怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

夢を追うもの笑うもの24


 いつもよりも寂しい朝。

 少し前までは自分しか住んでいなかった我が家だったが、世界が変わってからはとても賑やかになっていた。

 そんな我が家だが、最愛の人が二人居ないというだけでこうも寂しく感じてしまうのは何故だろうか。

 いつものように英美里が作ってくれたご飯を食べる時も隣に誰も座っていない事にとても違和感を感じてしまう。

 そう感じる程に二人が我が家に居る事が日常になっていたのだと、改めて実感すると共に感謝の気持ちが溢れてくる。

 正面には相変わらず爆食をしているベルと、ベルの世話焼きを甲斐甲斐しく行っている英美里。

「ベル様、ご飯のおかわりをお持ちしました!」

「ありがとう!英美里!」

 一人で暮らしていた時には感じなかった寂しさとがとても懐かしく思える。

「ごちそうさまでした。今日も美味しかったよ英美里!いつもありがとう!」

「御粗末様です!」

 いつものならご飯を食べ終えて英美里が入れてくれるコーヒーを飲みながらミーティングを行うのだが、今日は千尋と純が居ないのでベルがご飯を食べ終わってから開始しようよ思う。

 偶にはゆっくりしても良いだろう。

「コーヒーをお持ちしました」

「ありがとう」

 英美里からコーヒーを受け取り、食事中のベルを眺める。

 ベル曰く、ベルの肉体を維持するには食事は普通の人と同じぐらいで十分らしいが食べれば食べた分だけエネルギーを蓄える事が出来るので日頃からエネルギーを貯蓄する為に沢山の食事を摂っているそうだ。

 毎日幸せそうに何かを食べているベルを見ていると、傍目にはただの食いしん坊にしか見えないが一応はエネルギーの貯蓄が食事の本分らしい。

「PCH所属の加護持ちって何人居るんだろ……」

 ふとした疑問を呟いた。

「PCHには馬場含め6人の加護持ちが所属していますよ」

 俺の疑問に英美里が答えてくれた。

「6人か……思ってたよりも少ないな」

「募集しても加護持ちの人は警戒して中々表には出辛い世の中ですから、仕方が無い事ではあると思います」

「まぁ確かに……でも馬場ぐらいだよな、顔も加護の種類も世界中に晒してるのって」

「そうですね……千尋と純も顔は知れ渡っていますが、加護の詳細に関しては伏せたままですから」

 現状世界的に見ても加護持ちは貴重な存在だ。

 今はまだ存在を明らかにしていない加護持ちもダンジョンを攻略した恩恵によって力を得られるという情報を知ったので、今後はPCHにももっと加護持ちの人が増えると予想している。

 なので今は焦らず戦力の確保と強化を重点的にやる必要がある。

「まぁ、今後加護持ちも沢山増えるから問題は無い。後は冒険者協会の新人が何処まで加護持ちに食らいついていけるかが心配だな……」

「加護は無くともレベルアップの恩恵があるのである程度は食らいついていけると思いますが……結局は本人の素質と努力次第ですので何とも言えませんね」

「だよなぁ……だから遠藤には無理だと思うんだよ、ダンジョン攻略は」

「ですが、純が言うには素質が一番高いのは遠藤日向らしいですよ?」

「らしいな。俺には俄かに信じがたいけど……頭があんまり良くないからなアイツ」

 カフェバイト時代は何度アイツの尻拭いをしてきた事か。

「ご主人様は遠藤日向の事が心配なのですね」

「そりゃまぁ、後輩だし一応はな……」

 身近な人間が命の危険があるダンジョンの攻略に挑むのだ、心配するのは当たり前だろう。

「ベル様、おかわりをお持ちしましょうか?」

「今日はもう良いかな、ありがとう英美里!ごちそうさまでした!」

 今日はいつもよりもおかわりの回数が少ない。

「マスター!今日の予定は?」

 ベルはご飯を食べ終えるとすぐさまミーティングを開始した

「予定は特に無いけど……気の練習ぐらいかな。何か他にやってほしい事とかあればやるけど」

「現状マスターの手を煩わせる事は何も無いので、大丈夫ですよ!」

「そうか。ベルと英美里の予定は?」

「私は、怠惰メンバーのレベリングのお手伝いと自分のレベリングです」

「マスターの気の練習に付き合う以外は特に無しです!」

「りょーかい!じゃあ朝練行きますか!」

「「はい!」」


 ☆ ☆ ☆


 そろそろ夕飯の時間だ。

 今日も今日とて気の練習しかしていない。

 内気功に関してはもう少しで実戦レベルに達するかどうかという所まではきていると思う。

 外気功に関してはまだ何も進展は無い。

「確実に成長はしている……焦る事は何も無い」




 アバターの汚れをシャワーで流して部屋へと戻る。

 食事の為に居間へ向かうと英美里とベルが俺の事を待ってくれていた。

「マスター!今日は唐揚げですよ!」

「ご飯、持って参りますね」

「ありがとう!」



 食事の間は特に会話も無く、今はベルの食事を眺めながらコーヒーを楽しんでいる。

「今日は何のアニメ見るんだ?」

「今日は先日ご主人様がオススメしてくれた、クリプトグラフィ・ギアスが見たいです!」

 英美里がアニメのリクエストを出してくれた、クリプトグラフィ・ギアスとは通称ギアスと呼ばれているアニメで主人公が人を絶対服従させる事が出来るという特殊な能力を与えられ、その能力を使って復讐と妹の未来の為に戦うロボットアニメだ。

「ギアスか……ありだな。ベルは何が見たい?」

「はいマスター!私は脳味噌を空っぽにして見れる感じのが良いです!」

 ベルのリクエストは脳味噌を空っぽにして見れるアニメ、要はギャグ要素の強いアニメが見たいといいう事だろう。

「うーん……何か適当に探すか。じゃあ俺は先に部屋に行ってるから、ゆっくりご飯食べてから来いよ」

 二人に言いながら、俺はマグカップを台所の流しに置いてから部屋へと戻った。


「頭空っぽか……どうせなら俺もまだ見て無いアニメが良いな」

 そういえば主題歌は良く聞くがまだ見ていないアニメがあったなと、動画配信サービスでアニメがあるか検索する。

「お!あるな!週刊少女尾崎君!ベルのリクエストはこれにしよう!」

 後は英美里のリクエストしたギアスのDVDの一巻を棚から出して準備は完了だ。

「マスター!アニメ見ましょう!」

「お邪魔します」

「おう!まずはギアスから見ようか!」


 ☆ ☆ ☆


 ベルと英美里のリクエストしてくれたアニメを3話ずつ視聴して本日のアニメ鑑賞会は終了した。

 ベルはルゼの所へ行き、英美里は再びレベリングへと向かった。

 俺は部屋で千尋と純からの報告を待っている。

 念話が来るまでの間に、ネットを覗いて軽く情報収集を行う。

「ふーん……中国は千尋に影響されてまた懲りずにダンジョン攻略に挑むのか……成功すると良いけど、育ちまくったダンジョンの攻略は容易じゃ無いだろうな」

 中国は以前にダンジョン攻略に失敗している。

 その際の人的被害はかなりのものであったので、ダンジョンはかなり育っている筈だ。

「にしても同じダンジョンに挑まない方が賢明だろうに……まぁ、まだ情報が無いから仕方ないのか」

 ダンジョンは成長する。

 それも外部のものを取り入れる事でより早く、より強く。

「ダンジョンの厄介な所この成長性だよな……っとアメリカさんは日本のダンジョン攻略者にアメリカへの派遣を依頼?千尋がアメリカに呼ばれてんのか!派遣依頼額は……1億ドル?……日本円で約100億!凄いな!流石はアメリカって感じだな……ただまぁ、まだ国外に力と時間を割く余裕は無いかな……」

 アメリカは流石の対応といった所だ、アメリカでも数多くの行方不明者が出ている中日本と同様に発見されたダンジョンは政府により監視され侵入者が出ないように封鎖措置が講じられている。

 封鎖したうえで、世界初のダンジョン攻略者を自国へと招き入れて現状を打破するつもりなのだろう。

「残念ながら千尋はまだそっちには行けないな……どうにか自国の英雄さんの登場を待っててくれ」

 ダンジョンを攻略するうえで鉄則は少数精鋭だ。

 ダンジョンの性質上、侵入者の数が多ければ多い程に早く強く成長してしまうので極力少数精鋭でダンジョンが成長する前に攻略する事が望ましい。

「……国連が日本に対して海外派遣を要請だと?無能の脳足りん共が調子に乗り過ぎてんな……安相さんはどうするんだろう」

























 国連にしてみれば所詮日本は常任理事国でも無いし、最近では日本の事を便利なATM程度にしか思っていないので日本に対してこんなにも強気な姿勢を見せているのがバレバレだ。

「安相さんの返答次第では……九州を独立させるレベルで暴れてやるからな」

 九州独立は大袈裟かもしれないが、最悪俺を含めた怠惰ダンジョンの全員で世界と戦う覚悟はある。

「頼むから選択をミスらないでくれよ……安相さん」



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