妖狐な少女は気ままにバーチャルゲーム配信がしたい

じゃくまる

第53話 酒呑童子とゲーム配信する。その2

 とりあえず合流を果たしたので、まずは簡単な拠点を作るために資材調達をする必要がある。
 やるべきことを一覧にする。
 ・木材集め
 ・石材集め
 ・鉄集め
 ・粘土集め
 ・家探ししたりゴミ漁りしての資材集め
 といった5つになる。
 というわけでボクは今から探索するのも微妙なので木材集めを優先することにした。
「鬼那は皮とかあったら集めておいて? あとトイレで洗面台から鉄パイプもお願いね。それと食料かな。瓶もあったらよろしく。あと忘れずに寝袋設置していってね」
「わかったぜ。どんな場所狙えばいいんだ?」
「あ、そっか。洗面所はお店とか家とかまぁどこでもあるけど、皮は動物や車、ソファー、革製コート位からしか手に入らないんだよね。まずは大きな銃工場でもいいかもね。入り口に革製ソファーあるし」
「了解だぜ、行ってくる」
 鬼那は寝袋を設置すると、そのまま出発していった。
 ボクは木材を集めながら酒呑童子の画面をちら見する。
 鬼那は怖いものなど知らぬと言わんばかりずんずん進んでいく。
 目標地点は遠くに見える大きな塔のある建物だ。
 あれは同じ形で食料工場もあるからどっちになるかな。
 さて、ボクは集めますか。
 そのままさくさくと、といってもただのランク2の石斧なので時間だけかかる。
 もくもくとやっていると、突如隣の鬼那がビクッとした。
 何があったかはわからないけど、そのまま作業を続行し、だいたい千個ほどの木材を用意してフレーム作成、それから設置して強化。
 簡単な豆腐の家を用意する。
『狐白ちゃんって豆腐タイプか』
『最初から家建てるのは偉い』
『さすがにおしゃれな家は初日では無理か』
 時間も夕方くらいに差し掛かり始めた頃、鬼那が戻ってきた。
「ゾンビ結構多いのな。家の中にはあんまり入ってないけど、銃工場っての見つけたからある程度集めてきたぜ」
 鬼那はそう言うと設置した木箱にアイテムを入れていく。
『さすが親分、仕事が早い』
『親分、途中で画面揺れたけど大丈夫でした?』
『あの親分がましゃか』
「うっせー! それにしても、もう家で来てるのな? 3つ部屋あるけどなんのためなんだ?」
 木箱に入れ終わった鬼那はボクにそう問いかけてくる。
「何? 鬼那、もしかしてビビったの? あのときのビクってしたのはそういうことだったの?」
「う、うぅ、うっせー! いいじゃねえかよ。部屋に入ったらすぐ横にいるとか卑怯だろ!?」
「あぁー、日本のお化け屋敷感あるよね〜」
 どうやらこのゲーム特有の敵配置にびびったようだ。まったく可愛い鬼だ。
「で、これなんのためなんだ?」
 鬼那はボクが急いで作った仮拠点に興味があるようだ。
「まだ床貼り終えてないけど、真ん中が物置兼居住スペース、左が地下採掘場への梯子と炉やかまどのスペースで、右が作業台設置したり発電機置いたりするスペースの予定」
 何度かこの配置で作っているけど、ソロだと天井貼る時間が足りなかったりするんだよね。
 今は探索をお任せしているから集中的に作業できたけど。
「だいぶ狭くないか?」
「あぁ、うん。今日はゾンビが走る時間になるから作業中断したんだ。明日になったら拡張工事始めるよ?」
「えっ? ゾンビ走るのか?」
「もちろん。腐った足でよく走れるよねぇ。とりあえず夜は応戦してもいいんだけど、じっと耐えつつみんなと雑談して過ごそうよ」
「まぁ、それもいいか」
『夜襲撃どうなるかな?』
『今日の狐白ちゃんのビビリシーンはないのか』
『ビビった親分も可愛かったけどビビリ狐白ちゃんもはよ』
「鬼那がビビるとは思ってなかったけど、ボクはビビりだからなぁ」
「ちなみに、狐白はビビると尻尾の毛が膨らむんだぜ」
「ちょ!? それは言わないでよ」
「うっせー、お返しだよ」
『二人共仲いいなぁ』
『一人のときの親分は頼れる感じの放送なのに、狐白ちゃんとやるとこうなるのか』
『でも他のメンバーの子のときも頼れる姉御感あったような』
「そりゃだって、他の子は子分みたいなものだからね。子分には強いよね」
「そういう言い方はどうなんだ? まるで狐白といるときは弱いみたいじゃねえか」
「よわよわじゃん」
『確かによわよわ親分だな』
『よわよわ親分もかわいいよ』
「たしかに鬼那はかわいいよね。こんな見た目なのに姉御肌ってとこもかわいい」
「はっ!? い、いきなりなんなんだよ!?」
 鈴音鬼那こと酒呑童子は見た目は色白の小さな女の子なのに怪力というギャップが存在する。
 人間の男性なら初見で騙せるのではないだろうか?
 そんな話をしていると、拠点の外からガサガサと草をかけ分けるような音が聞こえてきた。
 ゾンビが通った音だ。
「な、なぁ。今の音何なんだ? 誰かいるのか?」
「鬼那、今のはゾンビが走る音だよ。近くにいるってこと」
「まじか!? 様子見たほうがいいか?」
「ん~、今動くとばれるから、夜の様子見るなら囲い作って音が響きづらい状態作ってからにしようか」
「お、おう」
 う~ん、いつも勇猛果敢なおっかなびっくりしている状況は実に新鮮だ。
「鬼那」
「あん?」
「もしかしてだけど、びっくりすることが苦手?」
「い、いや。そんなことはないぞ」
 些かどもりながら鈴音鬼那氏はそう語った。
『草』
『親分、次はホラゲーやろう』
『ホラゲーと親分の相性は良さそうだなぁ』
「な、お前ら!?」
 うーん、まさか鬼那がホラーゲームが苦手だったとは。
「そういう狐白はどうなんだよ?」
「ボク? 当然ボクは苦手だよ? 実物は怖くないんだけどさ」
「あー。あの心霊スポットにいたあいつらとかか」
「そそ。ボクらを見て逃げていったのは驚いたけどね」
「ま、しょうがないだろ。そんなもんだ」
 ボクたちはちょっと前に起きた出来事について、視聴者のみんなを置いてけぼりにして話してしまった。
 まぁ、彼らには何のことだかわからないだろうけどね。

 少しだけ話すと、実はちょっと前に近所に心霊スポットがあるとかで様子を見に行ったことがある。
 その時、何体かの霊が確認できたので何か心残りはないかと聞いて回っていた。
 何体かに聞いていた時、そのうちの一体から困った霊がいるというので話を聞くことに。
 実際にその場所へ行くと、突如として激しい怨念をまき散らしながら襲ってくる霊がいた。
 これが相談された悪霊というやつだった。
 まぁ別に霊能バトルとかそういうものが起きるわけでもなく、酒呑童子が金棒で殴りつけて取り押さえボクが妖術で拘束、引き取りに来た火車がしばりつけて悪霊を地獄へと強制的に連れて行ったということがあった。
 その時の悪霊の悲鳴というのがすさまじく、地面を引っかきながら行きたくないと泣き叫んでいた。
 これを見た周囲にいた残りの悪霊たちが一斉に逃げ出したというわけだ。
 まぁ全員あえなく捕まり、送られていったわけだけど。
「まぁゾンビは悪霊じゃないからね。少なくともこのゲームのゾンビは死にながら生きているって感じかな」
「というと、実験とかそういう感じか?」
「だと思うよ? そういう痕跡もあるし。昆虫の世界にも寄生されてゾンビのようになっている昆虫がいるくらいだからね」
「まじか。自然界怖えな」
『狐白ちゃんが頭よさげなことを』
『結構ものを知っている狐娘』
『いつもと違って知的に見える不思議』
『まぁそれでもビビりでちっちゃい子なんだけどな』
「ちっちゃいいうな!」
 思わず最後のコメントに突っ込んでしまった。
 誰の話でもないけど、ボクは決して小さいわけではないから。
 妖狐年齢としては へ い き ん です。
 まぁ、姉さまは少し高いけども杏ちゃんはボクと変わらないし、おかしいところはないはずだ。
「さて、何とか終わりそうだね。朝4時になるよ」
「朝4時になるとどうなるんだ?」
「知らないの? 夜が明ける」
「馬鹿にしてんだろ?」
「バレたか」
 こうしてバカなボクらのゾンビゲーム初日が終わった。

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