怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

じゃぱにーずかるちゃーいずくーる2


 準備は万端、怠惰ダンジョンのダンジョン間転移門から直接傲慢ダンジョンへと向かった。

 今回俺達がやろうとしている行為は犯罪だ。

 行動自体は正義かもしれないが、不法入国なのは間違いない。

 顔を隠して行動した所で圧倒的な武力を晒せばその時点で千尋達が関与している事は容易にバレる事ではある。

 それでも救いたいと俺の英雄は言った。

 誰かを助けるのに理由がいるのかと、俺の大好きなゲームの主人公は言った。

 幼心にその問いかけは色々と考えさせてくれた。

 それでも俺は誰かを救うのには理由が必要だと思う。

 理由なき救済は傲慢でしかない。

 俺のその考えは今でも変わっていない。

 けれど今回、俺は中国の人達を救いに向かう。

 理由は一つ。

 千尋が救いたいと言ったから。


 ☆ ☆ ☆

 
「ファー!久しぶり!」

「お久しぶりです。マスター様、ベル様、その他の方々」

「久しぶり!といっても、いつも念話繋いでるから久しぶり感は無いね!」

「ダンジョンの運営は順調か?」

「おかげさまで順調です。そちらのスライムを融通して頂いた事はとても感謝しています」

「そっかそっか!街の住人にもよろしく言っといてくれ!」

「はい。入り口は皆様がダンジョンから出たら一度閉じますので、お帰りの際はお知らせ下さい。では、行ってらっしゃいませ」

「いってらっしゃい、マスター!皆も気を付けてね!」

「おぅ!行ってきます!」

 傲慢ダンジョンの意思を持ったダンジョンコアのファーとベルとの別れの挨拶もそこそこに俺達は中国へと不法入国を果たした。



 傲慢ダンジョンは比較的北京の街に近い場所にある。

「今回の騒動は中国全土で起きている。よって、事態の早期収束を図るには戦力を分散させて広範囲に別れてから行うのが良いだろう。まずは北京に全員で向かい、モンスターを殲滅後にダンジョンを特定し、攻略。その後は各都市に別れようと思うが異論はあるか?」

 千尋が指揮を執ってくれているので楽で良い。

 皆、千尋の意見に異論は無い様だ。

「何処に行くかは北京救出後に決めるって事で良いのか?」

「あぁ」

「よっし!じゃあやりますか」

「「「「「おー!」」」」」

 中国解放作戦開始。


 ☆ ☆ ☆


 中国解放作戦の参加メンバーはヒーロースーツを持っている千尋、純、リーダー、番長、助手ちゃんと魔装を持っている俺の6人。

 一応顔出しは出来ないのでこのメンバーになっている。

 6人で北京の街に向かいながら出会ったモンスターを片っ端から討伐しているが、数が多い。

「白、これで何匹目だ?」

「さぁ?50を超えてからは数えてないね!」

「もうすぐ街に着くな……。最優先は人命、モンスターは見掛けたら即殺だ」

 赤と白の甲冑に身を包んだ謎のヒーローがサーチアンドデストロイしながら街に向かっているのを追いかける俺達。

 出てくるモンスターの脅威度は俺達からすれば人撫ですれば終了してしまうような弱い者ばかりだが、レベルも上がっていない一般人では呆気なく殺されてしまう程度には強く、数も多いので出来るだけ街に急ぎたい所。

 道中人の屍を見掛ける度に心がざわつく。

 俺とは無関係の人だとは理解していても、人の死を目の当たりにすればこれも仕方が無い事なのかもしれない。

 街に到着した頃には数えきれない人の死を目撃したが、街はそれ以上だった。

 まさに地獄絵図。

 原型を留めていない者、食い荒らされてぐちゃぐちゃの者、胴から真っ二つにされている者、差異はあれど数時間前までは生きていた人達が無残に骸を晒していた。

 吐き気を催すほどの血の臭いが広がっている。

 本当に生存者が居るのかと疑いたくなる程だ。

 モンスターが我が物顔で血に染まった街を闊歩している。

 本当にここは俺達が以前訪れた街なのかと思わずにはいられない。

 モンスターは討伐すると霧となって消えるが、人は消えずにその場に残るので余計にその凄惨さを助長しているように見えてしまう。

 この光景を俺は忘れる事は無いだろう。

「うぁああああああああ!!!!!!」

 千尋の怒りの咆哮。

 モンスターがこっちに向かってくる。

 虫型、獣型、人型、屍を貪っていた様々なモンスターが雄叫びをあげた千尋に殺到する。

「舞え、剣精!剣の舞!!!」

 レベルが200を超え、新たな能力を開花させた剣精の舞は一瞬で目の前のモンスター共を葬った。

 剣精の得た新たな能力は剣精分裂というシンプルだが強力で、非常に扱いが難しい。

 剣精を複数に分裂させ、手数を増やせるという利点がある代わりに操作性が格段に上がってしまうもので千尋も最初は苦労していた。

 仕事が終わってから毎日遅くまで練習し、日に日に分裂して操作出来る数を増やしてきた千尋。

 血の滲むような努力の果てにある、確かな技術はもはや芸術の域にまで達していた。

 人がスキルを得るには、努力を続けてスキルにまで昇華させるか、SPを使ってG-SHOPで取得するかの二択しかない。

 SPがあるのならG-SHOPで取得した方が楽なのは間違いない、だが千尋は努力だけでスキルに昇華させたのだ。

 並行処理というスキルを。

 並行処理というスキルを得てからの千尋は今まで以上に強くなった。

 タイマン最強キャラの千尋が一対複数でも最強になる程に。



 

















「まぁ、気付いたら取得してただけなんだけどな……並行処理」

「千尋ちゃんはSPを全部剣精の強化に充ててるからね!他のスキルは自分の力でスキルに昇華させるしかないんだよ!」

「純もミズチにSP極振りしてるじゃん」

「まぁね!ミーちゃんは可愛いから仕方ないね!」

「俺の嫁がスキルに極振りしている件」

 俺のアバタースキルと違って千尋や純のスキルには上限がまだきていない。

 剣精は大きさの最大値がまだ伸ばせたり強度や切れ味、速度も限界がきていないし、ミーちゃんはミーちゃんの能力値をまだ伸ばす事が出来るようで限界がきていない。

 対する俺のアバターは取得可能な付随スキルは全て取得しているのでアバター自体の強化はもう出来ない。

 他に取れるスキルも無いから、SPが余って仕方が無い。

 贅沢な悩みではあると思う。

「それにしても怒ってる人が居ると冷静になるって本当だったんだな……一人で走って行ったぞ」

「だね!街のモンスターは千尋ちゃんに任せて、私と武者は街の中で生きてる人達を探して保護しよう!青、黄、黒はダンジョンの捜索と街の外にいる人達の捜索と保護をお願い!」

 明るく元気に指示出ししている純だが、この凄惨な光景を目の当たりにしてかなりショックを受けている筈だ。

 目を離さないようにしておかないとな。




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