怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

しふくの時と言われても10


 第一階層の守護者らしきモンスターを倒し、俺達は階段を使って下へと向かう。

 人が二人並んで昇降出来る程度の幅の螺旋状の階段を罠が無いか確認しながら降りていく。

「着いた……けど、また洞窟か」

 このダンジョンは怠惰ダンジョンとは違って第二階層も岩壁に覆われただけの洞窟のようだ。

「迷路状じゃ無ければ目的地に到達しやすいから楽で良いんじゃないかな?」

「それはそうだが……景色が変わり映えしないというのはなぁ」

「とにかく、先を急ごう。攻略が早いに越したことは無い」

 嫁二人に促され、第一階層同様に罠を確認しながら洞窟の奥へと歩いて行く。

 第一階層よりかは幾分か道幅も広く、多少入り組んだ作りにはなっているが道中出てくるモンスターも然程変わり映えしない。

「ゴブリン系とオーク系がメインのダンジョンみたいだが……多少種類が増えただけで難易度的にはそこまで大差無いな」

「罠も落とし穴、弓矢、毒矢、毒ガス、火の玉……基本的に地面の一部を踏むと発動するタイプの簡単に看破出来る罠しか無いな」

「簡単なのは今の私達にはありがたいっすね!」

「子供騙し……片腹痛い」

「まぁ油断させる事自体が罠という可能性もあるからな……」

 とは言いつつもこうも歯応えが無いとどうしても油断してしまうのは仕方が無い。

 中国ダンジョンの難易度の低さに緊張感が途切れつつも順調に奥へと進む事凡そ1時間。

 第一階層同様に下へと続く階段らしき前には道中で出会うモンスターとは格が違う、赤を基調とした大きな鳥型のモンスターがこちらの様子を窺っていた。

「……流れ的に言えば朱雀って事だろうけど、一応鑑定……こいつも駄目か」

 第一階層の守護者を青龍だとすれば、流れ的に第二階層の守護者は朱雀と見て間違い無いだろう。

 色々なアニメや漫画のファンタジー作品で描かれ続けて来た、中国の四神、四獣あるいは麒麟、黄龍を含めた五神、五獣と呼ばれる存在。

「まぁコンセプトは判明した訳だけど……四神とか言われる割には弱すぎる気がするんだよなぁ」

「鑑定も出来ないなら、考察も後で良いだろう。倒すぞ!」

「今度こそ一番槍は俺に任せてくれよ……っと!」

 千尋と一馬さんが突っ込む前に俺が突っ込んでいく。

 魔装と魔槍を身に着けた俺のサブキャラが暫定朱雀目掛けて一直線に走る。

 暫定朱雀は俺が突っ込んでくるのを見てから宙へと浮くが、この洞窟型のダンジョンでは天井の高度が不足している。

「そんな高さじゃ意味が無いぞ!…………どっせい!」

 暫定朱雀が二本の足で攻撃を仕掛けてくるが、魔槍で軽く弾きながら朱雀の腹部目掛けて渾身の突きを繰り出す。

 魔槍は伸縮可能な槍だ、高度が低いこのダンジョンなら俺が地面に接地していても空中は攻撃範囲だ。

「ピィェエエエエエエ!」

「ふむ……流石は階層守護者、意外とタフだな……しっ!」

 俺の突きによって腹に風穴が空いているにも関わらず、怒りの咆哮を上げていた朱雀の背後から千尋が空中で一閃。

「ぴいぃぃぃ…………」

 何時の間にか朱雀の背後に回り込んでいた千尋が繰り出した斬撃によって真っ二つに切り裂かれた朱雀が宙で空気に溶けるように消えていった。

「周囲確認!」

 ボスを倒して油断している所を攻撃されても嫌なので皆に索敵を促し、俺自身も周囲の確認を行う。

「……敵影無し」

「また出番が無かったっす!」

「青龍より弱かったね!」

「がはは!拓美と千尋が突っ込んで行くと俺が防御に回らざるを得ないので仕方ないとはいえ……これでは期待外れも良い所だな!」

「安全に攻略出来ているのは良い事です」

 第二階層の守護者を倒したことで各々が騒ぎ出したので、今回も下へ下る前に一旦休息を挟んでクールダウンしよう。

「一旦休憩!周囲を警戒しながら次に進む為の準備をするぞ!」

 俺はサブキャラなので消耗するのはのはあくまでも精神的な疲労のみだが、俺以外のメンツは違う。

 なるべく細目に休息を取ろうとは思うが、休む前にダンジョンの階層守護者に出会ってしまうので毎回疲労が溜まっている状態で接敵しているのは少し問題がある。

 ダンジョンの攻略速度に関しては申し分無いと思う。

 第二階層を踏破した段階でダンジョンに侵入開始してから約2時間経過している。

 一階層につき役一時間というタイムは中々にハイペースの筈だ、ここまで戦闘時間は殆ど無く、罠による足止めも無い。

 掛かった時間のほぼ全てが歩いているだけの移動時間だけなのだから早いに決まっている。

 だがしかし少々懸念もある。

 ここまで順調過ぎるというのはあまりにも出来過ぎていると思うのだ。

 いくら俺達が強いとはいえ、こうも簡単に進めているのは少々不気味だ。

「ここから先はもう少し警戒しながら進んだ方が良いのか?」

 独り言を呟きながら今後の攻略について熟考する。

「ちょっと危険はあるかもしれないけど、何か不都合が起きるまではこのままで良いと思うよ!」

「私も純の意見に賛成だ」

 耳聡く俺の呟きに反応してくれる優秀な嫁二人。

「どうかな……こうも簡単だと、罠の可能性が高く無いか?」

「それは無いと思う」

「無いねぇ!」

「どうして?」

 優秀な嫁二人に俺の考えは切り捨てられた、二人には俺が見えてない何かが見えているようだ。

「このダンジョンの主ははほぼ間違いなく、ベルのような高度な知能を有していないからだ」

「第一階層と第二階層の守護者は多分、青龍と朱雀でしょ?この二匹は属性で言えば水と火だと思う。なのにこのダンジョンは今の所洞窟で周囲は岩壁に囲まれているよね?しかも二匹とも飛行能力を有しているにも関わらず、天井は高いとは言えないし高度には限界がある!……ある程度の知能を有した者がダンジョンを作るとしたら階層守護者が有利な地形にしたり、階層守護者に辿り着く前に侵入者が疲弊するような仕掛けを作ったりすると思うし、それが普通の考えだと思う!このダンジョンはそういう知能ある者が作ったと言えるだけの工夫も意図も何も無い。ただただダンジョンを大きくしているに過ぎないと私は感じたね!」

「明らかに侵入者に対する対策が足りていないし階層守護者にしているモンスターの知能が明らかに低い。私なら階層守護者にするならある程度の知能を有した者にするだろう。侵入してダンジョンを攻略しようとするのは知能がある者しか居ないだろうからな」






















 優秀な嫁二人の最もな意見を聞いて納得してしまった。

 一応こういう思考に至らせるという罠の可能性もあるのだが、こんな回りくどい罠を仕掛けるメリットがあまりにも無さそうなので考慮しない事にする。

「って事はここにはベルのような存在は居ないって事か……」

「まぁここまでのダンジョンの様子を見てほぼ間違い無いだろう」

「ベルならどういう風な作りにしそうかを考えると分かりやすいかもね!」

「ベルならか……確かにな」

 このダンジョンにベルが居たとしたら、まず間違いなく第二階層は洞窟型では無いと思う。

 資源を得るにもDPを稼ぐにも侵入者を撃退するにも洞窟型はあまり有効では無いだろう。

 罠にしてもこうも分かりやすい罠なら設置する事は無い。

「……簡単な訳だな」

 海外のダンジョンで、しかも初めての大規模ダンジョンという事で知らず知らずの内に不安になっていたのかも知れない。

 もう少し気楽に行こう。



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