元天才選手の俺が同級生の女子野球部のコーチに!

柚沙

スライダー!



「…東奈さん、大丈夫ですか?」


俺が顔を上げるといつの間にか紫扇さんがグラブを持って目の前に立っていた。


「ん?あぁ、色々と考えててね。1年生達から色々と聞かれたり、話したりしたかな?」



「…ですね。けど、みなさん優しい人でしたよ。東奈さんからスカウトされたってみんな過去の話を聞かせてくれたりしましたよ。」



「スカウトも色々とあったからなぁ。今回は今回で色んな意味で大変だよ。」



今さっきまで意気消沈していたが、わざわざ俺の所までやって来てくれたのだ、何時までも凹んでる訳にはいかない。



「…私のスカウト大変ですか?ふふ。」


なにやら少し含んだ笑いをしている。
心無しか今日1番楽しそうにしている気もする。



「…私がだってことに気づきました?」



やっぱり俺が投手だと知らなかったのがバレていたんだろう。
テストされている本人からしたら、まずは投球から見てもらうのが普通だろう。


それなのに守備、走塁、打撃、投球の順は投手のテストだと順序がおかしい。



「ごめんね。監督達から何も教えて貰えず、勝手に野手だと思ってて。誤魔化しつつ能力を確認してたけど、何か足りないと思ってたら投手だったとはね。」



「…薄々気づいていました。私が投手と知っていたら投球のことに聞いてくるはずなのに、そこだけが抜けてたので。」



まぁ、女の勘は鋭いというかなんというか。

それでも俺の勘違いに何も言わずについてきたのは、俺を試していたのだろうか?



「…試した訳では無いんです。野手として合格できるか必死にプレーしたんですが、やっぱり東奈さんから見ると少し物足りなかったですよね?投手と知らない東奈さんにバレそうで逆にヒヤヒヤしました。」



くすくす笑いながら彼女はテストを楽しんでいたみたいだ。

実際のところ野手として能力はそこそこだったけど、出来る部分と出来ない部分の絶妙な違和感があった。


その正体が野手ではないという、そもそも根本から違うのに気が付かないようでは俺もまだまだだろう。



「…休憩も出来ましたし、そろそろ東奈さんも私の投球が気になってるんじゃないですか?」



「よくわかったね。それじゃ、ブルペンに…。」



思わずブルペンと言ったが、この合宿所は多目的グランドなのでそこまで立派なものはない。


「ブルペンとかないけど、平らな所でも投げられる?」



「…大丈夫ですよ。女子用の試合とかたまに中学校の校庭と使いますし、大丈夫ですよ。」



「2人とも、マウンド使ってもいいよ。今日は4時まで練習中断して、夕方から夜まで練習だから。」



そういえば今日の予定は聞いていなかった。

1日スカウト活動で潰れると思って、最初から俺には話をしてくれなかったんだろう。



「まぁそういうことだからマウンド使わせてもらおうか。」



そういうとゆっくり紫扇さんはマウンドにあがり、マウンドが自分に合うかを試しながら俺と軽くキャッチボールを開始した。



マウンドに上がるとなると、やっぱりキャッチャーの2人は俺たちの邪魔にならないところから見ている。


梨花もこういうことには関わらないタイプの人間だが、投手としてはやっぱり気にはなるのだろう。

エース争いをする可能性のある後輩を流石の梨花も気になってじっと観察している。



「晴風ちゃーん!頑張るッスー!」

「がんばれ!がんばれー!」


今から試合に上がる後輩を応援するような声援だが、紫扇さんは少しだけ困惑しつつも笑顔を返している。



「雪山ぁ!ちょっと静かにしろ!」


俺は困っている紫扇さんを助けるために雪山を注意した。



「なんでウチだけなんッスか…。美咲もうるさいのに…。」


「そりゃ沙依の声がデカすぎるからだよー。」



雪山は昨日あれだけ落ち込んでいたが、元々明るいし周りのチームメイトが、かなり気を使ってくれているようでよかった。



「…準備できました。それではよろしくお願いいたします。」



「こちらこそよろしくね。」



遂に彼女の投球がベールを脱ぐときが来た。


さっき監督が言っていたが、春の全国大会3回戦まで出たらしい。

もし今年夏の全国大会に出場出来ていたら、大会の真っ最中のはずだ。



夏の長崎県大会は勝ち上がらなかったのだろうか?


中学生だと野球の実力にかなり差があるチームが多い。
特に優秀なエースピッチャーがいるチームと、そうでないチームは相当な差が出る。

中学生の時は選手の酷使予防の為に、1日投げられる回数が決まっていて、延長戦になったり、ダブルヘッダーだったりすると投げることが出来ない。


どう負けたとかは後で聞けばわかるだろう。

今はマウンドで落ち着き払ってる紫扇さんの球を受けよう。




「…ストレートからいきますね。」



バシッ!



「ナイスボール!」



「おぉ!いい球投げる!」

「投げ方かっこいいッス!ウチもあの投げ方になりたいッス!」



まだ本気じゃないストレートにここまでワーワー、キャーキャー言っているとマウンドの紫扇さんも…。


マウンドに上がった紫扇さんは周りの音を全てシャットダウンしているのか、完全に集中状態になっている。



雪山の紫扇さんのフォームがカッコイイと言ったのは別におかしいことではなかった。


逆に投げ方のことを分からない雪山でも、分かるかっこ良さがその投球の完成度を伺わせている。


キャッチボールの時は遠くまでにボールを投げるためなのか、スリークォーターでボールを投げていた。


スリークォーターというよりもどちらと言うと、サイドスロー気味か?



スリークォーターはリリースする45度くらいの斜めからの投球スタイル。

完全に横投げで地面と平行なのがサイドスローなのだ。



角度的には70〜75度くらいだろうか?
スリークォーターよりもサイドスロー気味で、完全にサイドスローではない。


現代野球のサイドスローはクロスファイアを駆使しした、右対右、左対左に完全に特化した選手が多い。


彼女の投げ方はクロスファイアとしても使えるし、普通に左対右の対角線になる対決になっても勝負出来る投げ方にしている可能性が高い。


彼女のフォームの特徴は他にもある。
足をゆっくりと足を上げて、1度ピタッと止まってからもう1度足を上げなおす2段階フォームというやつだ。


そこからシンプルに踏み出して、投げてくるのだが、彼女は多分上半身の関節の可動域が相当広いんだろう。


普通の投手ならもう腕が出て来るタイミングでも、まだ腕が出てこない。

人間の肩肘の限界になってやっと腕がしなりながら出てくる。


リリースポイントも、かなりホームベース寄りのギリギリまでボールを離さずに、上手く指でボールを弾いて投げてくる。



『まだどんな球を投げてくるか分からないけど、このフォームだけ見ても簡単には打てないだろうな。』



ストレートが段々とスピードが上がっていく。

ストレートはオーバースロー、スリークォーター、サイドスロー、アンダースローの順番にスピードが出なくなっていく。



オーバースローは上から下に投げ下ろすから、縦のスピンがボール効いて、スピードも一番出やすい。

その点サイドスローは横から投げる為、どうしても縦回転の綺麗なボールを投げるのが相当難しい。



彼女がコントロールがいい理由はサイドスロー気味の投げ方にあるんだろう。

サイドスローはコントロールが安定しやすい。


彼女のストレートは、110km/hちょっとだろう。

それでもサイドスローにしてはボールがシュート回転していないし、ボールがおじぎせずに比較的真っ直ぐ来ている。


女子選手のサイドスロー投手は何人か見て来たけど、紫扇さんのストレートはかなり球質が綺麗だ。



「…ふぅ。」



力を入れると少し球が散らばってきたが、これは2週間投げていなかった弊害だろう。


彼女は本気で野球に取り組んでいるが、真剣にやっている選手の中でもしかすると練習量が1番少ないかもしれない。


理由はあるけど、肩肘の消耗は少ないかもしれない。

そこら辺も、彼女に後で話しを聞くしかない。



「…次は変化球投げます。球種は投げる前に言います。」


「いや、別に言わなくても大丈夫。好きに投げてくれていいなら。」



「…?そ、そうですか。」



これは俺のポリシーなのだ。
女子選手の球くらいはノーサインで捕れる実力が無ければ教えることなどできない。



バシッ!



「スライダーか。」


サイドスロー選手特有の横への変化が大きいスライダー。


左対左の対決の時は、クロスファイアで相手の背中から外角低めまで曲がっていくボールは、流石に現役の時でも打つのは容易なことではなかった。


スライダーのキレは悪くない。
変化量はスライダーにしては十分あると思う。



バシッ!



「これもスライダー。カットボール気味のスライダーか。」



次に投げてきたのも多分、スライダーだ。

カットボールとして投げているならカットボールだろう。

カットボールにしては変化量が大きく、さっきよりも横への変化量が落ちてスピードを上げてきている。



バシッ!



「スライダー…。次はスラーブか?」


またスライダー派生したスラーブ。
カーブとスライダーの中間のようなボールだから、スラーブと呼ばれているらしい。


サイドスローの投手がたまに使うボールだからか、頻繁に目にするボールではない。


俺はだが、カーブを直球のように投げるイメージ。

サイドスローでリリースする時に、手首を立てて指で横方向の変化をつけて、立てた手首で縦回転をつけて曲げたい角度を少し決める。



もしかして、次投げてくるのは縦のスライダーか?
あれはサイドスローで投げるのは相当難しいはずだが…。



バシッ!



縦スラ縦のスライダーか。サイドスローだから完全な縦のスライダーは無理か。」



今度は言葉通りの縦のスライダー。

縦スラは回転が結構特殊なもので、ジャイロの回転にサイドスローだから完全な縦回転をかけられずに、やや斜め方向に曲がっている。


完成度はぼちぼちでも、それでも縦の変化球を投げるのが難しいサイドスローで、しかも中学生でここまで投げられるのは凄いことだと思う。




「もう1回全種類のスライダー投げてくれる?」



「…わかりました。」



その後何回かボールを受けたが、ほとんど投げ方に差もない、リリースポイントが高い低いもない。

癖という癖は全く見当たらない。
気になるのは縦スラを投げる時にちょっと手首を無理に使いすぎな気がする。


手首も相当柔らかいのだろう。

居合道で鍛えられているであろう、手首と握力でこのスライダーを可能にしているけど、縦スラはある程度試合で球数制限した方がいいと思った。


手首に負担がかかる時は、肘にも負担がかかっていることがほとんどだ。
まだ中学生、高校生で肘を壊すような可能性の変化球は使っても制限しないとだめだ。

勝つ為には使う場面もあるかもしれないが、勝つ為に選手を使い捨てていい理由にはならない。



バシッ!



「スクリューか。悪くはないか。」


多分最後のスクリュー。

左のサイドスローの投手が武器にしやすい変化球の1つで、左投手なら左打者に対してはくい込んでくるボール、右打者に対しては外に逃げていく変化球。



姉も左投手だが、姉は高速スクリューを投げている。


同じ左投手でもオーバースローとサイドスローの違いがあるが、姉は変化量を落としてその分速さを求めていたスクリュー。


紫扇さんのスクリューは、お手本のような浮いてから大きく曲がる変化球。

あの鋭い4つのスライダーと比べるとだいぶ劣る気がするが、あのスライダーをチラつかされてからのスクリューは中々キツいものがある。



バシッ!!



「それでこのサイドスローとは思えないくらいストレートか。」



30球くらい受けてみて、かなりレベルの高いサイドスローの投手だと思った。


サイドスローはどうしても球のスピードが出ずらい。

女子選手となればそれが顕著になって、スカウトで何人かサイドスローの中学生を見たがみんな褒められるレベルではなかった。


言い方は良くないが、サイドスローというよりも横から投げているだけという方がしっくりする。


女子プロでもほとんどサイドスローの投手がいない。

サイドスローという文化があまりない女子野球で、これだけ投げられる紫扇さんを中学生が打てなくても不思議ではない。



「それじゃラストにしようか。」



「…はい。わかりました。」



紫扇さんにラストボールを投げるように言った。

紫扇さんもそれに頷いて俺に最後のボールを投げようとしてきていた。


ラストボールは何を投げてくるだろう?

紫扇さんは真っ直ぐで礼儀正しい女の子だと俺は思っているけど、なら最後はストレート?

あれだけスライダーへのこだわりがあるなら、1番普通のスライダーを投げてきそうな気もするが。



『ん?カットボールか?』



横回転でこれまで投げてきたスライダーよりは速い。

高速スライダーじゃなく、ここまで投げてきてないカットボールか?



ホームベースの少し手間。
ここから少しだけ曲がってきてバッターがうち損じる。

一番最近でいうと右田さんのあの空振りも取れるカットボールは凄かった。



俺は少し曲がってくるはずのカットボールを待っていた。



「!!!」



一瞬ボールが止まったような気がした。


変化球は本当に一流が投げる球は一瞬ボールが止まったような錯覚から、目の前から消えるような変化をする。



彼女のこのスライダー?は、これまでの変化球がお遊びだったと思うくらいのキレの良さで曲がってきた。


気を抜いていたのもあったが、一瞬このスライダーは捕れないと思った。



パスッ


どうにかギリギリのところでミットを下向きに切り替えて、ワンバウンドした所をキャッチした。



「あ、あぶなかった。」



俺は自分にノーサインで女の子の球なら余裕で取れるとか言っていたが、まさか中学生の変化球を落球するところだった。



「…残念です。このボールなら落とすかもと思ったんですが…。」



俺が捕ったことを褒めるよりも先に、捕られたことの方がショックのようで肩を落としている。



「今のボールは、スライダー…?」



「…そうです。チームメイトはDisappearing slider。消えるスライダーって意味らしいんですけど、略してディサピアって呼ばれてます。普通に恥ずかしいんです…。」




確かに消えるスライダーっていうのは何となくわかる。

一瞬ボールが宙に止まったような感覚から、急激に曲がるあのボールは消えるスライダーだ。



「ディサピアか。いいんじゃないかな?それよりもあのボールは一体どうやって?」



「…変わったことは無いですよ?ただ、スライダーの握りで、縫い目の半分を人差し指にかけて、ほぼ人差し指右半分だけで押し出すように投げるとさっきの球が投げられたんです。」



なるほど。
ちょっと教えてもらった通りにサイドスローで投げてみたが、普通のスライダーだ。


変化球は特に人に教えるのが難しい。

姉の変化球を真似るのも教えてもらったが、全然出来なかった。

自分なりに試行錯誤して姉と同じボールを投げられるようになった。


だから、軌道や変化量、スピードは似ているが厳密に言えば、同じ球ではないし、投げ方もほんの少し違う。



それにしてもこのボール人差し指に相当負担がかかる。

かなり指の力もいるし、一試合でそこまで多くの球数を投げられる訳では無いのか?



「…多分お察しの通り、1試合に投げられても5.6球ですね。しかも、今さっきのように曲がるかどうかは五分五分という感じです。もうひとつ言うと、雨が降ってるとこのボールは投げられません。」



そうだったのか。

それはあれだけのボールがガンガン投げられるなら、多分全国大会決勝辺りまではいけるだろう。

あのボールに頼ったリードをして、普通のスライダーが来た時は神に祈るしかないのか。


雨の日に投げられないのは、少しでもボールが滑ったり、指にボールがきっちりと引っかかっていないと投げられないということだろう。



「ディサピアだっけ?あの消えるスライダーが無くても、紫扇さんはいいサイドスローのピッチャーだよ。」



「…ありがとうございます。私は東奈さんはピッチャーだと思ってましたけど、キャッチャーだったんですね。」


東奈光の弟なら投手と思われても仕方ないだろう。

実際キャッチャーが主でピッチャーもやってたから間違いではない。



「…キャッチングがこれまで受けてもらったキャッチャーと違いすぎてなにが優れてるか分かりませんでした。」



ここまで褒められると中々悪い気もしない。

コーチをしていて、野球能力を褒められることなんてほとんどない。




「それじゃテスト終わりだね。お疲れ様でした。クールダウン一緒にしようか?」



「…はい。お疲れ様でした。久しぶりの野球とても楽しかったです。」



口調はとても丁寧だったが、顔は爽やかな笑顔でとても満足そうだった。

彼女の野球の能力もそうだが、野球に対してこれだけの愛がある子が野球を辞めてしまうのとても勿体ない。


それは上木さんにも言えることだが、どちらも是非うちに欲しい選手だ。

けど、野球さえ続けてくれるなら別にうちでじゃなくてもいいとさえ思っている。



「本当に2人とも野球続けて欲しいな…。」



「…何か言いましたか?」



「あ、いや。気にしなくても大丈夫だよ。」



俺は紫扇さんのクールダウンとストレッチを手伝ってあげていた。


「んっ。ちょっとこそばゆいです。」


最初に断わっておくが、ちゃんと紫扇さんに触っていいか聞いて、了承を得て体に触れている。



「身体も相当柔らかいけど、関節の可動域が凄いね。だからあれだけのサイドスローが出来るのか。」



「…これは居合道のおかげですね。元々そこまで柔らかい訳ではないんです。居合道は正座をしたりすることが多くて、鍛錬も長いと結構辛くて…。6年前くらいから毎日朝夜しっかりとストレッチするようなってからこの体になったんですよ。」



体が柔らかいのはとてもいいことだ。

かなり怪我しづらくなるし、実際、素晴らしいサイドスローを実現出来ている。



体が硬いととにかく怪我するリスクも増える。

なら絶対に大成しないかというと別にそういうことでもない。
ただ、柔らかくて同じプレーができるなら柔らかい事に越したことはない。


柔らかくするにはとにかくストレッチを毎日続けて、出来るなら酢を飲んだ方がいい。


酢を飲んで毎日1時間ストレッチをすれば、半年も経った頃には前屈が一切できなかった人でも、かなりペタッと体がつくまでなるらしい。


これは姉が体が硬かった時に、知り合いの新体操部から聞いてきたから間違いない情報だろう。



「…東奈さんは女子野球部のコーチをしてて楽しいですか?」



「楽しいかどうかか。はっきり言えば分からないね。けど、やりがいはあるなと思う。コーチ初めて…4ヶ月ちょっとかな?それだけでも成長してる選手はいるからね。」



「…私もコーチになったり出来ますかね?」



「紫扇さんはいいコーチになるかもしれないなぁ。礼節も弁えてるしね。教える上手さも必要だと思うけど。」



「…ふふっ。将来は居合道を教えながら少女達に野球も教えたりしたいですね。」



そういうのも悪くないもないなと思いながら、ストレッチを続けた。



「………。今日はありがとうございました。野球…楽しいですよね。」



「紫扇さん、やっぱり野球続けなよ。白星とか友愛じゃなくて近くの高校でも、弱くても強くても野球は野球だからね。」



「…………。」



「確かに居合道も素晴らしいものだった。けどね、紫扇さんのその野球愛も実力も今失ってしまうのは寂しいかな。」



「…そう…かもしれませんね。」



紫扇さんはまだ悩んでいるようだ。
今の俺にはこれ以上なにか彼女にしてあげられることは無い。



『俺がもっと強引に誘えたらな。』



心の中でそう思うなら実行に移せばいいのにと思う俺であった。




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