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じゃくまる

第44話 暮葉は逃げられない

 最近は色々と忙しく、あっちに行ったりこっちに行ったりを繰り返している暮葉です。
 というのも、ボク自身が異世界に行けることになったので、御津と護衛のセフィシスちゃんと共に異世界の土地の開拓をしていました。
 基本的な地盤はセフィシスちゃんが固めてくれていたので、あとはボクたちのほうで必要なものを用意していくだけとなった。問題なのは何をやったらいいかわからないことだけだろう。
 今日はそんな異世界でのお仕事もお休み。人間界にある家でのんびりしていると、インターホンがなった。
 ピンポーン
「むぅ? 新聞屋さんかな? まぁいいや無視無視」
 引きこもり気味かつ積極的に人に会いたくないボクとしては、この手の訪問者は無視するに限るというもの。
 しかし、今回はそれだけでは終わらなかった。
 ピンポーン ピンポーン ピポピポーン
「むー、うるさい。今回しつこすぎない? でも無視無視」
 ボクの得意技である『居留守』が発動した。
 普通ならこれでいないものとして去るはずだ。
 しかしーー。
「くーれーはーちゃーん、あーそーぼー」
「いるのはわかってるし。大人しく出てくるし」
「暮葉ちゃん、居留守上手ですよね」
 外から聞こえてくる声には聞き覚えがあった。
 近所の小学生三人組だ。
「早く出てこないと、えりながどうなってもいいの!?」
「さぁ大人しくするし」
「や、やめてください! 暮葉ちゃーんたすけてー」
「……」
 はぁやれやれ。ボクはため息を吐きながら窓を開けて三人組に声をかけた。
「はいはい。近所迷惑だからもう入りなよ。今日は兄様も姉様もいないから」
「ほらいた」
「わかってたし」
「うぅ、触られ損です……」
 若干一名泣いているけど、三人は揃ってボクの家の玄関へと歩いていった。
 まったり引きこもりタイムも終了か。

「というわけで今日はコスプレしたいとおもーう!!」
「何が『というわけ』なのかな? 説明、何もされてないんですけど」
「簡単に言うとイラストを描くのでみんなでお着替えしようということになったのです。」
「みんなでというか強制的といいますか……」
 部屋にやってくるなり三人組はの一人はそう宣言した。
 この最初に宣言した子は【天野あかり】という狗賓の女の子だ。
 元気が取り柄で若干おつむが足りない、好奇心旺盛な子。
 ちなみにボクより若干身長が高い。
 次に説明してくれた子は【白峰ゆずは】という狐の妖種の女の子。
 落ち着いていていつも冷静な感じだが、あかりが絡んでいるときは少しだけ大胆になる傾向がある。
 語尾は2つあり、『です』と『し』で区切る癖がある。
 ちなみに身長はボクと同じくらいで非常に似たようなサイズ感となっている。
 それと、若干だが顔もボクに似ている。
 最後に話した子は【雨宮えりな】という人間の女の子だ。
 大人びていて落ち着いているけど、三人組の中では二人によるいたずらの被害担当という不憫な役割の子でもある。でも二人が好きなようで、離れることはないようだ。
 ちなみに社長令嬢でもある。つまりお金持ち。
 
「それにしても三人とも仲良いよね。妖種と人間の組み合わせも最近増えてきたから不思議というほどでもないけど」
 この三人組はお互いが違う種族であることを知っている。まぁ家族ぐるみで付き合いがあるというんだから当然といえば当然だ。
 でも人間のクラスメイトでそのことを知っているのは、このえりなちゃんだけのようだた。
「ゆずはは仲が良い人には積極的だけど、基本人見知りだからねー。でも男子には人気があるよ」
「モテても嬉しくないし。いちいちちょっかい出してくるのは本当にうざいし。一人にさせてほしいし」
「まぁでもわからなくはないですよ? あかりちゃんは元気で可愛くて人気ありますし、ゆずはちゃんはクールな感じがとても可愛らしくて物静かなクール系美少女って見た目してますし」
「あたしはこっちでもあっちでも黒髪ツインテにしてるけど、ゆずははこっちとあっちじゃ色違うよねー」
「お父さんとお母さんが金色の毛並みしてるからあっちでは金色になってるだけだし。目の色は普通に黒だし。こっちでは合わせて黒黒だし」
「でもそのストレートヘアはいいですよね。今はウェーブかけたヘアスタイルが気に入ってるので変えませんけど、いずれはストレートも試してみたいです」
「でも、えりなの栗色の髪も羨ましいし」
「たしかに良い色だよね〜」
 あかりちゃんとゆずはちゃんはえりなちゃんの髪の色を絶賛している。たしかにちょっと良い色かもしれない。
「で、和気藹々とするためだけにここに来たんじゃないんでしょ?」
 なぜ彼女たちはうちで仲良ししてるんだろう。
「あ、そうだった!」
「今日は暮葉ちゃんも着替えるし」
「コスチューム色々持ってきました」
「えっ、やだ」
 期待の眼差しでボクを見ながらそう言う三人組の言葉を、ボクは拒否した。
「問答無用だし」
「脱がせー」
「これ、いいのかな……」
「やーめーろー!」
 共謀した三人にボクはあっという間に捕まり服を脱がされていく。
 ボクのほうが歳上なのに、力で負けるってどういうこと!?

「ただいまー」
 玄関先から声が聞こえる。この声は宗親兄様だ。
「あっ、兄様おかえりなさいませ」
「ちょっと、暮葉ちゃん!?」
「おー、大胆」
「流石にこれは真似できないし」
 三人組に脱がされながらもなんとかドアにたどり着き、宗親兄様に挨拶するボク。
「あー、暮葉? その、せめて服は着たほうが……」
「ん〜?」
 宗親兄様に言われて自分の格好を確認する。
 真っ裸だった。
「しまった。もー、三人のせいだよ!?」
「いやいや、今のは暮葉ちゃんが問題でしょ」
「私悪くないし」
「止められればよかったんですけど……」
 ボクは三人に文句を言いつつ、部屋へと急いで戻った。
「ゆずはちゃんたちが来てるってことは、イラストか何かの資料集めかな?」
 扉の外から宗親兄様の声が聞こえた。
「うん、そうらしいです。なんでボクが脱がされてるのかわからないですけど」
「暮葉ちゃんは素材としては極上だし。コスプレさせて写真撮るし」
「宗親さんにもあとで素材提供しますね」
「あたしも着替えるぞー! ゆずはもさっさと着替えろー」
「無理矢理脱がせるなし! ちょ、だめだし!!」
「この恨み晴らさでおくべきかー! 者共、脚を押さえて脱がせるのです!!」
「「イエス・マム」」
「く、くるなし!」
「なんだか楽しそうだね。あとでおやつと飲み物持ってくるね。ごゆっくり」
 ボクたちがゆずはちゃんを脱がすのに必死になっていると、宗親兄様はそう言って去っていった。

 数分の格闘の末、ゆずはちゃんを脱がせることに成功したボクたち。しかし部屋の中で全員真っ裸になって何をやっているんだろう……。
「はぁはぁはぁ。よってたかって脱がせるとかひどいし」
「早速着替えようよ」
「ではとりあえずこのミニスカメイド服から」
「それ、どこから持ってきたの!?」
 えりなちゃんは持ってきたかばんの中からおかしなものを取り出していた。本当にどこから持ってきたんだろう。
「ふふふふふ。こうなったら早速暮葉ちゃんにミニスカメイド服を着せるし」
「だね〜」
「ですね」
「えっ」
 真っ裸の三人がボクににじり寄る。
「ちょ、待って、せめて下着穿かせて!!」
「あ、そういえば」
「暮葉ちゃん」
「脱がせたときに下着穿いてなかったし」
「言うなああああああ!!」
 ボクの癖の一つがバレた瞬間だった。
 だって、寝るときに下着つけてると締め付けが気になって眠れないんだもん……。
「ほらほら、この下着穿いていいから」
「あとで持って帰るし」
「持って帰ってどうするんですか?」
「内緒だし」
「うぅ、また妙なデザインの下着を持ってきた……」
 こうしてボクはなぜか持参されている下着を穿かされ、ミニスカメイド服を着せられるのだった。

「で、どうしてこの下着なのさ」
「今回は下着に合わせるのが目的だし」

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