俺が拾ったのは捨て猫じゃなくて捨て高生だった
1、出会ってしまった(1)
「おーい!やまとぉ」
後ろからの元気な俺を呼ぶ声に振り向く。
振り返る速度が遅かったのか、こいつの足がバカ速いのか理由はよく分からないが、数十、いや100m近くは離れていたであろう距離は0に近く、俺の視界の全ては、大きく翼を広げた鳥のように両手を広げたこいつで埋め尽くされていた。
そして、「逃がさん」と言わんばかりに抱きついてくる。
腐女子が見れば多分、これは最高のシャッターチャンスなのだろう。
生憎それはおれにはよくわからない。
男女の違いという訳ではないだろう。
多分興味の問題だ。
自分の好きな物への共感は男女どちらであっても嬉しいものだが、 全く興味がないものになると自然と男女の違い、男女差別のようなことを気にするようになる。
それと同じ原理だ。
「おぇ。何だよ。急に体重乗っけてくんな。プラス首しめんな。余計死にそうになる」
「おっと。ごめんごめん。次天文学だろ?教室一緒だから一緒に行きたいなぁって思ってたら丁度いたからさ。ラッキーって。それと後もう1つ。まぁ、実を言うとこっちの方が本命なんだけどね」
こいつは細くてスタイル抜群。
女子がキャーキャーいう感じのやつで、服を着れば爽やか系で韓国アイドルのようだ。
しかし、本当は全身筋肉マッチョで、タンクトップ姿のときは上腕二頭筋?ってやつが盛り上がっている。
力もエグいため完璧体育会系なのだ。
そんなこいつのエグ筋から解放されると、大量の酸素が全身を巡る感覚がした。
こいつの筋肉は俺の呼吸すら止めてしまうのだ。
1呼吸おいて、体勢をたてなおし、歩きだした。
「はぁ。んで、もう1つの本命ってなんだよ。どうせつまらないことなんだろうけど」
────あ。
「お、やまとの方から聞いてくるとは。ようやく興味をもった?」
後悔した。
「やっぱなんでもない。聞かなかったことにしとけ」
取り消せない過去を無理やり修正する。
「もう無かったことにはできないよ。そっか、ようやくやまとも......」
言葉を発する前に、整理ができない状態にされると次に発する言葉について意識することが出来ず、言葉を選ばないまま、後先を考えることなく、思ったことをそのまま発してしまう。
俺の悪い癖だ。
しかし、その癖を約10年間の付き合いで見破り利用するこいつも悪いやつだ。
それにまんまと引っかかる俺も俺だけど......。
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