怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧
世界が変わっても人間そんなに変わらない14
愛の巣これはベルの冗談なのか。
<愛しても愛してもまだ足りない>
歌になぞらえてそう伝えたいのか。
今の俺では判断出来ないし判断するべきじゃないとも思う。
俺の中での信頼度が一番高いのはベルだ、これは間違いない。
英美里やエルフルズを既に身内として見ている事は間違いないが序列もまた明確に存在している、俺が頂点で下に英美里が居てその下にエルフルズが居る。
本当は序列なんか無い方が良いのかもしれないが現実にどの家でも家庭内の序列は存在している。
これは群れで生活する上で切っても切れないものだと思うしそこに不満は無い、だが俺の人生において家庭内の序列が頂点だった事が一度も無かった。
序列の頂点ということは当然ながらその群れを率いる義務と責任が発生するという事でもある、正直俺にはそんなものを背負う気概も気力も能力も無いし何より<面倒>だ。
だけどこの<怠惰ダンジョン>という群れには頂点がもう一人存在する。
それが<ベル>だ俺はベルが居るから頂点で居られるしベルもまた俺が居るから頂点で居られる、俺とベルは二人で頂点であり同格の存在なのだ。
俺たちは互いに依存関係にあるが片方が居なくなれば<怠惰ダンジョン>という群れが瓦解する訳でも無い。
仮に俺が死んだ場合外部からの攻撃に対して弱くなるが運営や繁栄は可能である。
逆にベルが居なくなった場合は運営や繁栄の面でかなりの痛手になるが外部からの攻撃に関しては今までと然程変わりはない。
故に俺とベルは二人で頂点であり、他の皆もそれを理解しているからこそこの群れは強い。
☆ ☆ ☆
転移門の行き先を見てどうしたものかと考えるが、ベルのお茶目だと割り切って<愛の巣>を選択する。
行き先を選択した瞬間なんの前触れも無く視界が変わった。
倉庫から一瞬でベルとコアルームの扉が視界に入ってきた。
「マジで一瞬だな……」
俺に遅れて英美里が隣にいきなり現れた。
なんの前触れも無くいきなり現れた英美里に思わずビビる。
「ベル!来たぞ!これ凄いな……ちなみに今回は生身で来たけどアバターでも使えるか確認したいから一旦戻るから」
『はい!マスター!アバターでも移動出来るとは思いますが確認して貰えるのはありがたいです!』
「じゃあまたな」
俺は振り返って倉庫にあるものと同じデザインの襖に手を伸ばす。
何処へ転移しますか?
・倉庫
「こっちからだと普通なんだな……」
倉庫を選択し家に戻りアバターを取り出し操作を開始する。
アバターで襖に触れると同じように選択画面が表示されたので選択してコアルームへ転移する。
「ただいま」
『おかえりなさい!アバターでも転移可能でしたね!』
「あぁ、これで移動が楽になったよ!ちなみにここは新階層の何処に繋がってるんだ?」
無事確認も終わり現在地をベルに聞く。
『はい!マスター!出てみればすぐにわかりますよ!』
「わかった、行こう英美里」
「はい!」
促されるままに英美里と共にコアルームから外へと出るとそこは先ほどまでスライム狩りをしていた地下空間だった。
「ここに繋がってるのか……便利だな!」
「はい!移動がとても楽になりますね!」
場所を確認して再びコアルームへと戻る。
『どうですか?これで移動が楽になり、効率も上がると思いますが』
「最高の場所だよ!ありがとう!」
ベルに感謝の言葉も伝えたので、そろそろ次の予定を消化したい。
「そろそろエルフの魔法講習に行くよ」
「ご主人様、リーダーに念話でここへ来るように連絡しておきましたのでここで待つ方が良いかと」
『もうすぐリーダーがここへ到着しますよ!』
仕事が早い二人が居ると楽で良いなと思いながら到着を待つ。
「りょーかい」
ベル達が防衛について話しているのを聞き流しながら自分の部屋へ移動してネットサーフィンを開始してから数分経ち、エルフルズが到着したと念話が入ったので意識をアバターに戻す。
「おっ!来たな、早速だけど魔法講習をお願いするよ!」
「分かりました!丁度良いので地下広場で魔法を勉強しましょう!では、一旦地下広場へ出ましょう!」
リーダーに促されコアルームを後にする。
「それでは!魔法の適性を調べる為にまずは魔力を操作する練習から始めましょうか!」
エルフの魔法講習がスタートした。
「まずは自分の魔力を感じる練習です!この魔力を操作する事でイメージを具現化する事が可能となります!私が児玉様に魔力を流してみますので、それを感じ取ってください!これが感じられれば後は簡単ですから!」
「頼む」
緊張しながらもしっかりとリーダーの説明を聞く。
リーダーが俺の手を握り俺の手が温もりに包まれる、すべすべでしっとりとした小さな女性の手の感触に意識が持っていかれる。
女性と手を繋ぐのは何時ぶりだろうか、アバターなので緊張と興奮で手汗が凄い事になっているという事は無いが俺の手を握りしめてくれるリーダーに感謝する。
どのくらい経ったか分からない程無言で手を繋いでいる。
目を閉じてリーダーの手に集中する。
何かが流れてきている事が感じられた。
これが魔力だろうと判断してその流れてくる何かを強く意識すると、今度は俺の体の中にも魔力を感じられた。
「もう大丈夫ですね!」
リーダーが手を放した。
「これが魔力か……」
「これで第一関門はクリアです!次は魔力を操作して外へ出す練習をしましょう!」
「おう!」
無事魔力を感じる事が出来るようになった。
「魔力を操作といっても難しいと思うかも知れませんが、難しく考えず魔力を意識しながら動けと命令するように意識してみてください!」
「やってみるよ」
魔力を意識して、魔力に命令する。
動けと命令するとすんなりと魔力が動いた。
そのまま外へと出ろと命令すると魔力が波紋のように全身から外へと出た気がした。
「できましたね!これで第二関門はクリアです!次は指向性を持たせる練習をしましょう!」
ここまで順調にクリア出来た、もしかすると俺には魔法の才能があるのかも知れないなと自信もついてきた。
「指向性というのはどういう事だ?」
「今児玉様が行ったのは魔力をただ外へと放出しただけですので、次は何処から何処へ魔力を放出するか意識しながら魔力を放出してください!まずは分かりやすく掌から私の掌へと魔力を放出してみましょう!」
リーダーが掌を俺に突きだしてくる、俺も掌を突き出して言われた通りに意識する。
魔力に命令する、掌から掌へ動けと。
魔力がうまく動いてくれない、このままでは駄目だと思いまずは魔力を掌へ集めていく。
集まった魔力をリーダーの掌に向かって放出しろと命令するとリーダーの掌に向かって魔力が放出された。
「できましたね!これで第三関門もクリアです!後はそれぞれの属性に変換して放出すれば<魔法>が発現しますよ!」
「属性に変換か……どうすれば良い?」
もう少しで魔法が使える。
「これは属性に対するイメージが重要になります!水属性であれば水になれ!と魔力に命令するような感じでしょうか……属性変換に関しては個々人でやり方が異なるので自分のやりやすいイメージを持つことが大切かと思います!練習あるのみです!」
「ありがとう、やってみるよ!」
魔力に命令する、お前は火だと。
魔力がほんのりと熱を帯びた気がした、そのまま掌から火が出るイメージで放出する。
掌から弱々しい、マッチ程度の火が出た。
「出来た!」
「できましたね!火の適性はあるという事がこれで分かりましたね!どんどん試していきましょう!」
「あぁ!」
魔法が発現してテンション上昇でスーパーハイな状態になりながらも属性変換を全て試していく。
☆ ☆ ☆
「これで属性がわかったけど……どうなんだこれは?」
火、水、風、土、光、闇、一応全ての魔法が発現したが大した違いが無い。
「全属性の適性はありますね……得意な属性も特に無いと言いますか……まだこの段階では分かりませんが、属性魔法はあまり得意では無いのかも知れません」
全属性の魔法が使える素質はあるが得意な属性も無い、これはいわゆる器用貧乏という感じだろうと自分の中で結論付ける。
「そっか!じゃあ後は練習あるのみって感じだな!」
「そうですね!練習次第で色々な魔法が使えるようになりますから!イメージを強くもって練習してみてください!」
「ありがとう!魔法が使えるようになっただけでも最高な気分だよ!本当に感謝してる!」
リーダーに礼を言って頭を下げた、魔法が使えるだけで俺は大満足だった。
「ではそろそろ……私達の家に行きますか?」
「あぁ!一旦家に戻ってから生身で行くよ!」
「はい!私たちは先に戻って歓迎の準備をしておきます!」
「じゃあまた後で!」
「では!お先に失礼いたします」
エルフルズが家へと帰って行った。
「じゃあ俺らも家に戻るか!」
「はい、ベル様に挨拶して戻りましょう!」
こうして無事に魔法講習も終わり、ベルの元へ戻って挨拶を交わしてから家に戻って行った。
☆ ☆ ☆
「ただいま!」
「おかえりなさいませご主人様!」
隣から聞こえてきた声に家に帰ってきたという実感が湧いた。
「良し!早速準備してエルフ達の家に向かおう!」
「はい、ですが準備とは何をするのですか?」
「一応風呂に入ろうかなと……」
この間の事が頭を過るがそれでも俺は風呂に入ってから行きたい。
「わかりました!準備が出来次第ご案内しますね!」
この間とは違う反応が返ってきて拍子抜けだが、まぁ良いかと気にしないで置くことにした。
アバターを回収して、風呂場へ向かう。
今日はシャワーだけで済ます事にして素早く体を洗って脱衣場へ出た、体を拭き服を着ていく。
ジーンズとジップパーカーを着て妹の部屋にある姿見で一応確認してから部屋に戻った。
「香水とか付けて行った方が無難だよな……」
香水も念の為付ければ準備は万端、多少の緊張はしてきたが楽しみでしかない。
「英美里!準備出来たから行こうか!」
「では行きましょうか!」
英美里の案内でエルフの家へと向かう。
道中テレビで見た料理を再現する為にエルフに頼んでいた食材が手に入ったとか、他愛も無い話をしながら山へと入った。
最初は道が整えられている山だったが進むにつれて段々と道が無くなっていきただの森を進んでいく。
「本当にこっちであってる?」
「あってますよ!もう少しです!」
もう少しだと言われ、大人しく後を着いて行く。
「着きました!」
「は?どこ?」
「上ですよ!」
上を見上げると木々の葉の隙間から何本かの木の上を繋ぐようにして建てられている家がなんとか見えた。
「え……高くない?」
地上から10メートルはありそうな高さの場所に建物が乗っていた。
「お待ちしておりました!」
突如としてリーダーが空から降ってきた、あの高さから降りてきて音も無く無事に降りてきた事に驚きながらもリーダーに話しかける。
「いや……うん……あれが家?」
「はい!ベル様に作って頂きました!念の為魔法で補強しておりますので耐久性もばっちりですよ!」
「いや、高くない?というかどうやって昇るの?」
リーダーが笑顔で近づき耳元で囁く。
「抱っこして差し上げましょうか?」
心臓が跳ねた気がした、是非ともお願いしようと口を開く。
「私がお運びしますね!」
言うが早いか、英美里が後ろから俺をお姫様抱っこして飛んだ。
「うっそだろ!」
「到着です!」
英美里が俺を降ろしてくれた、木の上に建てられたツリーハウスに。
俺のよりも少し小さな家だった、丸太作りで出来た家とその周りに敷かれた床板。
手摺を持ちながら下を見ればかなりの高さがあり、怖さで足が竦む。
「では家の中へどうぞ!」
いつのまにか隣にいたリーダーの案内の元家の中へと足を踏み入れるとエルフルズが台所に集まって何かを作っていた。
「部屋数は5部屋ありますので、いつでも泊りにきてくださいね!」
リーダーに着いていきながら内見していく、台所、風呂、トイレ、居間、倉庫。
「個人の部屋の中も見ますか?」
願っても無い提案だった。
「今日はやめときましょうね!ご主人様!」
「ソウデスネ」
英美里の笑顔に阻まれ今回は断念する。
「それでは!これより歓迎会をスタートします!」
居間に全員集まり席に着くとリーダーの音頭で歓迎会がスタートした。
「児玉様と英美里様は何を飲まれますか?」
風魔法が得意なエルフが風魔法で飲み物が入った瓶とグラスを運びながら聞いてくる。
「何があるの?」
「私達の作った葡萄酒、米酒、麦酒、葡萄ジュース、緑茶、後は山の天然水もありますよ!」
酒も造っているのかと感心する。
「葡萄酒がおすすめですよ!」
リーダーが葡萄酒を勧めてくれるが俺は酒があまり強く無いので遠慮する。
「いや、酒はあんまり得意じゃないから葡萄ジュースを貰うよ」
「ご主人様!折角の機会ですし今日ぐらいお酒を飲みませんか?私もエルフ達もご主人様が飲まないのであれば飲むわけにはいきませんし……それに皆お酒が飲みたいみたいですよ?」
周りを見やると期待した顔でこちらを見つめているが分かった、この状況で断るというのも興ざめなので葡萄酒を手に取る。
「良し!今日は無礼講だ!飲め飲め!」
景気づけにグラスの葡萄酒を飲み干す、すっきりとした飲み口で少し若いが葡萄酒特有の臭みもあまり無く、とても美味しかった。
「美味いな!正直ワインとかって臭いから好きじゃなかったんだけど……これなら美味しく飲めるよ!」
「それは良かったです!お料理も沢山ご用意しておりますので沢山召し上がってくださいね!」
☆ ☆ ☆
頭が痛くて目が覚める、気付けば自分の部屋の布団で寝ていた。
「頭痛い……記憶も無い……飲み過ぎたか……」
しばらく部屋で頭を抱えていると、携帯に着信が入った。
「もしもし……」
「まこちゃんおはよ!今から行くけどもしかして寝てた?」
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