怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

小さな発見は大きな事件4


 コアルームに向かいながら考える、家族の定義とはなんだろうか。
 法律的に見れば、配偶者は家族に含まれるだろう。
 でも法律の種類によっても定義は変わる。
 では家族というのはなんなのか、これはもう主観で考えるしか無いと思う。
 そう考えると<怠惰ダンジョン>に属する者は全て家族、ファミリーで良いんじゃないだろうか。
 そうなってくると千尋は既に<怠惰ダンジョン>に属しているので家族に含まれる。
 千尋と家族という事はもはや俺達は夫婦といっても過言では無いとも考えられる。
 つまりこの理論を使えば俺は店長とも<夫婦>になれる。
 この考えに至った俺はもしかして天才なのかもしれない。

 <怠惰ダンジョン>に帰属=家族=夫婦
 この完璧な式を見いだせた事で俺にも希望が残されている事に気が付いた。


 ☆ ☆ ☆


 洞窟へと入り階段を下りトンネルを抜けた。
 自然豊かな高原エリアに初めて足を踏み入れた、実質俺の嫁は顎が外れるんじゃないかと思う程に口を広げてアホみたいな顔をしていてアホ可愛い。

「嘘でしょ……なにここ……ハイジの世界じゃん……」
 数秒のアホ面の後にアホみたいな言葉を吐く千尋もアホ可愛い。
 実質嫁だと意識しだすと可愛いが止まらなくなって可愛いがゲシュタルト崩壊してきた。

「あの畜舎の中にコアルームに続く場所がありますので、まずは畜舎に向かいます」
 英美里に先を促され畜舎に向かって行く。
 きょろきょろと落ち着きなく周りを見回しながら畜舎へ歩いて行く千尋の姿に癒される。

「広いね……」
「だろ?ベル達が頑張ってくれたおかげだよ」
 まるで自分の事の様に自慢しながら千尋と歩いて行き畜舎の家に着いた。

「この靴箱から地下へ行けますので着いてきてください」
 先導する英美里とベルの後に続いて地下広場へと降りて行った。

「ここも広い……あの真ん中にある大きな水晶みたいなのは何?」
「あれが<ランダムスライムスポナー>だよ」
「あれが……あれを使えば私ももっと強くなれる……」
 やはり武の道を歩いて来た千尋は強さを求める意識が高いのか、スライムスポナーを羨望の眼差しで見つめていた。

「ここがコアルームになります、お疲れ様でした」
 遂に到着したコアルーム。
 俺がG-SHOPを手に入れたのはダンジョンコアに触れてコアが砕けて俺の体に吸い込まれた時だった。
 正直期待はしていない、だが検証の為にも千尋にダンジョンコアにベルの本体に触れてもらう。

「千尋ダンジョンコアに触れてみてくれ」
「えぇ」
 千尋は短く返事を返し、コアの前まで歩いて行く。
 手を伸ばし、コアに触れた。

 だが何も起こった様子は無い。
「どうだ?」
 首を横に振りながらこちらに振り返った。
「駄目ね何も起こらないわ」
 やはり予想通りの結果。
 千尋が<怠惰>の効果の適用外であれば俺と同じような事になるとは思うが、既に千尋が<怠惰>の対象に含まれているからこその今回の検証。
「まぁそうなるとは予想してたからな……これで千尋はどこか別のダンジョンを攻略する必要があるって事が分かったな」
 俺は言いながらコアルームに腰を降ろし、地面に座り込んだ。

「そうね!G-SHOPは必ず手に入れたいから!」
 実際このG-SHOPというものは明らかにチートだ、しかも誰でも入手出来る可能性がある。
 このチートを入手しない手は無い。
 これから主に外部で活動する予定の千尋には必須だ。

「マスター!1つ試したい事があるのですが」
「なんだ?」

「現状のDPとダンジョンの階層数ではまだ不可能ですが、ダンジョンには株分けの様なシステムがあるので<怠惰ダンジョン>をこのまま大きくしていけば<子ダンジョン>を作成し、<怠惰ダンジョン>と切り離せば1つのダンジョンとして認識される筈です!そうなればそのダンジョンのコアを千尋が手に入れる事も可能だと思います!なのでダンジョンの階層を水増しして株分け出来るまで大きくしたいのですが、どうですか?」

 ダンジョンは株分けで数を増やすという新たな事実を知ってしまったが、ベルの言う事が実現可能ならば千尋は安全にG-SHOPを手に入れる事が出来る。
「それが出来るなら願っても無い申し出だよ!」
「確かにその手が使えるなら私は安全に強くなれるか……1度試してみる価値はあるわね!こちらからもお願いするわ!」
 千尋がベルにしっかりと頭を下げる。
 そんな千尋を優越感たっぷりな顔で見下ろすベル。

「千尋がそんなに頼むんならしょうがないから、最優先でこの計画を進めてあげよう!」
 鼻息荒めなベル、嬉しさを抑えられないのか口元がによによと蠢いていた。
 一方で千尋は頭をさげたまま、ほくそ笑むように笑った。
 
 千尋が顔を元に戻してから頭をあげた。
「ありがとう!ベルさん!これからも仲良くしてね!」
 とても良い笑顔でベルに話しかける千尋を見て、やはり女は怖いと再認識させられた。
「しょーがないなー!ちーちゃんは!仕方ないから仲良くしてあげる!」
 にやけ面で宣うベルに多少の同情をしてしまう。
 だがベルにとっては初めての友と言える存在が出来たことに俺は嬉しくて思わず笑ってしまった。
 最初は打算ありきの友情でも良い、付き合いが続いていけばいつか打算だけでは無い友情が生まれる事もある。

「良し!家に帰るか!」
 立ち上がり、尻を数回叩いて埃を払う。
「「はい!」」
「えぇ」
 皆で襖へと向かい手を触れる。
 倉庫を選択して家へと戻ってきた。


 ☆ ☆ ☆


 千尋は線香を上げてから帰って行った。
 家に着いてから<念話>すると言っていたのでまた後で念話がくるか、駄目なら電話なりデスコなりで連絡してくれるだろう。
 ベルも高原エリアに<ダンジョン鶏>を生成すると言ってコアルームへと戻って行った、肉体を得たことで今までエルフルズや英美里に頼んでいた雑事も出来ると嬉しそうに笑っていた。
 肉体を得ても仕事熱心なベルに触発されたのか英美里もレベル上げに行くと言って着いて行ってしまった。

 久々に一人の時間を過ごしている気がする。
 嬉しいような寂しいような変な気分だ。

「そういえば今日はまだG-SHOP見て無いな……」
 部屋で何をするでもなくネットサーフィンしながら思い出し、ステータスを開いてGーSHOPを覗く。
「レベルが20に上がってるな……ってことは何かスキルが……増えてる!」

 GーSHOP SP46000
 スキル
 ・槍術 消費SP30000


 増えていたのは槍術。
「スライム狩りで槍使ったから増えたって事か?うーん……まだ不確定だけどそういう事なんだろうな……」
 スキルが取得可能になれば表示される仕様であることは分かっている。
 千尋がG-SHOPを入手すれば色々と詳細が分かるだろうと思考を止め、アバター項目を開く。


<アバター> 残46000SP

 アバター修復 消費SP1000

 聴覚強化 消費SP15000

 視覚強化 消費SP15000

 触覚強化 消費SP15000

 嗅覚強化 消費SP15000

 身体能力強化 消費SP15000

 魔力同調 消費SP20000

 魔力強化 消費SP20000

 魔力量強化 消費SP20000

 スキル同調 消費SP30000

 加護同調 消費SP30000

 自動修復機能 消費SP30000


 増えたものは無し。
「どうするかなー」
 槍術スキルを取得しないことは確定、今後も使っていくかどうかも分からない武器系スキルは取得したくない。
 候補はスキルか加護の同調系。
「まずはスキル同調からで良いか、次SP貯まったら加護同調だな……取得完了!」
 あまり悩むことなくスキル同調を取得した。

「アバター操作で確かめるか!」
 アバターを取り出して鑑定を掛ける。
「あれ?鑑定出来ない?……あーそうか隠蔽か……って俺の鑑定まで防ぐのは不便すぎるんだが……操作しながら隠蔽解除すれば出来るのかな?」
 アバター操作で隠蔽を解除しながら本体で鑑定を再び掛ける。

「出来たけど……同時に2つの体操作するのはキツイな……頭使い過ぎて頭痛い……」

<ダンジョン用アバター 児玉拓美>
・発声機能
・味覚機能
・身体能力同調
・魔力量同調
・スキル同調
 <スキル>
・念話
・隠蔽


「ん?<怠惰>とアバター関連のスキルは同調しないのか?」
 アバターには<怠惰>とアバター関連は同調出来ない仕様になっている事に少し不満はあるが取得したものはもうどうしようもない。

「まぁ……仕方ないか、今後に期待するしかないな!加護から取った方が良かったか……」

 多少の後悔はあるが今後本体がスキルを取得していけば必要なものである事は間違いないので先行投資だと割り切る。


 ☆ ☆ ☆


 しばらく封印していたパソコンのブックマークをクリックしてとあるサイトにアクセスする。

「今家に居るのは俺だけ……英美里が来てからは我慢してたけど……今日ぐらいは良いよね!」

 ジャンルから好みの物を物色していく、どんなものにするか、誰にするか、色々と吟味しながら見ていく。
 物色している時間が最高に楽しくて興奮してくる。
 30分程サイトの中を巡回して吟味に吟味を重ね、ようやく今日の獲物を決めた。

「一応イヤホンしとくか……」
 見る前にヘッドセットを装着して準備は整った。
 気分は聖戦に挑まんとする戦士だった。
 再生ボタンを押して動画を見始める。
 導入部分を倍速にしながら、開戦の合図を待つ。
 シチュエーションを何となく頭に入れていく。
 開戦を待つ間に周囲を確認して物資の配置も最終確認を行う、この確認を怠ると情けない結果を生むことは経験済みなので過去の失敗から教訓を学び実戦に挑む準備を完璧にこなす。
 いざ開戦!
 ついに開戦したがまだ自分の出番は無いと、戦を見届けながら気分を高めていく。
 開幕はゆっくりと接敵し、お互い相手の出方を探るように軽く小競り合いを繰り広げていく。
 こちらが突けばあちらが受け流す。
 敵は嫌がるように逃げていく、攻めに転じる好機を逃すまいと虎視眈々と何かを狙っているのが分かった。
 だがこちらの将も歴戦の猛者、多少強引ながらも徐々に相手を追い詰めていく。
 手に汗握る展開に控えているこちらも高揚していく。
 将の計略と執拗なまでの攻めが功を奏し、敵の鎧を剥ぎ取る事に成功した。
 ここから一気に攻めに転じ、相手の虎口を攻め立てる。
 もうそろそろ出番がやってくる。
 気分は最高潮で己を鼓舞するように邪魔なものを取り払い、敵陣へと駆けていく。













『おーい!念話出来てる?』
『ひゃい!』
 突然の急襲に股間が縮み上がった。





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