気づいたら異世界にいた。転移したのか、転生したのかはわからない。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者。
第53話 2人目のアルビノの魔人現る。
城内のエスカレーターもエレベーターもすでに止めてしまっていたから、レンジが飛空艇ドックに着くまでには、そこそこ時間がかかった。
ニーズヘッグもケツァルコアトルも、いくらアルマに危機が迫っているかも知れず、急いでいたとはいえ、飛空艇まで自分を運んでくれてからでもよかったろうに。
レンジはそう思ったが、逆にステラやピノアに危機が迫っているとわかったなら、きっと同じことをしただろうなと思った。
飛空艇はまだ出航準備が整っておらず、それどころか、全く手をつけていないようだった。
ステラとピノアは、こどもたちをその背に守るようにして、何者かと対峙していた。
魔王か。それとも大賢者か。
レンジは咄嗟にふたふりの剣を抜き臨戦態勢を取った。
今はさらに、父が愛用していた大剣もある。
背中にそれを背負っているだけで心強かった。
しかし、ふたりの前にいるのは、見知らぬ男だった。
そして、その男は、ゆるいウェーブのかかった銀髪の長い髪をしており、その瞳の色は赤く、真っ白な肌をしていた。
ピノアと同じ、1000年に一度現れるかどうかという伝説上の存在。
その男は、アルビノの魔人だった。
「もう一度だけ聞くわ。あなたは何者なの?」
「わたし以外にアルビノの魔人がいるなんて話は聞いたことがないんだけど」
ステラとピノアは、その男に尋ねた。
もう一度、ということは、すでに一度尋ねたが答えをはぐらかされたか、それとも理解できないような回答をされたということだろう。
しかし、その男はおそらく敵ではないだろう、とレンジは思った。
敵意を感じなかったからだ。
むしろ好意や親しみのようなものが感じられた。
それに、父がレンジのために用意してくれていたチュートリアルクリアのボーナスのことがあったからだ。
その男は、レンジに気づくと、
「あぁ、あんたも来てくれたのか。
確か、レンジだったか?
あんたがいてくれると助かるよ」
と言った。どうやらレンジのことを知っているようだった。
ステラとピノアは、ようやくレンジがいることに気づいたらしく、振り返りレンジを見た。
「知ってる人?」
とピノアに聞かれた。
だからレンジは首を横に振った。
「できればあんたらだけじゃなくて、ニーズヘッグやケツァルコアトル、それにアルマがいてくれると話が進めやすくて助かるんだけど……
もしかして、あんたら、まだ彼らに出会う前とかか?」
それは、まるで未来から来たような口振りだった。
「レンジだけじゃなく、ニーズヘッグたちのことも知ってるの?」
「わたしたちはあなたを知らない。
なのにどうして、あなたはわたしたちのことを知っているの?」
男はやれやれという顔をした。
「ステラ・リヴァイアサンも、いきなり俺をこの時代に飛ばすんだもんなぁ……
先にこの時代に来て、過去の自分に事前に説明しておいてくれるとか、最初だけでいいから一緒に来てくれたりとかしたら、こんな面倒なことは起きなかったのに」
やはり、その口振りは未来から来ているとしか考えられなかった。
「ステラ・リヴァイアサン、俺は未来のあんたに頼まれて、この時代に来た」
「未来のわたしに?」
「そう、エウロペの二代目の大賢者を就任し、時の精霊の魔法を使えるようになったあんたにね。
おそらくはそれほど未来ではないはずだ。
俺が知ってるレンジとそこにいるレンジが、あんまり変わってないからな。
今から半年か、せいぜい一年後くらいのあんただろう。
だが、俺自身は、未来の人間じゃない。
この時代より2000年ほど前の時代の人間だ。
未来のあんたらは、救厄聖書の最後に記された大厄災の預言を止めるために、2000年ほど前の俺が生きる時代に来た。
そして、大厄災を止めるだけでなく、俺を救ってくれた」
今からそう遠くない未来、レンジやステラたちは、2000年ほど前に起きる可能性があった大厄災と呼ばれる何かを止める。
それは理解できた。
しかし、その大厄災というものが何かはわからないが、レンジたちが再び時の精霊の力を借りることができるような日が来るとしても、歴史を変えるような真似をするはずがなかった。
だとすれば、本来なら起きるはずがなかったものを、過去に行き起こそうとしている者がおり、それを止めに行ったのではないか。
それならば、納得がいくような気はした。
そんなことを起こそうとする者にも、ふたり心当たりがあった。
「それがきっかけで、俺はあんたらの仲間になったわけなんだけど、ろくに説明もされないままこの時間に飛ばされてきたんだよ。
おまけに、俺の名前は確か、この時代ではまだ、神の名前と同じで、みだりに口にしてはならないとか言われてるらしいから、あんたらは知らないんだったかな。
まぁ、でも未来のレンジから、リバーステラから来たレンジだけにわかる自己紹介の方法は聞いてる。
俺は、アンフィス・バエナ・イポトリル。
リバーステラには、2000年くらい前にイエス・キリストっていう聖人がいたんだろ?
そいつの『テラバージョンが俺』って言ったらわかる?」
レンジの目は点になった。
          
ニーズヘッグもケツァルコアトルも、いくらアルマに危機が迫っているかも知れず、急いでいたとはいえ、飛空艇まで自分を運んでくれてからでもよかったろうに。
レンジはそう思ったが、逆にステラやピノアに危機が迫っているとわかったなら、きっと同じことをしただろうなと思った。
飛空艇はまだ出航準備が整っておらず、それどころか、全く手をつけていないようだった。
ステラとピノアは、こどもたちをその背に守るようにして、何者かと対峙していた。
魔王か。それとも大賢者か。
レンジは咄嗟にふたふりの剣を抜き臨戦態勢を取った。
今はさらに、父が愛用していた大剣もある。
背中にそれを背負っているだけで心強かった。
しかし、ふたりの前にいるのは、見知らぬ男だった。
そして、その男は、ゆるいウェーブのかかった銀髪の長い髪をしており、その瞳の色は赤く、真っ白な肌をしていた。
ピノアと同じ、1000年に一度現れるかどうかという伝説上の存在。
その男は、アルビノの魔人だった。
「もう一度だけ聞くわ。あなたは何者なの?」
「わたし以外にアルビノの魔人がいるなんて話は聞いたことがないんだけど」
ステラとピノアは、その男に尋ねた。
もう一度、ということは、すでに一度尋ねたが答えをはぐらかされたか、それとも理解できないような回答をされたということだろう。
しかし、その男はおそらく敵ではないだろう、とレンジは思った。
敵意を感じなかったからだ。
むしろ好意や親しみのようなものが感じられた。
それに、父がレンジのために用意してくれていたチュートリアルクリアのボーナスのことがあったからだ。
その男は、レンジに気づくと、
「あぁ、あんたも来てくれたのか。
確か、レンジだったか?
あんたがいてくれると助かるよ」
と言った。どうやらレンジのことを知っているようだった。
ステラとピノアは、ようやくレンジがいることに気づいたらしく、振り返りレンジを見た。
「知ってる人?」
とピノアに聞かれた。
だからレンジは首を横に振った。
「できればあんたらだけじゃなくて、ニーズヘッグやケツァルコアトル、それにアルマがいてくれると話が進めやすくて助かるんだけど……
もしかして、あんたら、まだ彼らに出会う前とかか?」
それは、まるで未来から来たような口振りだった。
「レンジだけじゃなく、ニーズヘッグたちのことも知ってるの?」
「わたしたちはあなたを知らない。
なのにどうして、あなたはわたしたちのことを知っているの?」
男はやれやれという顔をした。
「ステラ・リヴァイアサンも、いきなり俺をこの時代に飛ばすんだもんなぁ……
先にこの時代に来て、過去の自分に事前に説明しておいてくれるとか、最初だけでいいから一緒に来てくれたりとかしたら、こんな面倒なことは起きなかったのに」
やはり、その口振りは未来から来ているとしか考えられなかった。
「ステラ・リヴァイアサン、俺は未来のあんたに頼まれて、この時代に来た」
「未来のわたしに?」
「そう、エウロペの二代目の大賢者を就任し、時の精霊の魔法を使えるようになったあんたにね。
おそらくはそれほど未来ではないはずだ。
俺が知ってるレンジとそこにいるレンジが、あんまり変わってないからな。
今から半年か、せいぜい一年後くらいのあんただろう。
だが、俺自身は、未来の人間じゃない。
この時代より2000年ほど前の時代の人間だ。
未来のあんたらは、救厄聖書の最後に記された大厄災の預言を止めるために、2000年ほど前の俺が生きる時代に来た。
そして、大厄災を止めるだけでなく、俺を救ってくれた」
今からそう遠くない未来、レンジやステラたちは、2000年ほど前に起きる可能性があった大厄災と呼ばれる何かを止める。
それは理解できた。
しかし、その大厄災というものが何かはわからないが、レンジたちが再び時の精霊の力を借りることができるような日が来るとしても、歴史を変えるような真似をするはずがなかった。
だとすれば、本来なら起きるはずがなかったものを、過去に行き起こそうとしている者がおり、それを止めに行ったのではないか。
それならば、納得がいくような気はした。
そんなことを起こそうとする者にも、ふたり心当たりがあった。
「それがきっかけで、俺はあんたらの仲間になったわけなんだけど、ろくに説明もされないままこの時間に飛ばされてきたんだよ。
おまけに、俺の名前は確か、この時代ではまだ、神の名前と同じで、みだりに口にしてはならないとか言われてるらしいから、あんたらは知らないんだったかな。
まぁ、でも未来のレンジから、リバーステラから来たレンジだけにわかる自己紹介の方法は聞いてる。
俺は、アンフィス・バエナ・イポトリル。
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