怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

夢を追うもの笑うもの11


 午後からはPCHからの連絡もあったので千尋と純はPCHの関係者と会って話をする為に出かけていった。

 本来の予定では冒険者協会入会の面接が入っていたのだが、千尋も純もPCHとの話し合いの為に東京に飛んだので面接は代役として一馬さんと雅さんにお願いしている。

 午後からは俺の自由時間だ。
 高みを目指すと宣言したからには俺も怠けてばかりは居られない。出来る事なら番長に手伝って貰って気の使い方についてマスターしていきたい所なのだが、如何せん番長含め鬼人娘衆は忙しい。

「番長にこれ以上負担は掛けたくないしなぁ……ベルって気の操作とか出来るのかな?……ダメ元で聞いてみるか」

 我らが怠惰ダンジョン最強なら気の使い方ぐらい分かるだろうという事で念話でベルに聞いてみる事にした。


『ベルー!今、良いか?』

『はいマスター!大丈夫ですよ!もしかして、ちーちゃんも純にゃんも最近忙しくて寂しくなっちゃいましたか?』

 寂しく無いと言えば嘘になるだろうが、それをわざわざベルに伝える程俺は愚かでは無い。

『ベルって、気の使い方とかって分かる?分かるなら色々教えて貰いたいんだけど……番長の代わりに』

 言わなくても良い事は多々あるが、敢えて言う事で相手に対してマウントを取ったり、嫌がらせをする事は出来る。

『もちろん使えますよ!では、不肖ベルがマスターに気の何たるかを手取り足取りねっとりと教えて差し上げましょう!練習場所は地下広場で、ついでにスライムレベリングも並行して行いますね!』

 嫌味というのは相手に伝わらなければ何の効果も無い。

『りょーかい。直ぐに地下広場に向かうよ』

『お待ちしております、マスター!』

 ベルの嬉しそうな声を聞いて、嫌味を言った事を若干後悔しながらもアバターで地下広場へと向かう。

「まだ負けられないよな……」

 一馬さんという剣の天才に対して対抗意識を持っている事に自分自身で驚きながらも、この感情を原動力にしてやろうと意気込みながら転移門に触れた。



 コアルームに飛ぶとベルの最近の趣味が良く分かる。
 最近はアニメブームなのだろう、アニメの好きなシーンを再現したジオラマが幾つか並べられている。

「全部自作って言ってたけど、本当に寝てないんだろうなぁ……ベルの体が一番の謎だよな」

『私の肉体は超絶ハイスペックですから!』

「にしても少しは寝たりした方が良いんじゃないか?一応睡眠も出来るんだろ?」

『問題無いですよマスター!睡眠してしまうと時間が勿体ないので!それとDPに余裕が出来たら第二の体を作成したいです!そうすれば今よりももっと多くの事が出来ますので!』

「第二の体は辞めとけ……只でさえ本体と体で別々に動いてるんだし、これ以上ベルの負担を増やすのは良くないぞ。何か問題が起きてからじゃ遅いんだし」

『ハイマスター』

「……まぁ良いや。とりあえず、気の練習頼むな」

 コアルームでベル本体との会話を中断して、地下広場へと向かう。

「あの感じだと、いつか第二の体を作るつもりだろうな……」


 ベルとの付き合いもそれなりに長くなり、ベルがどんなつもりで居るのかぐらいは喋り方で何となくは察する事が出来る。




 コアルームを出るとスライムスポナーの傍らにはベルが居る。もう一つのスポナーでは英美里が既にスライムレベリングを行っていた。

「お待たせ。と言ってもさっきぶりか」

「はいマスター!早速、気の使い方を教えたいと思います!気を感じる事までは出来るのですよね?」

「あぁ、番長にそこまでは教えて貰ってるよ」

 気を感じる所までは番長に教えて貰っている。

「では、次のステップに参りましょう!次は気を全身に纏う、もしくは流す、これを実践していきましょうか!私の体に触れながら私の気の動きに注力していてください!」

「りょーかい」

 ベルが差し出してきた手を握手するように握りながら、ベルの気の動きに集中する。
 ベルの気は俺よりも遥かに多く感じやすい、これなら気初心者の俺でも気の動きを簡単に捉えられるだろう。


「では!行きます!」

 ベルと繋いだ手から暖かい何かを感じながら、その暖かい気の動きを捉える。
 ベルの体の中を暖かい気が体中を循環しているのが分かる、血液のように体の細部まで気が流れている。

「これが気の初歩的な使い方ですね!気を体内で循環させる事で身体能力の上昇効果と、肉体強度の上昇効果が得られます!これを体内気功と呼びます!」

 偉そうに胸を反らして講釈を垂れるベル。
 豊かに実った果実に目を奪われながらも言葉を返す。

「ありがとう。まずはこの、体内気功の練習からすれば良いって事だな!」

「はいマスター!体内気功が出来たら、次は体の外側に気を纏わせる体外気功を教えますね!」

「りょーかい!」

 ベルのやっていた通りに気を体内で循環させようとするが、そもそも気の動かし方が分からなかった。

「……気ってどうやって動かすんだ?」

「魔力と一緒ですよ!魔力が頭で動かす感じで、気は気合で動かす感じですね!魔力はぐぬぬぬぬぬで、気はうぉぉぉって感じです!」


 独特の表現方法で魔力と気の動かし方の違いを教えて貰えたので言われた通りに練習してみる。

「とりあえずやってみるか……うぉぉぉぉぉぉぉ!」

 全身の血管が破れる勢いで気合を入れて、俺の気に動けと命じる。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!」

 しかし一向に気は動かない。
 これで本当にあっているのだろうかと疑問に思いながらも言われた通りに実践する。





























 アバターだから出来る無茶な力の込め方で気を操作しようと試みてから結構な時間が経ち、少し気が緩んできて力の込め方が弱くなりつつあった。
 集中力は長くは続かない。

「…………駄目だな」

 集中力も完全に無くなり、気の操作も諦めてしまった。

「反復練習あるのみです!頑張りましょう!マスター!」

「だな!」

 ベルの慰めを聞きながら再び練習を再開した。



「怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く