首吊り死体が呪う村、痣のスミレの狂い咲き

藤野

それは突然やってくる

「あたし……知ってるよ」
 結愛姉さんが静かにそう言った。


「縄垂らしはね、真夜中にやってくるの……。首を括った縄の天辺は千切れてだらんと垂れてる。毎日のお参りをしないと出てきて、首を吊らせて殺しちゃうんだって。
 ……しかもね、突然吊るされるから助けも呼べないんだ」
 内緒話をするように結愛姉さんは声を潜める。


「だ、だからって、あの二人も縄垂らしに殺されたんだとか言わないでしょうね」
 愛花姉さんが怒ったように言う。
「でも……」
 結愛姉さんがそう言ったっきり、皆が沈黙してしまった。


 縄垂らし。怪談話は『しちゃいけないこと』をしたら幽霊が出る設定のものが多いけど、なんでこれは参拝をしないとなのか。
 しかも、逢園村では毎日紫首神社に参拝しなくてはならないと言う決まりがある。
 これじゃあ、神様に毎日参拝しないとバチが当たるってことじゃないか。
 でも人が死ぬのならバチと言っていいほどの事ではない。バチと言うより罰だ。
 神様がそんなことを本当にするのか。
 神様なのに人を殺すのか。


 それは本当に神様……?


 別の荒々しい何かを祀っただけじゃないのか。僕は、僕達は、それに毎日参拝しているんだ。


 ——そう思うと、なんだか気持ち悪くなってきた。
 お母さんが皆に夕飯ができたから食べなさいと急かしている。
 食欲がない。
 なんだか、どっと疲れた……。

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