妖狐な少女は気ままにバーチャルゲーム配信がしたい

じゃくまる

第15話 サメゲームと漂流する狐白

ここ最近悩み事が増えてしまったけど、今日は気を取り直してゲームプレイ配信をしようと思う。
本来、ボクのチャンネルでは歌とか踊りみたいな疑似アイドル要素は考えていなかった。
だからというわけじゃないけど、友達がやろう! って言わない限りはボクからそういう配信をすることはできるだけ控えたいと思っている。
だってそもそもこのチャンネルは『真白狐白のまったりゲームチャンネル 』であって『真白狐白のアイドルチャンネル』ではないのだ。
主目的から外れた配信ばかりしていては意味がないと思うのだ。
「今日プレイするのはこれにしよう。でも映像は地味になるよね。仕方ないか」
選んだのはあの蒸気先輩で売られているあのサバイバルサメゲーム。
中々アップデートしない上に地味と名高いけれど、なんだかんだで時間を使って遊んでしまうゲームだ。

『真白狐白のまったりゲームチャンネル 』
「は~い、こんにちわ~。真白狐白のまったりゲームチャンネルへようこそ~。今日はローテンションでいっちゃうよ~」
ボクの配信はデフォルトの挨拶を設定していないので、その時の気分で挨拶が変わる。
『狐白ちゃんこんばんわ~』
『うぽつ~』
『うぽうです!』
『うぽつやで~』
『うぽつ!』
さっそく視聴者の皆が挨拶を返してくれる。
配信者にとってはこの一言だけでもうれしいものだ。
普通の動画配信でもこのコメントが貰えるだけでやる気が沸いてくる。
評価云々は後で付いてくるからそこまで気にしたりはしないけどね。

「今日は蒸気先輩で売られているB級映画みたいなあのゲームをやるよ。サバイバルサメゲームだ!」
『まじか、あれか』
『サメに食べられる子狐はよ』
『まな板の上の狐白ちゃん』
『あのサメゲームって? そんなのあったっけ?』
さすがにB級ゲーム。知らない人もいるようだ。
あのサンドボックスゲームは知らない人はあまりいないのにこの違いだ。
まぁ蒸気先輩にはアーリーアクセスゲームも多いから当然と言えば当然かもしれない。
「知らない人は見てのお楽しみ! きっとがっかりすること請け合いだよ」
ボクはそう言うとさっそくゲームプレイを開始した。

最初はちょっとしたオープニングシーンだ。
簡単に言うと、なぜこうなったのかを説明している。
なので、スキップだ。
「はーい、オープニングはとばしま~す。ばいば~い」
場所はあっという間に海の上。
きっと凄惨な出来事があったに違いないがボクは無慈悲に飛ばしたのだ。
足元は木の板一枚、手にはフック付きロープとご飯と水だ。
「丸太に捕まっている光景は映画とかでよく見るけど、こうも器用に木の板の上にバランスよく立っているのはなかなかないよねぇ」
『草』
『草』
『よくこんな板が沈まずに浮いてるな』
『絶対沈んでやらないという強い意志を板から感じる』

みんなが指摘する通り、どう考えても沈むであろう木の板の上にボクの操る主人公は立っていた。
最初に見えた腕とかから察するに成人男性であるはずだ。
この板、思ったよりも頑丈だ。

「んで、このフックをこう操って、樽とかの漂流物にひっかけると」
距離を決めて高さを決めていざ投擲! ひゅんっと飛んでいき、かつんと樽に当たり引っかかる。
「うんしょ、うんしょ。こうやって引っ張っていって、ほら回収できた」
拾得物は木の板や鉄くず、土や種といったものだった。
なぜ土と種。
「で、これを使ってなぜか作れる木づちにするっと」
クラフト画面を開いて木づちをクリックして作成する。
すると魔法のように普通の木づちが現れた。
「何もないところからなんと木づちが! チートだよね~」
ゲームの世界は非常に便利だと思う。
続けてこの木づちを使って土地というか足場を拡張する。
「それでこれを使ってフロアを選択して海面に合わせると足場が拡張できるっと」
トンカントンカン音が鳴ると足場の板が一枚増えていく。
「こういうのもなんだけど、すごくシュールだよね~。漂流する板が一枚増えていくだけってのは」
『どんどん拡張していこう』
『ひたすら安定しない板を増やしていくだけのシュールな光景』
『サメまだですか?』
『悲鳴まだですか?』
『悲鳴全裸待機』
「悲鳴を上げる予定ないはず!」
視聴者の皆には悪いけど、悲鳴を上げる予定はなかったと思う。
堂々とクラフトをして乗り切っていく姿を見せて絶望させてあげようじゃないか。

次々と漂流物を獲得していくとレベルが上がって作れるものが増え始めた。
新制作物である水を作る装置と食べ物を焼く装置の二つを早速作って設置する。
どうやって金属の鍋を作ったんだろうか。
何かを作るごとにボクはツッコまずにはいられなかった。
「鉄くずから鉄の網や鍋、ボールができる不思議! 一体どこで作ったの!?」
ゲームの世界は不思議でいっぱいだ。
『太陽光で焙って作った』
『手で擦って作ってる』
『たまたま鍋が流れてきた』
『実は魔法を使ってる』
『チートだ!』
抜粋だけでもこんな感じのコメントを見ることが出来た。
でもそんなに見てる暇はない。
目を離した隙にどんどん漂流物が流れていく。
「あわわわわ、急がないと」
そんなことを言いながらあたふた回収しているとサメが開放されてしまった。
『サメきたあああああ』
『サーメサーメ』
サメの登場でにわかに盛り上がりを見せ始めるコメント欄。
「君たちそんなにサメ好きなの? ふかひれでも食べたいの?」
なぜそんなにサメに期待しているのか。
ボクがサメに襲われると思っているならそれは大間違いというものだ。
なぜならどんどん足場を拡張するし武器を作って撃退するからだ。
視聴者の皆の期待を、ボクは裏切る!!

そう決意してから流れていく漂流物を回収し始めた。
いくつかはフックを投げないとだめだけど、そのほかは手で拾える位置を流れていく。
「お~、結構近くを流れてる。これなら拾える」
さくさくっと急ぎつつも漂流物を回収していく。
それでも間に合わず少しずつ離れていく物もあったので、少し移動してから拾得を試みる。
「にゃ!?」
拾おうと思って動いた瞬間、水の中にいた。
『落ちた!』
『にゃだって、猫かよ』
『狐白ちゃん、狐だから! 猫じゃないから!』
『にゃ、かわいい』
『サメきたぞー』
「あわ、あわわわ、ど、どうやって上がるんだろ……」
刻一刻と迫ってくるサメ、点滅して知らせる襲撃マーク。
焦ったボクはすぐに上がることはできなかった。
「ぴぃぃぃ、まってまってまって!? ええと、あ、できた!」
必死に板へとジャンプを試み、なんとか上がることができた。
間一髪だった。
『悲鳴助かる』
『最近いつも悲鳴あげてね?』
『狐白ちゃんの悲鳴いいわ~』
『もう少しでサメのご飯になるところだったね』
「サメのお腹の中で生活したくはありません……」
まさか落ちるとは思わなかった。
焦りに焦りまくってまともな操作が出来なかった挙句、もう少しでサメのお腹の中にINするところだった。
正直怖かった。
『よ~しよしよしよし、いい子だね~』
『怖くないよ!』
『ほら、サメはもう行ったよ』
『震え声配信おいしいです』
皆が優しいけど、ゲームとはいえど襲われるのは怖かった。
このゲームを甘く見てました、ごめんなさい。

「こほん。気を取り直して作業を続けますよ」
ちょっとだけ取り繕いつつ作業を再開していく。
少しずつ拡張していると、インベントリ内に銃のようなものと弾のようなものが見えた。
「これなんだろ? 銃みたいだし遠距離攻撃武器?」
幸い弾は二発ある。
試すか?
『それ救助用の信号弾だね。船や飛行機に自分の位置を知らせてアピールできるよ』
ふとそんなコメントが目に入った。
信号弾。
救助用? つまり脱出できる?
「おぉ~、ということはこれでクリアなのね! やったね!!」
嬉しくなったボクはコメントを見ることを忘れ、銃を手に取り弾を装填し、画面をじっとよく見てみた。
すると何やら遠くに飛んでいるものが見え始めてきた。
『お、飛行機やんけ』
『もう少ししたら撃って』
『良いものくれるよ』
「ふむ? とりあえず撃ってみるよ」
皆のコメントを信じてボクは銃を撃つ。
ターンという音が響き、赤い玉が昇る。
画面の一部が赤く点滅し、飛行機に何かを知らせているようだ。
さぁ、ボクを漂流から助けるのだ!!
そう思って見守っていると飛行機は何事もなかったかのように通り過ぎていく。
「あれ? 救助は? クリアは?」
『ないよ』
『物資投下してくれる』
『ゲームは続く』
「へっ? 何で救助じゃなくて物資投下なの!? このまま漂流つづけてね~、じゃあね~!ってことなの!?」
『yes』
『正解』
『このゲームは永遠に漂流するかいつか実装される島で鳥と戦い続けるものです』
「そんな~……」
コメントの内容は辛らつだった。
そしてゲーム内容も残酷だった。
永遠に漂流し続けるだけとか、辛いです。

こうして配信時間が終了し、今日の放送を終えたのだった。
救助される、クリアだ! と一瞬喜んでいたボクの気持ちを返してほしい。

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