あなたが創ったこの世界をわたしは壊したい。
エピローグ(通算147話)
わたしが女王の力をあるべき場所へ返したことによって、村の人たちはあの日の出来事をおぼろげながらに覚えてはいたけれど、普段通りの暮らしに戻りはじめた。
わたしは両親や兄や姉たちと話をし、返璧の家の次期当主は、長男でありすでに成人している兄がなることに決まった。
母は□□市との合併の話を進めはじめていて、それを現当主としての最後の仕事にしようとしていた。
早ければ来年には兄が当主になるという。
兄はこれからは外部から村に人を来ることを拒まなず、積極的に受け入れていくという。
邪馬台国の女王やその民の血を守る必要はもうないと判断し、これ以上村人たちの血が濃くならないようにしていくという。
村の成り立ちや歴史が記された写本は、返璧の家で厳重に管理することになった。
夏休みがはじまって、数日が過ぎた。
わたしは、旧璧隣邸にいた。
みかなと芽衣とわたしは、無事3人で働けるアルバイト先を見つけて、今日はわたしたちの初出勤日だった。
わたしはふたりを迎えにきて、そして、
家がもぬけの殻になっているのを見た。
もぬけの殻という表現は間違っているかもしれない。
3人が引っ越してくる前の、璧隣家に戻っていた。
まるで、この2ヶ月ほどの間のことはすべて夢だったんじゃないか、そんな風に思ってしまうくらい、3人がこの家に住んでいたという痕跡は何もかもなくなっていた。
電話は、三人とも繋がらなかった。
メールも宛先不明で返ってきてしまった。
けれど、わたしのその携帯電話は、確かに彼がわたしにくれたものだった。
隣の家に住んでいる梨沙も、他の村の人たちも、皆3人を覚えていた。
わたしと孝道はつい先日付き合いはじめたばかりで、昨日はじめてデートをした。
アルバイトのシフトはもう出ていたから、休みの日を伝えて、次のデートの日取りもちゃんと決めていた。
「キスって3回目のデートまで待った方がいいのかな?」
と孝道が恥ずかしそうに聞いてきたから、わたしから彼にキスをした。
待ったりなんてしなくていい、何も我慢もしなくていい、とわたしは言った。
あなたがしたいことをしたいときにしてほしい、とわたしは言った。
わたしにとって、それはとてもうれしいことで、しあわせなことなのだと伝えた。
じゃあ、真依ちゃんもしたいことをしたいときにしていいよ、と彼は言ってくれた。
夜にはみかなや芽衣と電話で、今日からのアルバイトの話をした。
3人は、この村のことを本当に気に入ってくれていて、住民票を移したりもしていた。
これから先も、この村にずっと住むのだと言ってくれていた。
何年かしたら真依はわたしのお義姉さんになるんだね、とみかなは言った。
気が早いよ、とわたしは返したけれど、そうなるといいな、と思っていた。
芽衣はもうすっかりその気になっていて、わたしのことをお姉ちゃんて呼びはじめていた。
みかなのことは呼び捨てになっていた。
昨日まで、確かに3人はこの家に住んでいた。
でも、いなくなってしまった。
その理由は、11年が過ぎた今でもわからない。
          
わたしは両親や兄や姉たちと話をし、返璧の家の次期当主は、長男でありすでに成人している兄がなることに決まった。
母は□□市との合併の話を進めはじめていて、それを現当主としての最後の仕事にしようとしていた。
早ければ来年には兄が当主になるという。
兄はこれからは外部から村に人を来ることを拒まなず、積極的に受け入れていくという。
邪馬台国の女王やその民の血を守る必要はもうないと判断し、これ以上村人たちの血が濃くならないようにしていくという。
村の成り立ちや歴史が記された写本は、返璧の家で厳重に管理することになった。
夏休みがはじまって、数日が過ぎた。
わたしは、旧璧隣邸にいた。
みかなと芽衣とわたしは、無事3人で働けるアルバイト先を見つけて、今日はわたしたちの初出勤日だった。
わたしはふたりを迎えにきて、そして、
家がもぬけの殻になっているのを見た。
もぬけの殻という表現は間違っているかもしれない。
3人が引っ越してくる前の、璧隣家に戻っていた。
まるで、この2ヶ月ほどの間のことはすべて夢だったんじゃないか、そんな風に思ってしまうくらい、3人がこの家に住んでいたという痕跡は何もかもなくなっていた。
電話は、三人とも繋がらなかった。
メールも宛先不明で返ってきてしまった。
けれど、わたしのその携帯電話は、確かに彼がわたしにくれたものだった。
隣の家に住んでいる梨沙も、他の村の人たちも、皆3人を覚えていた。
わたしと孝道はつい先日付き合いはじめたばかりで、昨日はじめてデートをした。
アルバイトのシフトはもう出ていたから、休みの日を伝えて、次のデートの日取りもちゃんと決めていた。
「キスって3回目のデートまで待った方がいいのかな?」
と孝道が恥ずかしそうに聞いてきたから、わたしから彼にキスをした。
待ったりなんてしなくていい、何も我慢もしなくていい、とわたしは言った。
あなたがしたいことをしたいときにしてほしい、とわたしは言った。
わたしにとって、それはとてもうれしいことで、しあわせなことなのだと伝えた。
じゃあ、真依ちゃんもしたいことをしたいときにしていいよ、と彼は言ってくれた。
夜にはみかなや芽衣と電話で、今日からのアルバイトの話をした。
3人は、この村のことを本当に気に入ってくれていて、住民票を移したりもしていた。
これから先も、この村にずっと住むのだと言ってくれていた。
何年かしたら真依はわたしのお義姉さんになるんだね、とみかなは言った。
気が早いよ、とわたしは返したけれど、そうなるといいな、と思っていた。
芽衣はもうすっかりその気になっていて、わたしのことをお姉ちゃんて呼びはじめていた。
みかなのことは呼び捨てになっていた。
昨日まで、確かに3人はこの家に住んでいた。
でも、いなくなってしまった。
その理由は、11年が過ぎた今でもわからない。
          
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