怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

夢を追うもの笑うもの7

 インテリ悪魔とドワーフである二人の歓迎会はベルの助言もあり、開催は行われず、今日はいつも通りに英美里が用意してくれた晩御飯を食べる事になった。
 博士と助手がいち早く慣れてくれる事を祈るばかりだ。

 博士と助手の二人のお世話は鬼人娘衆が担ってくれるそうで、ますます忙しくなった鬼人娘衆には頭が上がらない。今後鬼人に関しては増員する方針でベルとも話し合った、流石に今の人数では仕事が多すぎる。
 畜産だけでも牛、豚、鶏、がいる上に飼育数も順調に増やしているのでオーバーワークになるのも時間の問題なのは誰が見ても明らかだ。

 博士と助手とリーダーの三人に確認して用意したという研究施設はもう稼働しているようで、早速三人で科学と魔術の融合を研究しているらしい。研究成果がでるには時間が必要だというのは分かっているのだが、どうにもソワソワしてしまう。やはりロマンを感じているからだろうか。

 エルフルズの面々も順調にレベルが上がっているのでリーダーが農作業から抜けても問題ないぐらいには育っている。
 今後の方針としてはDPに余裕が出来れば人員の増加、新階層の増築、ダンジョンの株分け、を重点的に行う予定だ。

 今後は個人の戦力増強よりも怠惰ダンジョンの発展がメインになってくる。
 個としての戦力は上げていくが、今までのように怠惰ダンジョン全体で優先的に行うのでは無く、あくまでも個人の頑張りによる部分が大半を占める事になるので俺も何らかの形で努力していかなければ千尋と純に実力を離される一方になる。なのでベルの指導の元、精進していくつもりではある。



 ☆ ☆ ☆



 晩御飯後のコーヒーブレイクタイムで千尋と純の今日の成果を報告してもらおうと二人に話題を振る。

「千尋はDMの子に会えたのか?」

「あぁ、何とかな。だが、親御さんに泣かれてしまって参ったよ……まぁ部屋から出てこなくなった息子が部屋から出てきたと思ったら、冒険者とかいう訳の分からん命の危険が伴う仕事に就きたいと言えばどんな親でも泣いてしまうのかもしれないが……流石の私も彼の親に対して掛ける言葉を持ち合わせてはいないからな。それに、私が軽々しく何かを言うのも違うしな……結局今日の所は彼自身が親御さんを説得出来たらまた連絡をくれと言って帰ってきたよ」

 親にとって子共というのは幾つになっても子供だし、可愛いものだろう。我が子が命の危険がある仕事に就きたいと言えば止めるのも当たり前で、それは普通の事だろう。でも彼にとって今回の決断は人生においての分岐点になるであろうとも思える。彼の家庭事情も過去に何があったのかも知らないし、他人である俺からすればどうでも良い事ではあるが、変わりたいと思って行動した彼の力に成れるのであれば喜んで力を貸したいと思う。

「まぁ、その子次第ではあるか……親を説得するにしても、しないにしても。ちなみに彼の歳は?」

「18だ。高校はイジメにあって去年中退したらしい。中々将来有望なイケメンだったぞ。それにまだ若い、私としては何とか冒険者協会に引き入れたい!」

「へぇ……じゃあ親御さんの説得に協力でもしてあげれば良いんじゃないか?」

 以前の俺ならイケメンと聞いただけで敵視していたかもしれないが、今は何とも思わない。人間余裕が出来るとこうも変わるのかと自分自身で驚いている。

「協力はしない、ご両親の説得は彼が一人でやるべきだ。他人が踏み入って良い領域では無いからな」

「じゃあDMの子は一旦連絡待ちか……冒険者協会に入ってくれると良いな」
「あぁ」

 人は一人では生きられない。
 詭弁でもあり、真実でもある。
 暮らしていくだけなら一人でも暮らして行こうと思えば出来るだろうが、それは人間社会では無い場所での話だ。
 人間社会で生きていくには人との関りが必ず生まれる。国に住むにもお金が要る、お金を得るには働くか、不労所得を得るしかない。その時点で何らかの人と関与しているし、何かしらの柵も発生する。
 本当の意味で一人で生きている人は本当に極僅かなのだ、そこに気付かず自分は一人だと思ってしまうのはとても寂しい事だ。知人や友人が居ないからと孤独を感じる人も居るだろうが、それは違うと思う。人との関りを持とうとすれば大体の人が関りを持てるのが人間社会というものだ。

 人と関りを持ちたくないという人も居るのだろうが、それはそれで難しい。人は一人では生きられないから。


「それでその子の名前は?」
「光り輝くでコウキだ。藤堂光輝」

「……なんか、凄い主人公感のある子だな」

「だろう?彼はきっと強くなるぞ!」

 何処となく嬉しそうに光輝君の事を語る千尋。
 千尋は彼と会って、話して、何を思い、何を考えているのだろうか。やはり教師というのは千尋にとっては天職だったのかもしれないと今更ながら思った。



「それで純の方はどうだったんだ?」
「結論から言えば、全員不合格!覚悟も無ければ動機も曖昧、こんなんじゃダンジョン攻略は無理だろうからね!」

「まぁ妥当な判断なのかな?」

 正直に言えば純の方には期待はしていなかった。
 中には適正もあって有望な人も中には居たのかもしれないが、こうも早くに行動出来る人ならば普通に働いても上手くいくだろう。
 今後、冒険者協会が大きくなって人も増えたらそういう人も受け入れるつもりではあるが、今の段階ではなるべく少数精鋭で行きたいので、かなりの覚悟か動機がある人を優先したい。

「いわゆるオープニングスタッフだからね!今後の冒険者協会全体のイメージにも影響しちゃうから、審査は厳しめだね!」

 果たして今後、純の面接を通過するような人は現れるのだろうか。

「あんまり厳しすぎると誰も残んないんじゃないか?」

「そうなったらスカウトでもしに行くから大丈夫!実は二人スカウト候補も居るから!」

「スカウト候補……知り合いとかか?」
「うん!」

「純の知り合いってそんなに多くないと思うんだが……」

「まぁね!」

 胸を張って言える事では無い。

「ちなみにどんな人?」

「カフェのバイトの子とカフェの常連さんのお孫さんだね!」

「バイトの子?誰?」
 純のスカウト候補に上がるような人がバイトで居ただろうかと考えるが該当者は居ない。

「日向ちゃんと、安藤さんのお孫さん!」

「えぇ……遠藤にダンジョン攻略は無理だろぉ?……それと安藤さんとこの御影ちゃんも向いてないんじゃないか?」

 二名とも面識がある。
 憩いのバイトの遠藤はうるさい系女子で、安藤さんのお孫さんの御影ちゃんは物静か系女子だ。

「大丈夫!だって可愛いし!」

「いやいや……そんな判断基準は駄目だろ」

「大丈夫!適性は高いと思うんだよね!」

 何を根拠に言っているのかは定かでは無いが、冒険者協会に関しては純と千尋に任せているのでこれ以上は俺からは何も言うまい。

「はぁ……まぁ、任せてるから別に良いけど……無理やりとかは無しだからな」

「もっちろん!」

 かなり不安だが、純が言うのであれば大丈夫なのだろう。たぶん。

 























 藤堂光輝、遠藤日向、安藤御影、もしかしたら今後この三人が次代を引っ張て行く存在になるのかもしれない。

「いや、遠藤は無いか……」






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