怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧
英雄も事件が無ければただの人11
スキル<怠惰>の説明と<怠惰ダンジョン>について、ベルや英美里達の事を純パパと純ママに説明した。
所々質問されては答えてを繰り返しながら理解を深めて貰った。
「ここまでの事を聞いた上で色々と考える事もあるとは思いますが私達の目的は<冒険者協会>を運営する為の協力をお願いしたいという事です。具体的な話は千尋からしてもらいますので」
ここからは全て千尋に任せる。
「では私から具体的な協力して頂きたい事を説明させて頂きますがよろしいですか?」
「お願いするよ。ここまでの話を聞いた限りでは正直な所、協力する必要を何も感じないのでね。さっき説明された<怠惰ダンジョン>はもはや独立国家のようなものだ、上辺の土地の広さもこれ以上は必要では無いだろうし、そもそも冒険者協会を設立するメリットもあまり感じない。それでも君たちは冒険者協会という新しい団体を作りあげようとしている。世間にここがバレるリスクを考えれば目立つ行動は避けた方が良いのは明白だと私なら考えるがね、そこら辺の事も聞いてみたいと思っているよ」
損得だけで考えればリスクは最小限に抑えた方が良いというのは間違いではないが、それでは俺達の目的は達成できない。
今後の事を交渉する為に千尋が純パパに話しかける。
「大前提として知っていて貰いたい事があります。それは……このままでは日本中がモンスターで溢れ返る可能性が高い事、そうなれば私達<怠惰ダンジョン>に属している者達並みの戦力を有していなければモンスター共に殺されるという事です」
純パパは千尋の話を聞いても動揺も見せない。
「モンスターが溢れ返るというのはどういう事でしょうか?確かにモンスターがダンジョン外で発見はされては居ますがその数はあまり多いという程でも無い筈です」
これが世間一般の考えだろう。
俺達のように情報を知らなければそこまでの危機感は持てない。
「ダンジョンというのは成長します。そして今現在ダンジョンとして発見されているのはダンジョン全体のほんの一部だけです。未だ見つかっていないダンジョンは今も成長を続けています<怠惰ダンジョン>と同じように。そして半年後には潜伏していたダンジョンが外部に侵攻を開始するだろうというのがダンジョンコアそのものであるベルの推測です。力を蓄えたダンジョンが外部に侵攻すれば強力なモンスター達が何も準備していない出来ていない、戦う力を持たない人達を蹂躙するのは間違いありません。ですから私達は日本だけでもそんな事態にならないように<超常現象対策本部>とは違う民間の団体としてダンジョンやモンスターに関する情報を広めて行きたいんです。情報の伝搬、戦力の底上げ、ダンジョンの攻略、この全てを達成する為には<超常現象対策本部>でも可能なのかもしれませんが、そうすれば<怠惰ダンジョン>の存在とスキル<怠惰>と私の旦那の存在が露見するリスクが増してしまうのです。私達の目的は日本を救いながら、怠惰ダンジョン、怠惰、児玉拓美の存在を秘匿する事ですから」
俺達が民間団体を設立する動機と目的を千尋が純パパに説明してくれた。
「ダンジョンは成長する、それに潜伏までしているか……俄かには信じがたい話ではあるが……ベルさんというダンジョンそのものとでも呼べる存在が言うのなら信憑性は高いのでしょうね。半年後には力を蓄えたダンジョンが外部に侵攻……そうなれば今のままでは世界中がモンスターで溢れ返るのは想像に辛くないのも理解したよ。だからこそ日本だけでも救いたい、それも<怠惰>に関する事やここの事、それら全ての中心である児玉拓美君という存在を秘匿したままで。なるほどな……是非とも協力はしたいとは思う、けれどこちらも何もメリットが無ければ流石に全面協力というのは難しい話ではある。まぁ協力を要請するからにはこちら側にも何かメリットを用意してくれているとは思うがね」
一応は現状のやばさを理解してくれたとは思う。
「動機と目的もご理解して頂けたと思うのでここからは具体的に協力して貰う内容と<大海グループ>に対するメリットについての説明をさせて頂きます。まず協力して頂きたい事は<冒険者協会>全体の管理運営、所属する人達の生活の保障、ダンジョン攻略者の教育、超常現象対策本部への情報提供、ダンジョンで得られる物の開発と販売、<怠惰>に関する全ての情報の秘匿、大まかにやってもらいたいのはこのぐらいです。ですが今後やらなくてはならない事や問題も増えていく事も考慮しておいてください。そしてメリットの説明をしますと、ダンジョンで得られる物の販売利益と開発協力、実地試験、臨床実験の為の土地や対象のモンスターの提供、私という英雄が所属する団体である事、それに付随する社会的地位や発言力。これらが私達が提供できるメリットです。協力して頂けますか?」
千尋が僅かに純パパを威圧しながら協力の要請をする。
ここで断られれば、悪いが口封じという手段を取らざるを得ない。
純パパも何かを考えるように顎に手をやる。
純と同じ癖を見つけて、親子なんだと再認識させられた。
「……ここで私が協力を拒めばどうなるのかは想像に辛くないという事も加味したうえで、協力させて頂こうと思うよ。これからは良きビジネスパートナーとしてよろしくお願いするよ」
笑顔で千尋に握手を求める純パパ。
千尋も握手に応じた。
これで何とか<冒険者協会>という組織が本格的に始動する事になった。
「協力感謝します」
お礼を告げて頭を下げた。
「こちらとしてもこんなビッグチャンスは逃すわけにはいかないのでね、お互いがメリットのある良い商談になったよ。君達の話を聞いているとこれから先、人類が安定してダンジョンと共生する事が可能になればダンジョンに関連した産業が発達していくと私は睨んでいるのでね。こういう新事業とうのは早さが肝心だからね、この機会を是非とも生かしてダンジョン関連で大海グループも世界に羽搏いていける可能性を感じているよ。だから千尋さん、是非とも日本だけでは無く世界を救う英雄になってくださいね」
世界を救う。
俺では到底不可能だし、救おうとも思わない。
だがもしかすると千尋ならそれすらも可能にしてしまえるかもしれない。
世界が平和であれば英雄という者は存在出来ない。
世の中には英雄の資質を持ってはいるが、その機会に恵まれなかっただけの傑物というのが沢山居るのかもしれない。
ダンジョンという人類の共通の敵が存在し続ければ、これから先日の目を浴びる事の無かった不世出の傑物達が英雄として名を馳せる時代が到来するかもしれない。
けれど後の世で教科書や歴史書に記されるのは世界で最初にダンジョンを攻略した俺では無い。
日本を、世界を救う佐々木千尋という俺のヒーローが後世に語り継がれるように俺は影で愛しの嫁を見守り続けるだけだ。
「最初から協力する気で居たんだから、あれこれ言わずに協力しますって一言言えば良かったんじゃないの?」
「……朋美、それじゃぁ折角の私の威厳が薄れてしまうだろう?」
「なるほど!頭が良いのね!流石はダーリン!カッコいいわ!」
人は自分に無い物持っている人を好きになりやすいというのは本当なのかもしれない。
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