妖狐な少女は気ままにバーチャルゲーム配信がしたい

じゃくまる

番外編① 子狐小毬は妄想する

あたしの名前は宮内杏みやうちあんず
子狐小毬としてvtuberをしている普通の女の子だ。
身長は残念ながら低く、148cmしかない。
当然体重も相応に軽いけど、若干胸が育っているので同じ身長の子よりは重いはずだ。
年齢は19歳で現在は大学生をしている。

「杏は今日もかわいいね~」
「ちょっと、やめてよ~」
あたしは今、一緒に通学している友達に猫かわいがりされていた。
猫かわいがりしてくる友達の名前は『田中美緒たなかみお』。
何の変哲もない普通の人間の女の子だ。
身長も高く165cmもあるし、胸もかなり大きい。
あたしから見ても美人だと思うし、周囲の男性もよく美緒ちゃんを見ているのを知っている。

「え~、でもこの明るめの茶色い髪とか可愛いよ? ちっちゃな杏子によく似合ってるし! ショートボブな感じも活発そうでよく似合う」
美緒ちゃんとあたしは十数年の付き合いになる。
きっかけは小学校だったと思う。
今あたしたちが通っている私立学園は幼小中高大と一貫しての教育を行えるちょっと変わった場所で、とある有力者が運営をしている。
学費は他の私立よりは安いので外部からくる人もいるにはいるが、難易度が高めなためほかの私立のようにたくさんの人が入ってくるということはない。
ちなみにあたしは『特殊総合科B』というクラスに所属していて、そこで芸術関係を専攻している。
未だにあたしを抱きしめている美緒は『映像研究総合A』というクラスで映像関連を学んでいる。
主には動画撮影や編集などをやりたいらしく、毎日学校に通っては高い機材を楽しそうにいじくりまわしていた。

「ねぇ美緒ちゃん」
あたしが声をかけると美緒ちゃんは「ん~?」と言って首を向けてくる。
「美緒ちゃんってさ、将来どうしたいの?」
あたしは今まで美緒ちゃんの将来については聞いてこなかった。
なのでなんとなくだが美緒ちゃんにそう尋ねてしまった。
「なはは。あたしさ、杏の力になりたいんだよね~。昔から一緒でしょ? まぁ杏のクラスが何をしているかまでは知らないんだけど、今やってるvtuberも無関係じゃないんでしょ? だからそれ関連で手助け出来たらな~って思ってるんだよね」
驚いたことに美緒ちゃんはあたしのためにいろいろ学んでいるらしい。
だからつい聞いてしまった。

「でもでも、vtuberなんていつまでも続けられないよ? もちろんそれ以外にもできることはあるから今勉強してるけど」
「なはは。その時はその時でしょ? それにあたしは杏と楽しく生きていければいいんだからさ。そういえばさ、vtuberでこの前可愛い子見つけちゃったんだよね。杏にも負けずとも劣らない子で名前は――」
若干嬉しそうにその名前を口にした。
「『真白狐白』っていう子なんだ。知らなかったら調べてみるといいかもね。ちっちゃい子ハンターのあたしオススメ」
それから校舎に着いたあたしは休み時間の合間に調べまくった。
まず、あたしの所属している夢幻酔にはそんな子はいないから、他社か個人のどちらか。
なので軽く検索。
するとすぐに出てきた。

「えっ!? この見た目ってまさか」
検索に出てきた画像を見る限り青銀色の毛色をした幼げな妖狐の少女だということが分かった。
ビビりで有名なちびっこ妖狐として認知されているらしい。
だけど、あたしが驚いたのはそこではなかった。
「これ、この姿って『暮葉』様!?」
どう見ても間違えようはなかった。
あたしが憧れてやまない妖狐の少女。
一般人なあたしでは手が届かない、声も届けられないくらいの高みにいる高貴な少女だ。
妖狐族の女の子たちの中では『夕霧家』に仕えることを夢見る子は非常に多い。
お給料もいいし休みも充実しているというのもそうだが、何より神々の末席に籍を置くあの方々の力と権力は強大で、共に過ごすだけでもその恩恵を得られるのだ。
専属のお世話係になった妖狐の子は力を吸収し、どんどん力が強くなったとも聞く。
妖精郷では力が強くなればなるほど得られる恩恵も多く、安定した暮らしを望むことが出来る。
もちろん当代の当主である天都様も人気あが、やはり末っ子の暮葉様が群を抜いて人気だった。
次点で次女の弥生様、長女の葵様だ。
長男の宗親様に至っては女性の募集はなく、男性の募集に限定されている。

「そっか、暮葉様なんだ。でも見た目だけ一緒かもしれないし。あ、でもこの表情は見たことあるかも。ということは本物? ツイッターはやってるみたいだし、失礼かもしれないけど子狐小毬としてDMを送ってみよう」
夕霧家の末っ子は非常に大切にされていると聞くし、本来ならそうそう姿を見ることなどできるものではなかった。
でもあたしは見たことがあるし、話したこともあった。
「もし覚えていてくだされば、あの夏祭り以来ってことになるよね。はぁ、会いたいな」
ときめく気持ちを落ち着かせながら、あたしは次の授業へと向かっていった。

それからわかったことだけど、暮葉様は実にのんびり屋だった。
DMも時々返事は来るけど、配信のお知らせ以外ではあまりツイートをしない。
そのほかには元山吹凛音お姉様で現真白凛音お姉様のコメントにはよく出没しているらしいこと、推しの一人にあたしが加わっていたこと、そして凛音お姉様の強い推しで無理矢理前へ出されていることが分かった。
あたしは途端に嬉しくなって、今まで控えていた暮葉様のチャンネルに思わずコメントをしてしまったくらいだ。
そのおかげかはわからないけど、暮葉様と前より会話することが出来るようになった。
頑張って勇気を出してよかったと思う。
よくやった、あたし! でも迷惑がられなくてよかった……。

まだコラボする日は決まっていないけれど、いつかは必ずコラボをしたい。
そして願わくば妖精郷でお目通り願ってお付きになれればうれしいなと思っている。
あ、でも、そうなると美緒ちゃんとお別れなのかな? そのあたりも調べなきゃいけないし、その時は暮葉様に聞いてみよう。
もしかしたら美緒ちゃんも一緒にいられるようになるかもしれないしね。

そうだ、今度人間界の暮葉様も探してみよう。
同じ学園にいるはずだし、弥生様も近くにいるはずだし。
うわー、楽しみすぎて興奮してきちゃったよ! どうしよう!?

こうしてあたしは子狐小毬としての活動をしながらも真白狐白ちゃんと交流していくことになる。
それは同時にあたし宮内杏が夕霧暮葉様と交流していくことにもつながる。
暮葉様はその時どう思うだろう? でも嫌がられらにように先に弥生様にお話を通さなければだめだよね。
そうと決まれば、すぐに行こう! あたしは授業が終了すると同時に弥生様探しに出かけるのだった。

「くふふ、暮葉様と一緒にいられたら何をしよう? はぁ~、妄想が尽きないよ~!!」

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