怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

夢を追うもの笑うもの20

 やるべき事も全て消化してアニメ鑑賞という日課もサボらずに終えて、就寝前の風呂から出た俺は新しい家族の元へと移動する事にした。

 まずは部屋に戻ってから、慣れた手つきでアイテムボックスからアバターを取り出してアバター操作を開始する。

「そういえばベルに名前の由来聞いて無かったな……明日にでも聞いてみようかな」

 怠惰ダンジョン関連では初めてベルが名付けたルゼという意思を持ったダンジョンコア。

 今回はベルのスキルの実験的な使用ではあったが、無事に意思を持たせる事が出来たので喜ばしい限りだ。

「ベルの妹……で良いよな」

 ベルのスキルによって生み出だされた存在なので実際の所は子供というニュアンスの方が近いが、子供の枠は英美里や美帆といった者達を指す言葉になっているので、ルゼに関しては今後もベルの妹として扱う方針だ。

「ベルによって生み出された存在か……」

 ベルに対する不安や不信感は無い、俺達はベルに全幅の信頼を置いているから。

 けれど外部の者からすればベルは危険因子であるのは間違いない事も分かっている、人類共通の敵であるダンジョンのコアであり他のダンジョンコアに意思を持たせる事が可能な存在がベルだからだ。

 ベルの事を知らない者からすればベルの能力は脅威でしかない、只でさえ人類はダンジョンという新たな未知の存在について知識が足りず、攻略すらままならないのだからベルの能力が露呈してしまえばベルは世界中から敵認定される可能性が高い。

「まぁでもバレなきゃ良いだけか!」

 楽観的に考えるべきでは無いのは分かっているが、警戒しすぎて何も出来ないのでは話にならない。

 ちーちゃん最強計画も始まったばかりで人手が予想以上に足りないので、俺やベルが計画の進行を遅らせない為にも出来る事はやるべきだと思う。

 それがリスクのある事だとしてもだ。

「ルゼもベルみたいに肉体を得られるんだろうか……」

 アバターで地下広場へ向かうと英美里がスライムレベリングを行っていた、相変わらず我が子ながら真面目で良い娘だなと感心しつつも邪魔しては悪いと軽く手を振るだけに留めて、新しく作られたダンジョン間転移門が設置されている部屋へと入る。

「英美里っていつ寝てるんだろう……流石に働きすぎだよな。近いうちに英美里も外出が出来るようにして、休日をあげたいよな……」

 社畜よりも働いている英美里の心配をしつつ、ベルの趣味が全面に押し出された襖の前まで来た。

「なぜ虎の絵にしたんだろうか……」

 門ではなく襖という事はもう気にしないとして、新たな疑問を発掘しながらも転移門へと触れた。

「行き先が<暴食ダンジョン>になってる……まぁとりあえず転移するか」

 新しい家族の住むダンジョンの名称が<暴食ダンジョン>になっている事に初めて気付き多少驚きはしたが、行き先を決定して転移門を起動した。

 気付けば暴食ダンジョンのコアルームに併設された部屋へと到着しており、改めて転移門の凄さに恐怖する。

「こんなもんが世界中に設置された日には、人類は滅びるな……戦争で」

 便利なものはそれだけで争いや諍いの種となる。

「ルゼは何してんのかな……」

 ルゼの居るコアルームへ入ると、ベルが楽しそうにルゼに話しかけていた。

「それでね!マスターは本当に……あつ!マスター!マスターもルゼに会いに来たんですね!」

 ベルが俺に気付いて駆け寄ってくる。

 幸せそうなベルの顔を見ると俺も幸せになってくるのだから不思議だ。

「いらっしゃいませ、マスター様」

「おぅ!邪魔するぞ!」

 心なしか生まれたばかりの時よりもルゼの意志がはっきりとしている気がした。

「マスターもルゼとお話してあげてください!会話をしていけばもっともっとコアとして成長する事が出来るので!」

「へぇ!それは良いな。ルゼ、調子はどうだ?明後日からここに知らない人が沢山来る事になってるけど、大丈夫そうか?不安とか心配な事があれば相談に乗るからな、ベルが」

 ベルの言葉を信じるのであれば会話をすればルゼが成長するらしいのでここぞとばかりに話しかける。

「調子は分かりません。ベル姉様がこの部屋に入らないようにしてくれるとの事なので大丈夫です、不安もありません。ベル姉様に言われて、いつでも相談出来るように念話を取得しました」

「そうか!ちなみに暴食ダンジョンってのはベルが付けた名称なのか?」

「……はい、ベル姉様に言われたので」

 ベルは俺達の会話を邪魔しないように少しだけ、黙っておく事にしたようだ。

「ルゼの名前の由来とか、意味はベルから聞いたか?」

「はい。由来はベルゼブブという暴食を司る悪魔から、意味は二文字で可愛いくて、ベル姉様の名前文字を一字つけたかったかららしいです」

 まぁ俺が言うのもなんだが、意味に関してはあまり考えて無かったみたいだ。

「今後DPに余裕が出来たら何をしたい?」

 ありきたりな質問ではあるが、この質問に明確な答えを出せるのならばルゼ自身の意志が確実に存在しているという証明にもなるだろう。

「まずはベル姉様の様に我が子を生成したいです。それからはDPの安定的な供給が可能なシステムの構築をしてから考えようと思っています」

 意外としっかりとしたDPの運用方法を持っている様で安心した。

 まぁベルに入れ知恵されているのは間違い無いが、ルゼにとってはベルのアドバイスは非常に有難いものなのだろう。

「子供を生成したら名前は与えるのか?」

「第一子に関しては名付けするつもりです。ですが第二子以降に関しては階層を増やさねばならないのでどうするかは未定です」

 ベルは元々感情表現が豊かではあったが肉体を得てから更に豊かに、そして何処となく幼くなっていった。

 ルゼも今後肉体を得る事が出来たら感情表現が豊かになるのだろうか。

「名前は自分で考えてつけるのか?」

「はい。ベル姉様に名付けの重要性と責任について聞いてから、そうしたいと思うようになりました」

「そっか!ベルはちゃんとお姉ちゃんしてるんだな……これからもベルと仲良くしてくれよな!じゃあ俺はそろそろ帰って寝るから!おやすみ。ベル、ルゼ!」

「おやすみなさいマスター様」

「マスター!おやすみ!」

「また明日な!」























 部屋に戻って布団に入り、目を閉じる。

 ルゼと話して思っていた事を考えてしまう。

「ベルの方が妹っぽいよな……」

 見た目は妖艶で大人の色気たっぷりなベルだが、口を開くと途端に幼くなるので、どうしてもルゼよりも妹感が出てしまっていた。


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