怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

しふくの時と言われても8


 翌朝、日本大使館の職員の方から頂いたのは中国にあるダンジョンに至るまでの地図。

 当初は職員さん方の案内でダンジョンまで向かう予定であったが、道中モンスターが蔓延っている情報を聞いて、こちらから同行を丁重にお断りさせて頂いた。

 冒険者協会組とPCH組は今日の夕方に北京に到着予定らしく、残念ながら顔合わせする事も無くお互いの仕事を全うする事になった。

「ダンジョンは北京から大体北東200km離れた所にあるみたいだな……それにしても良くこんな場所に何度も軍を派遣したよな」

「周辺の住民は避難しているみたいだが、北京に居る人達はそこまで危機感が無いように感じたな……避難する気も無さそうだ」

「思ったよりも北京に近い場所にダンジョンがあるっていうのにね!とりあえず!行きますか!道中モンスターを適当に狩りながらダンジョンへと最短距離で突っ走るよ!」

 純の先導で中国最大のダンジョンまで俺達の足で突っ走る。

 山というか森というか、道なき道をひた走る。

 やはりというか何というか、道中モンスターを見掛ける度に適当に狩ってから進んだが、ダンジョンへ近づけば近づく程に数は増えていった。

「足を止めずに狩れてるから良いけど……もう結構な数のモンスター狩ったよな?」

「そうですね、大体500に満たない程でしょうか……ゴブリンやオークといったモンスターばかりですがこうも数が多いという事はそれだけ規模の大きなダンジョンだという事の証明でもありますからね」

「がはは!俺にも遠距離攻撃の手段があれば手伝いたい所なんだがな……すまんな!」

「まぁ適材適所っすね!今度、投擲術を教えてあげるっす!」

 道中のモンスターはリーダー、純を筆頭に遠距離から仕留めては番長がドロップ品が出た時だけ回収しに行っている。

 ダンジョンまで残り僅かの所まで走ってきたが、かれこれ1時間は経過している。

 モンスターの数はダンジョンに近付くに連れて増える一方だ。

「中国の軍隊はもう撤退してるみたいだな……」

 千尋が派遣される事が決定した時から軍隊は撤退したらしいが、道中激戦の後が度々散見された。

「時間があれば遺品の回収もしてやりたいが……私達の最優先事項はあくまでもダンジョン攻略だ。後続に任せるしか無いというのは少し心苦しいがな……」

 死体は見当たらないが、遺品と呼べるような品も多数あった。

 俺達が回収するのは流石に無理なので、後続である冒険者協会組やPCHの面々に事後処理は任せる方針だ。

「被害状況を目の当たりにすると、如何にダンジョンというものが世界にとって危険かが良く分かるね……」

「被害甚大……犠牲者多数」

「まぁ無茶したこの国の判断が悪かっただけっすから、自業自得といえばそれまでっすけどね」

「……中国にある一つのダンジョンだけでこれか。先が思いやられるな……日本はこうならないように徹底的に邪魔なダンジョンは潰していかないとな」

 ダンジョンとの共存共栄を目指している俺達だが、この惨状を見てしまうとそれがどれだけ困難な道なのかが良く分かる。

 人は未知や危険なものに対して寛容では居られない。

 ましてや実害がこうも出てしまった後では尚更難しいだろう。

 それでも日本という国ならば、共存共栄の道は歩めると思う。

 今までだって日本は物、文化、思想、人、ありとあらゆる良いとされるものを自国に取り入れ、自国で昇華し、魔改造してきた特殊な国だ。

 アメリカが人種のサラダボウルなら日本は良いとこ取りのビュッフェとでも言えるかもしれない。

 そんな日本がダンジョンという新たな可能性を秘めたものを取り入れない訳が無い。

 伝統を守り、規律を重んじ、されど常に新しい事に目を向けることが出来るという国民性があればこそ、ダンジョンという未知のものですら有用性を示す事が出来れば受け入れられると俺は信じているのだ。

「エルフが嫌いな日本人は居ないしな!」

「もうすぐ着くよ!入り口は洞窟だからね!」

 水龍に乗って先導していた純がアナウンスした事で俺達は一層警戒する。

「こういう時のお約束として、入り口には大体門番的な奴が配置されてる筈!」

「門番っすか!それは楽しみっすね!」

「がっははは!そうなりゃ俺の出番だな!ここまでただただ走って来ただけだからな!本番前の肩慣らしをさせて貰おう!」

「見えた!あれだよあれ!軍隊が使ってたっぽいテントやらの残骸があるね!洞窟の入り口は結構大きいね!」

 大きな洞窟の入り口前には色々な残骸が残っており、最近までここに中国の軍隊が居た事が分かる。

 周囲を森に囲まれた崖下に出来た洞窟。

 一見すると何の変哲も無いただの洞穴だが、ここは中国最大のダンジョンの入り口だ、油断は出来ない。

「各自、周辺警戒!敵を確認次第報告!」

 念の為ダンジョンに入る前に周囲の確認を行う。

「ブモォォォォォオオオオオオ!!!」

 警戒している俺達の耳に突如として何かの叫び声が響き渡った。

「密集陣形!純、美帆、助手を囲め!」

 前衛である俺、千尋、一馬さん、番長で後衛とサポートである三人を四方から囲い込む。

「敵!発見!ダンジョンから出て来るぞ!注意しろ!」

 ダンジョンの中から3mを優に超える頭部が牛で首から下が人間のような出で立ちの全裸の不審者が馬鹿デカい斧を持ってこちらに猛スピードで突っ込んできた。

「千尋!」

「剣精!」

 千尋の召喚した馬鹿デカい剣精が牛頭の斧の振り被りを真正面から受け止める。

 金属のぶつかり合う音が周囲に響く中、千尋と一馬さんを除く全員が一旦後退。

「ガハハハハハハ!!!血が滾るな!牛頭!これでも喰らえぃぃぃぃい!!!」

 千尋の剣精と力比べとしていた牛頭の横から一馬さんが上段からの振り落ろしを見舞った。

「ブモォォォォォオオオオオオ……」

 綺麗に縦切りされた牛頭が宙へと消えていった。

「……図体がデカいだけだったか。残念だな」

「お父さん、折角私が足止めしてたのに鑑定する前に倒すのは辞めて!」

 千尋のごもっともな怒り。

「おぉ!すまんすまん!あまりにも強そうだったんでな!思わず斬ってしまったわ!がはははは!」

「まぁ、怪我人も被害も何も無かったから良いんじゃないか?」

「そうですね。鑑定はあくまでも余裕がある時や状況を判断する為に仕方なく行うぐらいで良いと思います」

「次から気を付ければ良いっすよ!」

「まぁまぁ!こういう時はベルペディアに問い合わせすれば大体答えが返ってくる筈だからね!あんまり気にしなくても良いと思うよ!」

「周囲、敵影無し……ふぅ。とりあえずベルに聞いてみるか?」

「その方が良いだろう。今後も同種の敵が出てくる可能性がある以上、手に入れられる情報は多いに越したことは無い……お父さんは次から気を付けてね!」

「すまん……」

 千尋に睨まれ少し落ち込んでいる義理の父の背中を見詰めながらベル大先生に念話を掛ける。

『ベル!』

『はいマスター!どうされました?』

『無事ダンジョンに到着したぞ。それとダンジョンから出てきたモンスターについて聞きたいんだが、牛頭で首から下が人間っぽいけど、体長が3m超えの斧を持った全裸のモンスターはどんな奴だ?鑑定掛けるまえに倒してしまって情報が無いんだ』

 ベルにダンジョンから出てきたモンスターの特徴を伝え、事の顛末を伝えた。























『はいマスター!恐らく、ミノタウロスと呼ばれる半獣半人のモンスターだと思います!基本的に頭は牛なので、知能はそこまで高くは無いですが、膂力とスピードはかなりのものですよ!ゴブリンと比較すると……ゴブリンより20倍は強いんじゃないですかね!集団よりかは個体で動くモンスターで、雄しか居ません。他種族の雌が居れば大体繁殖可能ですね!ゴブリンよりかは繁殖速度は速くないですが、放って置いても増えるので結構便利なモンスターだと思います!魔法を使える知能が無いので基本的に近接武器を有している事が多いです!ミノちゃんは亜種が生まれ辛い、原種優先種なのでゴブリンの集団よりかは危険度は低そうですね!……このぐらいで大丈夫ですか?』

『あぁ、ありがとう!また何かあれば念話するよ!またな!』

『はいマスター!どうかお気をつけを!』

「って感じらしい」

「なるほど……単一の強さはそこそこ高いが、群れる事が無いのであれば脅威度は下がるか……危険度はCかDと言った所でどうだろう?」

「良いと思うよ!」

「では、暫定ではあるがミノタウロスは危険度C~Dで一旦保留とする」

 今後の事を考えて冒険者協会では各モンスターに危険度ランクを付ける事になったようで、その査定を千尋と純が行っている。

「一般人じゃまず勝てない強さだな……」

 ちなみにゴブリンは単体なら危険度は最低ランクのGだ。

 一般人でも頑張れば勝てる程度の危険度しかない。















 

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