちゃんが眠れるまで。
ずっとずっと、何時間も。
          
「もう何もしたくない……死にたい……生きていたくない……」
ネルフはあれだけチルドレンたちのシンクロ率を気にするなら、ちゃんとシンジくんやアスカにお薬を処方すべきだったと思うんだけど……
そんな場合じゃなくて!
だめだ、これ、まじでやばいやつだ……
おにーちゃんのメンタルが、深い井戸の底の、さらに底無し沼に落ちてる……
おにーちゃんがもしマリオだったら、1機減ってる……
ルイージだったとしても1機減ってる……
車の免許とっといてよかった……
まさかわたしがおにーちゃんを病院に連れていく、なんていう事態が起きるとは夢にも思わなかったけど。
高3の冬休みの浜名湖自動車学校の合宿以来だから……
車の運転は、半年ぶり?
しかも、隣に教官の先生はいないし、旧劇場版シンジくん仕様になったおにーちゃんが代わりに助手席で体育座りをしているだけ……
ペーパードライバーだったわたしは、免許を取ってから初の運転で、赤信号に気づかずにブレーキ踏み忘れて信号無視したり、ブレーキのつもりがアクセル踏んでたり、おしっこがね、ちょっと出ちゃったよね……
それくらい怖かった! 怖かったの!!
でもねでもね、手のかかるおにーちゃんほどかわいい人はいないの!
だって、わたしがいないと生きていけないんだもん。
でも、おにーちゃんは、かかりつけの病院で診察が終わって、お薬を飲ませても、ほとんど症状は変わりませんでした。
いつもと同じお薬を出してもらっただけで、そのお薬を毎日飲んでるのに、こうなっちゃったんだから、急に元気になったりはしない……
よく考えたらわかることでした。
病院に連れていけば、お薬をもらえば、って思ってたけど、そんな簡単な問題じゃなかった。
どうしてこのひとばかり、こんなにつらい思いをしなきゃいけないんだろう。
どうしてこのひとが3年間も無理をし続けてることに誰も気づかなかったんだろう。気づいていても誰も手を差しのべてくれなかったのかな。
このひとは、「大丈夫?」って聞いたら、「大丈夫です」って必ず答える。
大丈夫じゃなくても。そういう人。
ずっとわたしが、そばにいなきゃいけなかった。
高校をやめてでも、ついていかなきゃいけなかった。
彼女がいるからって遠慮したわたしが馬鹿だった。
兄のことを何にもわかってない人にまかせちゃいけなかった。
兄をよろしくお願いしますなんて、つきたくもない嘘、つくんじゃなかった。
このひとが二度と傷つかないですむように、無菌室みたいな場所をわたしが1日でも早く作ってあげなくちゃ。
外に働きに出なくてもいいようにしてあげなきゃ。
このひとを傷つけることしかできないひとを、近づけさせないようにしなきゃ。おかーさんとか。
これからは、ずっとわたしがそばにいてあげなきゃ。
わたしは、相変わらずずっと体育座り(今度はベッドの上で)しているおにーちゃんを見て思いました。
愛されていることや、必要とされていること、
生きていてもいいこと、生まれてきたことはまちがいじゃないことを、
言葉でどれだけ伝えても、実感できない人がいます。
体を重ねているときだけしか実感できない人がいます。
あなたを世界で一番愛しているのはわたし。
理解してるのもわたし。
わたしだけは、あなたを否定しない。すべてを受け入れられる。
わたしを抱いたら楽になれるのに。
おにーちゃんも、それはわかってるんだよね。
でも、そのときは良くても、あとできっと自分のことがもっと嫌いになるから、抱くのがこわいんだよね。
だったら、毎日抱いていいんだよ。
それでおにーちゃんが元気になってくれるなら、それがわたしのしあわせ。
でも、おにーちゃんは、絶対に、わたしを抱いたりはしない。
大好きな人の気持ちが少しでも楽になる方法を知ってるのに、手を繋いだり、頭を撫でてあげたり、抱き締めてあげたりしかできない。
わたしはおにーちゃんの妹にうまれてよかったけど、妹にはしてあげられないことがある。
わたしじゃない誰かだったら、お互いに好きじゃなくてもできてしまうことが、わたしがどれだけおにーちゃんを好きでも、してあげられないし、してもらえない。
つらい。……本当につらい。
わたしは、ずっとおにーちゃんを抱きしめて、頭をなでました。
おにーちゃんが眠れるまで。
ずっとずっと、何時間も。
          
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