あなたが創ったこの世界をわたしは壊したい。
第26話(第70話)
わたしたちは、アリスの家を出ることにした。
加藤学の家は、東京にあるということだったけれど、その家もおそらく夏目メイに知られているだろう。
だから、わたしたちは、取り引きに応じるか応じないかについてはまだ決めあぐねていたけれど、夏目メイや草詰アリスが入院した病院があるという、■■■村の隣にある□□市に下道で向かいながら、ラブホテルを見つけたら一晩だけ泊まり、数日かけて□□市に向かうことにした。
わたしは助手席で移り行く景色を眺めながら、夏目メイから持ちかけられた取り引きに応じたらどうなるのか考えた。
いまだにそんなことが可能なのかどうかわからないけれど、夏目メイはわたしの身体に憑依するだろう。
わたしが暴行をしたのは、夏目メイではなく、山汐凛の身体だ。
山汐凛が身体を取り戻したとして、夏目メイのときの記憶があるのかどうかさえわからなかったが、もはやその身体には夏目メイはいない。
わたしの身体を手に入れた夏目メイにとって、山汐凛の身体を暴行したのが、わたしだろうが加藤学だろうが、もはやどうでもいいことになる。
しかし、わたしは今の山汐凛のように、天岩戸に閉じ込められてしまうだろう。
内藤美嘉のように殺されてしまう可能性もある。
取り引きに応じて得をするのは、夏目メイだけだ。
じゃあ、取り引きに応じなかった場合は?
夏目メイはわたしの身体を手に入れることはできない。
わたしたちが四台の携帯電話をどこかに隠してしまえば、夏目メイは誰の身体にも憑依することはできなくなり、山汐凛の身体に居座り続けざるを得なくなる。
わたしも学も逮捕されるが、夏目メイはわたしたちが取り引きに応じなかった場合の方が痛手を被る。
それどころか、わたしたちは、どの携帯電話が本当に夏目メイのものかわからなくとも、すべて破壊することで、夏目メイを殺すことができる。
夏目メイを殺してしまえば、わたしも学も逮捕されずに済む。
確かに、夏目メイは焦っていた。
彼女らしくない、という学の言葉はその通りだった。
わたしが考えたことを口にすると、
「だけど、相手は夏目メイだ。
おそらく取り引きに応じなかった場合や、この四台の携帯電話を破壊してしまった場合、ぼくや羽衣ちゃんが考えている以上の痛手を被ることは目に見えている。
おそらくこの四台の携帯電話の中に、夏目メイの人格が入っているものはない。
自分にとって最も大切なものを、自宅の固定電話のそばに無造作に置いておくわけがない」
学はそう言った。
「そうだね。でも、わたしたちがそう考えるのを見越して、あえて本物を置いていたのかもしれない」
相手はあの夏目メイだもの、とわたしは言った。
「学さんは、夏目メイにとって最悪のケースがどんなことか考えたことはある?」
「今のぼくは、羽衣ちゃんを守ることだけで精一杯だよ」
その気持ちだけで、わたしは十分だと思った。
だから、わたしは、夏目メイにとって最悪のケースを学に伝えることにした。
「夏目メイがわたしの身体を手に入れたにも関わらず、わたしが夏目メイに対してしたことのせいで、自分が逮捕されることだよ」
そう言ったわたしに、学の顔が青ざめた。
それは、夏目メイだけではなく、わたしを大切に思ってくれている学にとっても最悪のケースだった。
わたしは、もう、そうすると決めていた。
あとは、そのためにどうすればいいかを考えるだけだった。
          
加藤学の家は、東京にあるということだったけれど、その家もおそらく夏目メイに知られているだろう。
だから、わたしたちは、取り引きに応じるか応じないかについてはまだ決めあぐねていたけれど、夏目メイや草詰アリスが入院した病院があるという、■■■村の隣にある□□市に下道で向かいながら、ラブホテルを見つけたら一晩だけ泊まり、数日かけて□□市に向かうことにした。
わたしは助手席で移り行く景色を眺めながら、夏目メイから持ちかけられた取り引きに応じたらどうなるのか考えた。
いまだにそんなことが可能なのかどうかわからないけれど、夏目メイはわたしの身体に憑依するだろう。
わたしが暴行をしたのは、夏目メイではなく、山汐凛の身体だ。
山汐凛が身体を取り戻したとして、夏目メイのときの記憶があるのかどうかさえわからなかったが、もはやその身体には夏目メイはいない。
わたしの身体を手に入れた夏目メイにとって、山汐凛の身体を暴行したのが、わたしだろうが加藤学だろうが、もはやどうでもいいことになる。
しかし、わたしは今の山汐凛のように、天岩戸に閉じ込められてしまうだろう。
内藤美嘉のように殺されてしまう可能性もある。
取り引きに応じて得をするのは、夏目メイだけだ。
じゃあ、取り引きに応じなかった場合は?
夏目メイはわたしの身体を手に入れることはできない。
わたしたちが四台の携帯電話をどこかに隠してしまえば、夏目メイは誰の身体にも憑依することはできなくなり、山汐凛の身体に居座り続けざるを得なくなる。
わたしも学も逮捕されるが、夏目メイはわたしたちが取り引きに応じなかった場合の方が痛手を被る。
それどころか、わたしたちは、どの携帯電話が本当に夏目メイのものかわからなくとも、すべて破壊することで、夏目メイを殺すことができる。
夏目メイを殺してしまえば、わたしも学も逮捕されずに済む。
確かに、夏目メイは焦っていた。
彼女らしくない、という学の言葉はその通りだった。
わたしが考えたことを口にすると、
「だけど、相手は夏目メイだ。
おそらく取り引きに応じなかった場合や、この四台の携帯電話を破壊してしまった場合、ぼくや羽衣ちゃんが考えている以上の痛手を被ることは目に見えている。
おそらくこの四台の携帯電話の中に、夏目メイの人格が入っているものはない。
自分にとって最も大切なものを、自宅の固定電話のそばに無造作に置いておくわけがない」
学はそう言った。
「そうだね。でも、わたしたちがそう考えるのを見越して、あえて本物を置いていたのかもしれない」
相手はあの夏目メイだもの、とわたしは言った。
「学さんは、夏目メイにとって最悪のケースがどんなことか考えたことはある?」
「今のぼくは、羽衣ちゃんを守ることだけで精一杯だよ」
その気持ちだけで、わたしは十分だと思った。
だから、わたしは、夏目メイにとって最悪のケースを学に伝えることにした。
「夏目メイがわたしの身体を手に入れたにも関わらず、わたしが夏目メイに対してしたことのせいで、自分が逮捕されることだよ」
そう言ったわたしに、学の顔が青ざめた。
それは、夏目メイだけではなく、わたしを大切に思ってくれている学にとっても最悪のケースだった。
わたしは、もう、そうすると決めていた。
あとは、そのためにどうすればいいかを考えるだけだった。
          
「恋愛」の人気作品
書籍化作品
-
-
75
-
-
381
-
-
35
-
-
127
-
-
124
-
-
49989
-
-
34
-
-
59
-
-
55
コメント