怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

夢を追うもの笑うもの15


 ダンジョンや加護を研究していると言えば聞こえは良いが、やっている事は人体実験と何ら変わりない屑共が存在している事が発覚した。

 この問題はどうにかしないと後々禍根や遺恨を残す。

 屑共にとっては多少の犠牲かもしれないが、そもそもその犠牲を少しでも減らそうとしている俺達とは確実に相容れない。

 そんなに研究したいのなら、ダンジョンで安全に活動出来るだけの戦力を整えてからじゃないと犠牲者は増え続ける事は明らかだ。そんな事は誰だって分かっている筈、にも関わらず犠牲を無視して研究している屑共が居る事がとても気持ちが悪い。

「私もね、技術の進歩や発展には多少の犠牲はあると思ってる。けどその犠牲を何も知らない若者に押し付けている事が許せない……安全な研究をしてて意図せずして起こる犠牲と犠牲が出る事が分かった上で行う研究には大きな違いがある。犠牲が出るかもしれないのならば、その覚悟がある人だけでやるべきであって、何も知らない人を騙して利用するのは間違ってる!」

 人にはそれぞれ倫理観や価値観と言うような物事を考える上で大事な要素がある。人それぞれ捉え方や感じ方というのは違うが、普通の人であれば犠牲が出ると分かっている上で何も知らない人を騙して利用するなんて事は良くない事だと分かっているし、実行する事はとても難しい。

「じゃあどうする?」

 許せない、間違ってる、と純は言った。

 何をするべきなのか、何がしたいのか。

 馬鹿な俺では屑共の蛮行を止める事は出来ないかもしれないが、純は違う。

「蛮行を止める!」

 きっと家に帰って来るまでの間に色々と考えていたと思う。

「どうすれば良い?」

 犠牲者の人達も出来る事なら何かしらのフォローをしたい。

「初めに考える事は何故、こんな奴らが研究出来ているのか。研究に必要なのは施設、資金、地位、これらの環境が揃っているから研究というのは行える。まずはそれらを破壊する」

 冒険者協会に入って貰えれば後は俺達で多少のフォローは出来るだろう。

「どうやって?」

 PCHが切り捨てるというのなら俺達が拾い上げてやろう。

「施設を壊すのは無理。資金源を断つ事は難しい。地位を剥奪する権限がこちらには無い……でも情報は私達の方が多く持ってる。それで、どうやって屑共を止めるかだけど……無理!私達じゃ止めるのは不可能だね!」

 人は宝だ、人が居なければ何も出来ない。

「誰なら出来る?」

 例え研究施設があっても、資金が潤沢であろうと、地位が高くても、人が居なければ研究は出来ない。

「誰にでも出来るよ!今はSNSという便利なものがあるからね!情報の拡散はとても簡単!情報を拡散すればメディアは食いつくか、権力に怯えて無視するか……でもね!今はもうメディアになんて頼らなくても良いんだよ!各々が自分で情報を発信受信出来るんだから!つまり!SNSで情報をばら撒きけば事実を皆が共有出来る!信じる人も信じない人も居るだろうけど、それでも研究自体はやり辛く出来る!世の中の目が集まれば今までの様には出来ないからね!後は安相さんのお仕事だね!」

「でもそのやり方じゃPCH自体も潰れないか?」

「そうだよ!」

「それは困る」

「じゃあプランBだね!私とちーちゃんがPCHに入り込んで戦力強化!シンプルイズベスト!」

「却下」

「じゃあ仕方ない!本命のプランC!PCHの加護持ちを育成して犠牲者を減らして時間を稼ぐ。その間に安相さんに根回しして味方を増やしてもらって、研究施設に政治的に圧力を掛けてもらう!これで万事解決!PCHの戦力も上がるし、研究も進む、そして非道な研究も終わる!完璧!」

 たぶん元々ここが話の終着点だったのだろう。

「戦力の強化ってどうやってやるんだ?訓練如きじゃそんなに早くは強くならないぞ?」

「勿論レベリングだよ!」

 戦力強化をするにはレベリングするのが一番手っ取り早いのは分かるが、それを行うには怠惰ダンジョンにあるランダムスライムスポナーを使うか、ダンジョンで地道にモンスターを倒し続けるしかない。

「レベリングはどこでやるんだ?流石に怠惰ダンジョンには入れられないぞ」

 ここは俺達の城だ。
 部外者を簡単には入れられない。

「大丈夫!ベルに頼んでスポナーを攻略したダンジョンに作ってもらうから!」

「ベルを外に連れ出すって事か?」

「うん!誰にもバレないようにこっそりと!」

 ベルが外の世界に出る。

 ベルならば何も問題なく外の世界でも活動出来るだろうが、バレた時のリスクは高い。

 でもいつかはこういう日が来る事を願ってはいた。

 ベルや英美里達が怠惰ダンジョンの外に出て、俺達の生きてきた世界を直接見て欲しかった。

『ベル!怠惰ダンジョンの外に出てみたいか?』

『はいマスター!私はダンジョンの外へ出たいです!外の世界でもっともっと美味しい物を食べたいです!』

『そっか!』
























「じゃあベルにはスポナーの設置をしてもらうとして、何処のダンジョンに作るんだ?」

「湯布院!近くには温泉宿もあるし、PCHの合宿先には丁度良いでしょ!私も温泉入りたいし!完璧!」

「湯布院か……良いな!」

 温泉に入りたいという理由で場所は湯布院に決定した。




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