あなたが創ったこの世界をわたしは壊したい。
第15話(第97話)
『あちら側』というのは、加藤学の妹である加藤麻衣が産まれてくることができなかった世界のことらしかった。
麻衣は去年の秋に、神隠しに遭い、その世界に迷い来んでしまったそうだ。
平行世界。パラレルワールド。
それは無数に存在し、神隠しに遭った人は、その人が産まれなかった、あるいはすでに死んでしまっている別世界に行く。
きっとその世界にも、おにーちゃんやわたしがいるのだと、おにーちゃんは言った。
その世界のおにーちゃんとわたしも仲良くしてるといいな、と思った。
おにーちゃんがいない世界のわたしと、わたしがいない世界のおにーちゃんがちゃんと出会えているといいな、と思った。
病院をでたわたしたちは、しばらく近くのホテルに泊まることにした。
ラブホテルとかじゃなくて、普通のホテルだった。
山汐芽衣がいっしょだったから。
おにーちゃんはスイートルームをとりあえず一週間確保してくれた。
お金は大丈夫なのかなと思ったけれど、わたしの前でかっこつけたいんだとわかったから言わなかった。
おにーちゃんはわたしに、月曜からちゃんと学校に行くように行った。
だから、わたしは月曜の朝早く、おとーさんやおかーさんが目を覚ます前に制服や教科書を取りに行くことにした。
おにーちゃんは、山汐凛や山汐紡、内藤美嘉、夏目メイの四台の携帯電話を必ず見つけ出すと言った。
凛が棄ててしまったのかもしれないそれらを一体どうやって見つけ出すのか、わたしには検討もつかなかった。
けれど、おにーちゃんは、前に加藤学からそれらを預かった時に、万が一のことを考えて四台それぞれの中に発信器を埋め込んでいたらしかった。
彼が何か無茶をするようなことがあれば、すぐにそこに警察を向かわせることができるように。
「見てろよ、みかな、ドラゴンレーダーみたいに発信器の現在位置を表す4つの点が点滅しているのが見れるから」
けれど、パソコンの画面に映し出された地図の中に、ひとつもそんな点滅するポイントはなかった。
あっ、と、おにーちゃんは何かを思い出して、
「あの四台は学が壊したんだったっけ」
と、言った。
「しかもあれ、全部偽物だったわ」
わたしといっしょに画面を見ていた芽衣が、ズコーッて新喜劇みたいに転んだ。
けれど、おにーちゃんのパソコンの中には、山汐凛や山汐紡、内藤美嘉、夏目メイの人格がデジタル化されたプログラムのコピーが確かにあって、おそらく偽物というよりは、夏目メイが用意していたスペアだったのだとおにーちゃんは言った。
だから、携帯電話を四台、新しく契約してその四台に人格をひとつひとつコピーしていけばいけばよかった。
山汐芽衣のものがなかったけれど、芽衣はわたしたちのそばにいた。
だから、正確には、新しく3台の携帯電話を契約すればよかった。
その三台に、山汐凛と紡の人格を移し、芽衣本人から彼女の人格も移す。
すでに消滅してしまっている内藤美嘉や、夏目メイ時代の芽衣の人格は、おにーちゃんのパソコンの中に残す。
その日のうちに、芽衣はお姉ちゃんとお兄ちゃんと再会できた。
わたしも、9ヶ月ぶりに、山汐凛に再会した。
          
麻衣は去年の秋に、神隠しに遭い、その世界に迷い来んでしまったそうだ。
平行世界。パラレルワールド。
それは無数に存在し、神隠しに遭った人は、その人が産まれなかった、あるいはすでに死んでしまっている別世界に行く。
きっとその世界にも、おにーちゃんやわたしがいるのだと、おにーちゃんは言った。
その世界のおにーちゃんとわたしも仲良くしてるといいな、と思った。
おにーちゃんがいない世界のわたしと、わたしがいない世界のおにーちゃんがちゃんと出会えているといいな、と思った。
病院をでたわたしたちは、しばらく近くのホテルに泊まることにした。
ラブホテルとかじゃなくて、普通のホテルだった。
山汐芽衣がいっしょだったから。
おにーちゃんはスイートルームをとりあえず一週間確保してくれた。
お金は大丈夫なのかなと思ったけれど、わたしの前でかっこつけたいんだとわかったから言わなかった。
おにーちゃんはわたしに、月曜からちゃんと学校に行くように行った。
だから、わたしは月曜の朝早く、おとーさんやおかーさんが目を覚ます前に制服や教科書を取りに行くことにした。
おにーちゃんは、山汐凛や山汐紡、内藤美嘉、夏目メイの四台の携帯電話を必ず見つけ出すと言った。
凛が棄ててしまったのかもしれないそれらを一体どうやって見つけ出すのか、わたしには検討もつかなかった。
けれど、おにーちゃんは、前に加藤学からそれらを預かった時に、万が一のことを考えて四台それぞれの中に発信器を埋め込んでいたらしかった。
彼が何か無茶をするようなことがあれば、すぐにそこに警察を向かわせることができるように。
「見てろよ、みかな、ドラゴンレーダーみたいに発信器の現在位置を表す4つの点が点滅しているのが見れるから」
けれど、パソコンの画面に映し出された地図の中に、ひとつもそんな点滅するポイントはなかった。
あっ、と、おにーちゃんは何かを思い出して、
「あの四台は学が壊したんだったっけ」
と、言った。
「しかもあれ、全部偽物だったわ」
わたしといっしょに画面を見ていた芽衣が、ズコーッて新喜劇みたいに転んだ。
けれど、おにーちゃんのパソコンの中には、山汐凛や山汐紡、内藤美嘉、夏目メイの人格がデジタル化されたプログラムのコピーが確かにあって、おそらく偽物というよりは、夏目メイが用意していたスペアだったのだとおにーちゃんは言った。
だから、携帯電話を四台、新しく契約してその四台に人格をひとつひとつコピーしていけばいけばよかった。
山汐芽衣のものがなかったけれど、芽衣はわたしたちのそばにいた。
だから、正確には、新しく3台の携帯電話を契約すればよかった。
その三台に、山汐凛と紡の人格を移し、芽衣本人から彼女の人格も移す。
すでに消滅してしまっている内藤美嘉や、夏目メイ時代の芽衣の人格は、おにーちゃんのパソコンの中に残す。
その日のうちに、芽衣はお姉ちゃんとお兄ちゃんと再会できた。
わたしも、9ヶ月ぶりに、山汐凛に再会した。
          
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