首吊り死体が呪う村、痣のスミレの狂い咲き

藤野

ニオイスミレの花畑

 学校の帰り道、僕は鈴子ちゃんと一緒に寺に寄った。すると、見計らったかのように茂さんが駆けてくる。
「おぉ、朝ぶりだな、香寿。お前らに見せたいもんがあるんだよ、ちょっと来い。鈴子もだ」
 訳もわからず頷くと、茂さんは背を向けて歩き出した。神社の左奥の方に向かっているようだ。
 生い茂っている木のあたりに、すっかり苔の生えた石畳の道がある。こんなところがあるなんて、知らなかった。


「鈴子は来たことあったよな」
 鈴子ちゃんがこっくり頷く。
「香寿、ここは紫霊しれい峠だ。ここをちょいと登って降りてくと、墓が沢山ある。ま、後のことは降りてから言うよ」


 そう言って茂さんは目線で来いと言うと、緩やかな階段を登った。その後に鈴子ちゃんが続いて、僕も登る。
 風があると言うものの、ちょっと蒸し暑い。両端を木に挟まれているのもあるだろう。


 ……それにしてもこの階段、長すぎないか。


 息を切らし始めたころ、茂さんが口を開いた。


「もうすぐだ」
 甘い香りがしてくる。
 階段のてっぺんまで来たんだ!


 鈴子ちゃんが茂さんのところまで走ったので、僕も急いで走る。


「ほら、綺麗だろ?」


 ぶわあっ、と爽やかで甘い香りが体全体を包む。見下ろすと、一面鮮やかな紫の花畑だった。

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