あなたが創ったこの世界をわたしは壊したい。
第35話(第79話)
今度はわたしが驚かされた。
「どうして、わたしの名前を知ってるの?」
お兄ちゃんが麻衣宛に手紙を書いていたんです、と彼女は言った。
「お兄ちゃんが想像していた通りなら、麻衣はきっと、麻衣が産まれてくることができなかった世界に行ってしまったんじゃないかって書いてありました。
もし、麻衣がその世界から戻ってくることが出来て、そのとき、もしお兄ちゃんがお兄ちゃんじゃなくなっていたり、死んでしまっていたり、目を覚ますことができなくなって病院に入院していたりするかもしれないから、手紙を書いておく、って書いてありました」
彼はいつ、そんな手紙を書いていたのだろう。
手紙は、横浜市内の郵便局の消印が捺されて、彼女宛に郵送されていたそうだった。
「麻衣がもし本当に、お兄ちゃんが想像していた通りに、麻衣が産まれなかった世界に行ってしまっていたのだとしたら……
出版社の編集者さん以外でそのことを知っているのは、お兄ちゃんが麻衣のことと同じくらい、麻衣以外の女の子で、はじめて好きになった女の子だけだって……
久東羽衣さんって名前で、まだ知り合って数日しか経ってないけど、本当に好きなんだって書いてありました」
わたしは涙が溢れて止まらなかった。
彼女も泣いていた。
それでも、彼女はわたしに、その手紙の内容を伝えてくれた。
「お兄ちゃんは、自分が死んだりしてなかったら、お兄ちゃんじゃなくなってたとしても必ず帰ってくるから、目が覚めなくなっていたとしても必ず目を覚ますから、だから羽衣さんに待っていてほしいって伝えてほしいって……」
近い将来、わたしは、彼女の義理のお姉さんになるかもしれない人だから、仲良くしてほしいって書いてあったのだと、彼女は言った。
「お兄ちゃんの手紙に書いてあった通りなんです。
麻衣は、麻衣が産まれてくることができなかった世界に行ってたんです。
その世界で、麻衣は、その世界のお兄ちゃんのことが好きになりました。
本当に本当に好きになりました。
でも麻衣が、あちら側に行っていたのは、6日間だけだったはずなのに、こちら側では何ヵ月も経ってて……
その手紙を読んで、こちら側のお兄ちゃんも、麻衣が思ってたお兄ちゃんと違って、あちら側のお兄ちゃんと同じくらい麻衣のことを好きでいてくれたことがわかりました。
でも、どうしてお兄ちゃんが、こんなことになっちゃったのか、誰も知らなくて……
羽衣さんは、お兄ちゃんに何があったか知ってるんですか?」
わたしは、知ってるよ、と答えた。
そして、
「すごく長い話になるけど、いい?」
わたしはそう言って、彼女は大きく頷いた。
「わたしは、学さんが書いた小説に一話だけ出てきた登場人物のモデルになった人の妹なの」
加藤学と過ごした時間のこと、草詰アリスのこと、夏目メイのこと、山汐凛のこと、紡のこと、そして山汐芽衣の話を、彼女に話し始めた。
          
「どうして、わたしの名前を知ってるの?」
お兄ちゃんが麻衣宛に手紙を書いていたんです、と彼女は言った。
「お兄ちゃんが想像していた通りなら、麻衣はきっと、麻衣が産まれてくることができなかった世界に行ってしまったんじゃないかって書いてありました。
もし、麻衣がその世界から戻ってくることが出来て、そのとき、もしお兄ちゃんがお兄ちゃんじゃなくなっていたり、死んでしまっていたり、目を覚ますことができなくなって病院に入院していたりするかもしれないから、手紙を書いておく、って書いてありました」
彼はいつ、そんな手紙を書いていたのだろう。
手紙は、横浜市内の郵便局の消印が捺されて、彼女宛に郵送されていたそうだった。
「麻衣がもし本当に、お兄ちゃんが想像していた通りに、麻衣が産まれなかった世界に行ってしまっていたのだとしたら……
出版社の編集者さん以外でそのことを知っているのは、お兄ちゃんが麻衣のことと同じくらい、麻衣以外の女の子で、はじめて好きになった女の子だけだって……
久東羽衣さんって名前で、まだ知り合って数日しか経ってないけど、本当に好きなんだって書いてありました」
わたしは涙が溢れて止まらなかった。
彼女も泣いていた。
それでも、彼女はわたしに、その手紙の内容を伝えてくれた。
「お兄ちゃんは、自分が死んだりしてなかったら、お兄ちゃんじゃなくなってたとしても必ず帰ってくるから、目が覚めなくなっていたとしても必ず目を覚ますから、だから羽衣さんに待っていてほしいって伝えてほしいって……」
近い将来、わたしは、彼女の義理のお姉さんになるかもしれない人だから、仲良くしてほしいって書いてあったのだと、彼女は言った。
「お兄ちゃんの手紙に書いてあった通りなんです。
麻衣は、麻衣が産まれてくることができなかった世界に行ってたんです。
その世界で、麻衣は、その世界のお兄ちゃんのことが好きになりました。
本当に本当に好きになりました。
でも麻衣が、あちら側に行っていたのは、6日間だけだったはずなのに、こちら側では何ヵ月も経ってて……
その手紙を読んで、こちら側のお兄ちゃんも、麻衣が思ってたお兄ちゃんと違って、あちら側のお兄ちゃんと同じくらい麻衣のことを好きでいてくれたことがわかりました。
でも、どうしてお兄ちゃんが、こんなことになっちゃったのか、誰も知らなくて……
羽衣さんは、お兄ちゃんに何があったか知ってるんですか?」
わたしは、知ってるよ、と答えた。
そして、
「すごく長い話になるけど、いい?」
わたしはそう言って、彼女は大きく頷いた。
「わたしは、学さんが書いた小説に一話だけ出てきた登場人物のモデルになった人の妹なの」
加藤学と過ごした時間のこと、草詰アリスのこと、夏目メイのこと、山汐凛のこと、紡のこと、そして山汐芽衣の話を、彼女に話し始めた。
          
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