怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

しふくの時と言われても4


 俺自身が中国に渡る問題についてはこれで解決した。

 これからはサブキャラを使用する事で怠惰ダンジョンの外へと出る事が可能となった訳だが、問題が無い訳でも無い。

「後は、俺と千尋達の関係をどうするかだな……結婚したことについては言わない方が良いだろうし、俺が素顔を晒したまま本名で活動するのも問題があると思うんだよな……」

「別に言っても良いんじゃない?要は怠惰ダンジョンの存在がバレるのがマズイんであって、千尋ちゃんと拓美君の関係については公表しておいた方が何かと楽だと思うけどね!」

 俺と千尋の関係が世間にバレれば世のマスコミが俺についても色々と調べる可能性が高く、現在怠惰ダンジョンのある俺の土地についても調査される可能性も高くなる。

「それだとここの事を色々と調べられて面倒じゃないか?」

「マスコミが調べるなら千尋ちゃんの家になると思うから、大丈夫だと思うよ?拓美君の本籍も住民登録も千尋ちゃんの実家に変更になったからね!」

「そうだな、私と結婚した時に本籍を移してあるから、現状ここはただの空き家扱いになっている筈だし、電気もガスも水道も全て止めてある」

「マジで?」

「マジだ。本籍変更に関して必要になってくる書類関係は私が出しているので問題無い。だが運転免許証とか国家資格についてはまだだから、手続きしないと失効してしまうから早めにな」

 俺の知らぬうちに俺の情報が嫁によって変更されていた事に多少の戸惑いはあるものの、怠惰ダンジョンと俺の事を考えての事だという事は分かるので頭が良くて気の利く嫁達で本当に良かったと思う。

「って事は色々と手続きしにいかないと駄目なのか……面倒だな」

「拓美君は必要な書類とかを用意してくれれば良いよ!私が代理でやっといてあげるから!」

「ありがとう!マジでありがとう!」

 圧倒的嫁力。

 これが出来る嫁と駄目な旦那の典型的な例なのかもしれない。

 嫁は世界的に有名でお金も権力もあるのに旦那は職無しで家事もやらない、子供も居ないので育児も無い、毎日好き放題に生きている。

「折角外に出れるようになったんだ、自分でやってもらった方が良いだろう。純はまこちゃんを甘やかし過ぎじゃ無いか?」

「そうかな?」

「えぇ……」

「何でもかんでもやってあげてたら一人じゃ何も出来なくなるぞ」

「それでも良いかなぁって私は思うけどね。煩わしい事とか、面倒な事は誰か他に出来る人が居ればその人にやって貰うのが一番楽だし、組織のトップの者はそれで良いんじゃない?」

「そうなったら誰も居なくなった時に困るのはまこちゃん自身だ」


「この先拓美君の周りに誰も居なくなるなんて事は無いし、そんな事を考えるだけ無駄だと思う。それなら最初から誰かに任せる事を徹底していた方が後々、拓美君の下に着いた人達も動きやすくなるし効率が良いと思う。組織のトップはそういう風にやった方が皆の為にもなるよ」

 千尋の言う事ももっともだと思う一方で、純の言っている事も何も間違っていない。

 二人の意見を簡単に纏めるのならば。

 個人の能力をきちんと伸ばしたいのが千尋で。

 組織とか全体で効率よく運営しようとしているのが純だ。

 個人主義か全体主義かみたいな不毛な論争だと思う。

 どちらにもメリットとデメリットがあって、どちらを優先するかの問題でしかない。

 俺的には純の意見に賛成だが、ここで俺が口を挟むと話が拗れてしまう気がするが何も言わないのもバツが悪い。

「二人の言いたい事は良く分かった。二人とも間違った事を言っている訳でも無いし、どちらが正しいとも言えないと思う。なので個人がやりたいようにやれば良いと思います!」

「それはそうだが……」

「賛成!」

 千尋は未だ納得がいっていない様子だ。

 純は即答で賛成してくれたので俺は千尋の説得に掛かる。

「ぶっちゃけさ……こんな事話してもお互いの意見が簡単に変わる訳でも無いし、変わったとしても納得はしないと思う。だから個人でやりたいようにやって、それで何か不都合が起きるようなら、お互いが一度相手の意見を尊重して相手の意見を飲み込んで実践してから、再度話し合う方が建設的だと思うし効率が良いと思うんだけど、それじゃ駄目かな?」

「それもそうだな……少し大人気なかった。すまない」

 千尋は基本的に自分の意見をしっかりと持っている。

 聞く耳も持っているし、何かあればきちんと意見を言える。

 これはとても凄い事だと思う。

「じゃあそういう事で。純も千尋もありがとな。俺の事でここまで議論してくれて」

「これからも何かあれば話し会いしようね!」

「あぁ」

 上手い事まとめた風だが、そもそも俺がきちんとしていれば何も問題は無かった事なので俺だけが何とも言えない気分になっているのは間違いない。

 二人が話し会っている事が子供の教育方針について話し合っている夫婦にしか思えなかったので余計に俺は恥ずかしかった。

「……もっとちゃんとした大人になりたいなぁ」

 年齢を重ねただけでは大人とは言えないなと改めて考えさせられた。

「それで結局俺はどういう立ち位置で居れば良いんだ?」

「千尋ちゃんのお婿さん!」

「佐々木家の婿殿だな」

「なるほどね……俺って婿入りした形なの?」

「まぁそうなるな」

「その方が良いかなって!児玉家は美奈ちゃんが居れば安心だし!」

 いつの間にやら婿殿になっていた。

「公表は?」

「しても問題無いようにはしてあるから、まこちゃんに任せるよ」

「私は公表した方が良いと思う!大々的に言う必要は無いけど、聞かれたら答えるぐらいで丁度良いんじゃないかな?」

「あんまり世間に顔出したく無いなぁ……」

 今や世界的なスターである千尋の旦那だと知られれば目立つのは間違いない。

 俺の事がバレれば妹の美奈にも迷惑が掛かる可能性も高いので、中々踏ん切りがつかない。

「じゃあ顔と名前は伏せておいて、何か目立つ格好とあだ名でも考える?その方がインパクトあると思うんだよね!」

「ふむ……それは面白そうだな!ヒーローっぽい衣装をベルに頼んでみるか?」

 嫁二人は何故か乗り気になっているが、俺はちっとも乗り気にはなれない。

「そうなったら千尋が色々言われるんじゃないか?」

「別に構わん!どうせ世界中でダンジョンに挑んだ頭のオカシイ女だと思われてるだろうから今更だ。大体世間にどう思われようが私には良き理解者も家族も居るからな、何も恐れるものは無い」

「そうだそうだ!だから拓美君は千尋ちゃんのお婿さんで、ちょっと頭のイカれたコスプレヒーロー野郎になっちゃいなよ!」

「えぇ……まぁ良いか。俺だってバレなければ問題無い訳だしな」

 俺だとバレなければ美奈に迷惑が掛かる事もあるまい。

 最悪バレて美奈に迷惑が掛かった時は美奈も巻き込んで実家に帰ってきてもらおう。

「結論!拓美君は千尋ちゃんのお婿さんで、コスプレヒーロー野郎!これで世間の注目度も爆上がり間違い無し!早速どんなコスプレにするか決めよう!」























 コスプレヒーロー野郎に俺はなる。

「何かなりたいキャラとか居る?」

「出来れば槍を使ってるキャラが良いかな……実際の武器が槍だし」

「槍か……元々顔を隠してるキャラにするか、キャラコスして適当に顔を隠すのか、どっちが良いのかな」

「どっちでも良いんじゃないか?出来れば恰好良いキャラにしてくれると嫁の私的には嬉しいがな」

 中国出発前日に俺のコスプレについて夕方まで話し会いが続いた。







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