気づいたら異世界にいた。転移したのか、転生したのかはわからない。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者。
第90話 魔法の教えるのは理系科目を教えるくらいに難しい。
レンジたちは飛空艇で一度コムーネの町へと戻った。
宿屋に皆の荷物が置いたままであったからだった。
レオナルドが残した秘術からピノアが編み出した秘技を、ステラとアンフィスが習得するため、もう数日宿泊することにした。
皆で食事をしながら、レンジはピノアたちの話を聞いていたのだが、ゴールデン・バタフライ・エフェクト & インフィニティ・セクシービームスは、考案したピノアにとってはそれほど扱いが難しいものではないが、ステラやアンフィスにとっては非常に難易度が高いものだという。
「ゴールデン・バタフライ・エフェクト って名前は100歩譲っていいとして……
アンド インフィニティ・セクシービームスっていうのは、さすがに勘弁願いたいのだけど……」
「技の名前っていちいち言わないとダメか?
さすがにセクシーは……なぁ?
ダンディーに変えていいか?」
ふたりにとっては、まず技の名前の難易度が高すぎるようだった。
「だめ。言わなきゃだめだし、変えちゃだめ。
わたしにチョサクケンあるし、チャーシュートーロクするから。
勝手に変えたら裁判起こすから」
商標登録と言いたかったのだろうが、いちいちツッコんでたら身がもたないのでレンジはスルーすることにした。
それに三人のやりとりが面白かったので、彼は三人がこれから行おうとしている世界中のダークマターの浄化だけであれば「ゴールデン・バタフライ・エフェクト」だけでいいのでは? ということも言わないでおくことにした。
オリジナル・ブライをいつ相手にしなければわからないということもあったし、何より困っているステラはかわいかったし、ムキになっているピノアが楽しそうだったからだ。
アンフィスも、彼が「テラバージョンのイエス・キリスト」かと思うと、まるで聖おにいさんのイエスのようだなと思った。
いつかシルクプリントでTシャツを作ってやろう。1枚目の文字は「大厄災」で決まりだ。
魔法の習得には、エウロペ城の魔法研究所が最も適した場所らしいが、城下町は惨劇の後そのままであったし、すでに城の魔法設備の機能は停止していた。
だから、ステラとアンフィスは、ピノアちゃん先生から町の周辺で教わるらしい。
ピノアちゃん先生って何だよ。かわいいな、くそう。呼びたいな、とレンジは思った。
「ふたりがゴールデン~を覚えたら、次はパーフェクト・ピノア・ザ・イリュージョンだからね」
「おい、もう自分が早速、技の名前言うのめんどくさくなってんじゃねーか」
「ねぇ、ピノア?
その、もう口にしたくもないような名前の技は何かしら?」
「ん? あ、これだよ?」
ピノアは、技名を言わずに分身を作って見せた。
確かその魔法は、ピノアがエウロペ城の魔術学院に生き残っていたこどもたちに呼び捨てされて、おいかけまわしていたときに、遊び半分で編み出した新魔法だった。
「あのときのは、ただのピノア・ザ・イリュージョン。
あれは、まず水の精霊の魔法で、大気中の水分を使って鏡みたいなものをたくさん作るの。
で、そのあと、光の精霊の魔法で、その鏡みたいなものに映る自分を屈折させたり、なんかいろいろする」
ステラやアンフィスにとって、技の名前の次に難易度が高かったのは、魔法は理系科目の勉強と同じようなもので、分かる者にはなんとなく分かってしまうらしく、ピノアにはなぜ分からないのか意味がわからないらしい、ということだった。
そのため、ピノアが擬音で表現したり、「なんかいろいろする」といった、よくわからない教え方しかできないということだった。
「だが、しかし! ただのピノア・ザ~のときの分身体のわたしには実体がなかったんだけど、なんと! パーフェクトになると実体がつくのだ!!」
「つくのだ! って言われても……」
「ちなみに、ピノアは今どうやって実体を作ってるんだ?」
「えっと、このわたしが今から一分後のわたしで、こっちが二分後のわたし、あとこの子が三分後のわたし。だよね?」
『『『そうそう!!!』』』
三人の分身体(?)のピノアは口を揃えてそう言った。
「もしかして、ピノア……それ、時の精霊の魔法じゃ……」
「うん、そうだよ。
ブライとレンジのお父さんをやっつけたあと、すぐにオロバスちゃんがね、
『ピノピノごめんね~、なかなおりしよ~~』
って言ってきたから、仲直りしたの」
ステラもアンフィスも、レンジも絶句した。
「あれ? 言ってなかったっけ?」
ステラは大きなため息をついて、
「つまり、わたしたちが、その『パーフェクト・ピノア』を」
『『『『パーフェクト・ピノア・ザ・イリュージョンだから』』』』
四人で言うな、四人で。頼むから。
「はいはい。それを使えるようになったら、分身っていうよりかはもう自分そのものなわけだけれど、実体を伴った状態のたくさんのわたしたちが、同時にゴールデンなんとかを使えるようになるわけね」
『『『『そうそう!!!!』』』』
時の精霊がすでに再び姿を現していたことの衝撃がすさまじかったが、
「ごめんね、3人とも。あれ、6人か。
どうしても、ちょっと気になることがあるんだけどさ」
レンジは思わず口をはさんでいた。
「それって、今のピノアから見て、一分後、二分後、三分後のピノアたちが常に今この時間にいるわけだよね?」
『『『『そうだよ!!!!』』』』
「もしかしてさ、オリジナル・ブライも、『パーフェクト・ブライ・ザ・イリュージョン』的な魔法で、一分後から、9999分後までの自分を常に召喚し続けてたから、たくさんいた可能性がない?」
「……あるかも」
「……ありえるわね」
「レンジ、お前、もしかして天才か?」
いや、オリジナル・ブライはたぶんピノア並みにいろんな意味でやばいんだよ、とレンジは思ったが、言わなかったし言えなかった。
父も、もしかしたらひとりではないのかもしれない。
そういう可能性が出てきてしまったからだった。
          
宿屋に皆の荷物が置いたままであったからだった。
レオナルドが残した秘術からピノアが編み出した秘技を、ステラとアンフィスが習得するため、もう数日宿泊することにした。
皆で食事をしながら、レンジはピノアたちの話を聞いていたのだが、ゴールデン・バタフライ・エフェクト & インフィニティ・セクシービームスは、考案したピノアにとってはそれほど扱いが難しいものではないが、ステラやアンフィスにとっては非常に難易度が高いものだという。
「ゴールデン・バタフライ・エフェクト って名前は100歩譲っていいとして……
アンド インフィニティ・セクシービームスっていうのは、さすがに勘弁願いたいのだけど……」
「技の名前っていちいち言わないとダメか?
さすがにセクシーは……なぁ?
ダンディーに変えていいか?」
ふたりにとっては、まず技の名前の難易度が高すぎるようだった。
「だめ。言わなきゃだめだし、変えちゃだめ。
わたしにチョサクケンあるし、チャーシュートーロクするから。
勝手に変えたら裁判起こすから」
商標登録と言いたかったのだろうが、いちいちツッコんでたら身がもたないのでレンジはスルーすることにした。
それに三人のやりとりが面白かったので、彼は三人がこれから行おうとしている世界中のダークマターの浄化だけであれば「ゴールデン・バタフライ・エフェクト」だけでいいのでは? ということも言わないでおくことにした。
オリジナル・ブライをいつ相手にしなければわからないということもあったし、何より困っているステラはかわいかったし、ムキになっているピノアが楽しそうだったからだ。
アンフィスも、彼が「テラバージョンのイエス・キリスト」かと思うと、まるで聖おにいさんのイエスのようだなと思った。
いつかシルクプリントでTシャツを作ってやろう。1枚目の文字は「大厄災」で決まりだ。
魔法の習得には、エウロペ城の魔法研究所が最も適した場所らしいが、城下町は惨劇の後そのままであったし、すでに城の魔法設備の機能は停止していた。
だから、ステラとアンフィスは、ピノアちゃん先生から町の周辺で教わるらしい。
ピノアちゃん先生って何だよ。かわいいな、くそう。呼びたいな、とレンジは思った。
「ふたりがゴールデン~を覚えたら、次はパーフェクト・ピノア・ザ・イリュージョンだからね」
「おい、もう自分が早速、技の名前言うのめんどくさくなってんじゃねーか」
「ねぇ、ピノア?
その、もう口にしたくもないような名前の技は何かしら?」
「ん? あ、これだよ?」
ピノアは、技名を言わずに分身を作って見せた。
確かその魔法は、ピノアがエウロペ城の魔術学院に生き残っていたこどもたちに呼び捨てされて、おいかけまわしていたときに、遊び半分で編み出した新魔法だった。
「あのときのは、ただのピノア・ザ・イリュージョン。
あれは、まず水の精霊の魔法で、大気中の水分を使って鏡みたいなものをたくさん作るの。
で、そのあと、光の精霊の魔法で、その鏡みたいなものに映る自分を屈折させたり、なんかいろいろする」
ステラやアンフィスにとって、技の名前の次に難易度が高かったのは、魔法は理系科目の勉強と同じようなもので、分かる者にはなんとなく分かってしまうらしく、ピノアにはなぜ分からないのか意味がわからないらしい、ということだった。
そのため、ピノアが擬音で表現したり、「なんかいろいろする」といった、よくわからない教え方しかできないということだった。
「だが、しかし! ただのピノア・ザ~のときの分身体のわたしには実体がなかったんだけど、なんと! パーフェクトになると実体がつくのだ!!」
「つくのだ! って言われても……」
「ちなみに、ピノアは今どうやって実体を作ってるんだ?」
「えっと、このわたしが今から一分後のわたしで、こっちが二分後のわたし、あとこの子が三分後のわたし。だよね?」
『『『そうそう!!!』』』
三人の分身体(?)のピノアは口を揃えてそう言った。
「もしかして、ピノア……それ、時の精霊の魔法じゃ……」
「うん、そうだよ。
ブライとレンジのお父さんをやっつけたあと、すぐにオロバスちゃんがね、
『ピノピノごめんね~、なかなおりしよ~~』
って言ってきたから、仲直りしたの」
ステラもアンフィスも、レンジも絶句した。
「あれ? 言ってなかったっけ?」
ステラは大きなため息をついて、
「つまり、わたしたちが、その『パーフェクト・ピノア』を」
『『『『パーフェクト・ピノア・ザ・イリュージョンだから』』』』
四人で言うな、四人で。頼むから。
「はいはい。それを使えるようになったら、分身っていうよりかはもう自分そのものなわけだけれど、実体を伴った状態のたくさんのわたしたちが、同時にゴールデンなんとかを使えるようになるわけね」
『『『『そうそう!!!!』』』』
時の精霊がすでに再び姿を現していたことの衝撃がすさまじかったが、
「ごめんね、3人とも。あれ、6人か。
どうしても、ちょっと気になることがあるんだけどさ」
レンジは思わず口をはさんでいた。
「それって、今のピノアから見て、一分後、二分後、三分後のピノアたちが常に今この時間にいるわけだよね?」
『『『『そうだよ!!!!』』』』
「もしかしてさ、オリジナル・ブライも、『パーフェクト・ブライ・ザ・イリュージョン』的な魔法で、一分後から、9999分後までの自分を常に召喚し続けてたから、たくさんいた可能性がない?」
「……あるかも」
「……ありえるわね」
「レンジ、お前、もしかして天才か?」
いや、オリジナル・ブライはたぶんピノア並みにいろんな意味でやばいんだよ、とレンジは思ったが、言わなかったし言えなかった。
父も、もしかしたらひとりではないのかもしれない。
そういう可能性が出てきてしまったからだった。
          
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