あなたが創ったこの世界をわたしは壊したい。
第五部「消夏(ショウカ)」プロローグ(第115話)
――苦しいときもいつも見上げれば大っきな雲があって、アタシはそれに向かって歩いて行くんだ。
だっけ? あの、ただただ胸くそが悪くなるだけのケータイ小説のはじまりは。
いかにも、頭の悪い女子高生が書きそうなポエムだな、って思う。
晴れた夏の空に浮かぶ雲の写真に、そんなポエムを添えてポストカードにして、ヴィレッジヴァンガードなんかに置いたら、売れそうだなって思う。
わたしはそんなポストカード、絶対に買わないけど。
作者は、人気の小説家の男で、実際に起きた事件を元にしたフィクションだったようだけれど、わたしがもし同級生から売春を強要されるようなことがあったら、売春なんかさせられる前にすぐに親に相談して警察に行く。その同級生を逮捕してもらって退学にしてもらう。
だから、物語にすらならない。
それが普通だと思う。それが現実だと思う。
あのケータイ小説で描かれた2008年の夏から始まる物語は、秋、冬、春と続き、二度目の夏が来た。
2009(平成21)年。
西暦は、イエス・キリストが産まれたとされる年を元年としたそうだけれど、実際にキリストが産まれたのは紀元前4年頃らしい。
キリストの誕生日とされる12月25日も、本当にその日であったかどうかはどうかは怪しいそうだ。
この国の初代天皇である神武天皇が即位したとされる年を元年とする暦にすれば、皇紀2669年。
旧約聖書の『創世記』にある天地創造が神によって成された年を逆算し、西暦に直すと紀元前5509年にあたり、それをもとにした世界創造紀元という暦だと7517年。
この世界は、全部いい加減でデタラメで、どうしようもないなって思う。
まぁ、暦自体は、わかりやすくていいけど。
でも、西暦と元号があるのは、アルバイトの面接を受けに行くときの履歴書とか書くときに、めんどくさいだろうなって思う。
わたしはまだ一度もアルバイトもしたことがなかったけれど。
わたしが生まれた村や家は、少し特別で、わたしはいつか家を継ぎ、村を治める立場になることが決まっていた。
高校を卒業して、短大か大学か、それとも専門学校か、何かに進学して就職活動するときとか、それから転職したりするときとか、本当に面倒になるんだろうなって、わたしは思っていた。
だけど、わたしは、この年の夏のことを、一生忘れることはないだろう。
彼女たちと過ごした日々のことを。
わたしの人生の中で、彼女たちと過ごした日々だけが、わたしにとって唯一輝いている。
11年たった今、その輝きはより一層増し、あのときがわたしの人生のピークで、そのあとの11年やこれから先の数十年は余生でしかないと思えるほどに。
わたしは彼女たちと出会うために産まれてきたのだと思えるほどに。
わたしひとりの人生ではなんの物語も生まれることはないけれど、わたしは彼女たちと出会うことで、わたしがあの夏過ごした日々だけは物語になると思えるほどに。
それくらいに輝いていた。
彼女たちは、雨野みかなと山汐芽衣は、わたしを照らす太陽だった。
          
だっけ? あの、ただただ胸くそが悪くなるだけのケータイ小説のはじまりは。
いかにも、頭の悪い女子高生が書きそうなポエムだな、って思う。
晴れた夏の空に浮かぶ雲の写真に、そんなポエムを添えてポストカードにして、ヴィレッジヴァンガードなんかに置いたら、売れそうだなって思う。
わたしはそんなポストカード、絶対に買わないけど。
作者は、人気の小説家の男で、実際に起きた事件を元にしたフィクションだったようだけれど、わたしがもし同級生から売春を強要されるようなことがあったら、売春なんかさせられる前にすぐに親に相談して警察に行く。その同級生を逮捕してもらって退学にしてもらう。
だから、物語にすらならない。
それが普通だと思う。それが現実だと思う。
あのケータイ小説で描かれた2008年の夏から始まる物語は、秋、冬、春と続き、二度目の夏が来た。
2009(平成21)年。
西暦は、イエス・キリストが産まれたとされる年を元年としたそうだけれど、実際にキリストが産まれたのは紀元前4年頃らしい。
キリストの誕生日とされる12月25日も、本当にその日であったかどうかはどうかは怪しいそうだ。
この国の初代天皇である神武天皇が即位したとされる年を元年とする暦にすれば、皇紀2669年。
旧約聖書の『創世記』にある天地創造が神によって成された年を逆算し、西暦に直すと紀元前5509年にあたり、それをもとにした世界創造紀元という暦だと7517年。
この世界は、全部いい加減でデタラメで、どうしようもないなって思う。
まぁ、暦自体は、わかりやすくていいけど。
でも、西暦と元号があるのは、アルバイトの面接を受けに行くときの履歴書とか書くときに、めんどくさいだろうなって思う。
わたしはまだ一度もアルバイトもしたことがなかったけれど。
わたしが生まれた村や家は、少し特別で、わたしはいつか家を継ぎ、村を治める立場になることが決まっていた。
高校を卒業して、短大か大学か、それとも専門学校か、何かに進学して就職活動するときとか、それから転職したりするときとか、本当に面倒になるんだろうなって、わたしは思っていた。
だけど、わたしは、この年の夏のことを、一生忘れることはないだろう。
彼女たちと過ごした日々のことを。
わたしの人生の中で、彼女たちと過ごした日々だけが、わたしにとって唯一輝いている。
11年たった今、その輝きはより一層増し、あのときがわたしの人生のピークで、そのあとの11年やこれから先の数十年は余生でしかないと思えるほどに。
わたしは彼女たちと出会うために産まれてきたのだと思えるほどに。
わたしひとりの人生ではなんの物語も生まれることはないけれど、わたしは彼女たちと出会うことで、わたしがあの夏過ごした日々だけは物語になると思えるほどに。
それくらいに輝いていた。
彼女たちは、雨野みかなと山汐芽衣は、わたしを照らす太陽だった。
          
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