元天才選手の俺が同級生の女子野球部のコーチに!

柚沙

不信感!





円城寺の美味しい弁当を頂いて5時限目は国語だったけど、俺はもう1人の資料を見れていなかったので先生に悪いと思いながらもう1人の資料を見始めた。






佐藤・ローラン・アリス。




左投左打のファースト兼外野手。
169cm.65kg。




帰化したフランス人夫婦の子供らしく、本人はハーフっぽい名前をしてるが、完全にフランス人らしい。
元々アリス・ローランという苗字と名前を帰化した際に佐藤と苗字を付けて、元々の苗字のローランをミドルネームとした。




顔写真を見る感じ金髪の青い目という感じではなく、少し薄い感じの明るめの黒の目と、髪の毛は綺麗な茶髪という感じだ。
目鼻立ちはしっかりとしていて凛々しいという感じの印象を受ける。






「それで、プレースタイルはと…。」






長打力は結構ありそうだが、タイプは完全に好打者。




好打者?
体格も良くてパワーもありそうだが、打撃のタイプは好打者なのか。


身体がでかいから球が速い、パワーヒッターという訳でもないから別におかしくないが、好打者と言っても氷レベルだったら即戦力だが…。


一塁手、外野手共に守備力は普通の中学生と比べると同じくらいで、それ以上でもそれ以下でも無いので過度な期待は出来ない。




足の速さも平々凡々。
打撃能力が高いタイプなんだろうが、監督はなにかを感じたのだろう。
この文面だけ見ると確かに体格がいい外国人の好打者ということしか伝わってこない。


しかし肩は滅法強くて、120km/h以上は確実に出ているが、コントロールが壊滅的に悪く投手は今のところ厳しい。




「んー。」




この選手に関しては早く映像を見ないと分からない。


なにかピンとくるものがあるかもしれないし、未完の大器という感じかもしれない。
とりあえず早く映像を見たい。
こんな国語の眠たくなる授業を受けてる場合ではなかった。




最後の最後に気になる文章が。




「性格に難あり。」






???






「おい…。なんか来年の新入生は性格に問題あるやつしか居なくないか?」






氷の妹はまだわからないが、練習見に来いという本庄さんに、スカウト第1号の前島さんに、佐藤さん。


まさかとは思うが、もう1人の今長谷さんは大丈夫だろうか?書き忘れていてそっちも性格に難アリの可能性は大丈夫なのか?




俺は野球の実力はあるけど、問題ばかり持ち込みそうな新1年生をどうしようか今から気が重くなってしまうのであった。






「ね、ねぇ。どうしたの?ちらり。」




「氷か。これ特別に見せてあげるから見てみて。」






氷にとりあえず資料を渡して、それを面白そうにゆっくり眺めているが時折微妙な顔をしている。
氷でもなんとも言えないところがあるのだろう。






「わかんない。とりあえずスケールはでっかいのかもね。はてな。」






とにかく今長谷恋と佐藤アリスは入学してから楽しみにしておこう。
映像は確認するが、本人がどんな人かわからないからそこらへんも少しでもまともな女の子達が来ることを願うばかりだ。






「東奈さん。それでは向かいましょうか。」






円城寺は先輩を待たせるということをしたくないのか、昼休みも学校が終わった今もすぐに目的地に行こうとしていた。






「東奈くん、緒花ちゃんまたねー!私もランニング途中で選手見つけてくるね!」






「夏実また明日ね。あんまり夜遅くまで走ったら危ないから気をつけるんだよ。」






「はーい。じゃぁね!」






夏実もついてくると言うかと思ったがそそくさと教室を出て帰ってしまった。
円城寺と2人で歩いていて思ったが、2人とも身長が高いので学校内を歩くとかなり目立って中々生きた心地がしない。




駅に着いても同じ学校の人から見られるということは、他の学校の生徒からもかなりの視線を感じる。






「2人ともお待たせ。やっぱり身長高い2人が一緒にいると目立つし、なんか2人は様になってたよ。」






「あんまり恥ずかしい事言わないでください。早く行きましょう。」




円城寺は恥ずかしそうにしてるし、進藤先輩はその様子を観察するように見ていて少しだけ笑ってくれていたから一安心した。






「進藤先輩ってバランスいい選手ですよね。中々俺が近づくて指導するの嫌と思うんですが、なにかこうなりたいとか理想の選手像とかありますか?」






「んー…と…。打てるようになりたいかな…。橘さんみたいな豪快なホームラン打ってみたいかも…。」






意外だった。
結構バランスのいい選手のイメージで性格的にも堅実かと思ったが、案外夢を見るプレイヤーなのがわかって少しだけ嬉しかった。






「パワーヒッターになってみたいんですね。冬トレの参考にさせてもらいますね。」






「む、無理しなくて大丈夫だから…。なれたらいいなくらいだから…。」






「目指すのは選手の自由ですよ。絶対に無理なことはやらせませんけど、進藤先輩は元々長打力あるみたいですし、それを更に鍛えていくのはいいと思います。」






俺がパワーヒッターになってみたいという進藤先輩の希望をあっさりと聞き入れた俺に少し驚いた表情をしていた。
俺の事をどう思ってるかわからないが、俺はその選手が目指したい選手像を馬鹿にしたりしない。




徹底的に欠点を消すというやり方も無くはないが、それをやって無個性にしても面白い選手にはなれないし、本人も教えている方も見ている方も面白くない気がする。






それなら個人個人の理想の選手を目指してもらうのがいいんじゃないかなと思っている。






進藤先輩と円城寺は2人は系統は全然違うが、かなり綺麗と可愛い所が2人と男の俺が1人、顔は普通で少し周りから見ると怖そうに見える大湊先輩。






「東奈くん。ちょっと私の方見てこの2人と比べただろ?別に怒ったりはしないが、この2人と比べられるのは流石に酷だと思わない?」






「あ!すいません!悪気はなかったんですけど、俺も釣り合ってるとは思えないから仲間ですよ?」






「慰めてるんだろうけど、慰めになってないからね?」






それを聞いていた2人はにこやかに笑っていた。


この2人が毎日泥だらけになって必死に練習してるとは思えないけど、2人とも肌のケアはしているだろうが、やっぱり肌が少しだけ黒くなってるのは仕方ない。




逆に大湊先輩は元々地黒なのか結構黒くなっている。


褐色と言われればそれくらい黒いかもしれない。
精悍な顔立ちとそこそこ鋭い目つきでキツい印象を持たれるかもしれないが、性格はみんなに優しく時に厳しく出来るいいキャプテンになれると俺は信じている。






「あ、あ、の…東奈くんは…コーチとして…私たちのことどう思う?」






「選手としてですか?チーム力の事ですか?」






「どっちも教えてもらっても…いいかな…?」






「チームとしては悪くないバランスだと思いますよ?ただ、気になる点は足を使える選手が今のところ凛やかのん、2年でいえば大湊先輩しかいないですよね?だから、足を生かしたチーム作りは難しいと思います。」






みんな俺のチームのあり方の話をし始めた途端食いつき方が異常だった。


大湊先輩はともかく、円城寺と進藤先輩はポジションも被ってるしどちらかはレギュラー落ちするだろうし、他の選手がサードにくい込んでくる可能性も全然ある。






「チームとして目指していくなら守備型のチームがいいかな?海崎先輩、梨花の2人はいい投手だと思いますね。大湊先輩も元投手から野手転向してますよね?そういえば剣崎先輩も最初は投手で1週間で辞めたとか聞きましたけど。」






「そうだねー。投手に未練がないとは言えないけど、詩音からエースを取るというビジョンが持てなくて去年の夏終わって辞めちゃったね。元々ショートも守ってたから必死に練習したね。」








「そうですよね。投手力を全面に押し出してきっちりと守り勝つって野球が出来れば準々決勝くらいまでは安定して上がれそうですけどね。けど、最低限の打撃は必要ですよ?じゃないとこの前の試合みたいに抑えてるのに、打てずに焦って守備で自滅する試合も有り得ます。」






俺はこの前の試合を振り返って話をした。
あの試合は最終回の守備が余計だったし、あれが勝負を決めたと俺は思っていた。






「大湊先輩の走塁はよかったですよ?あの試合は右田さんにやられたと思ってるかもですけど、2年のキャッチャーの二ノ宮さんにやられた。来年も勝ち上がればあのコンビと戦う可能性あるから、その時に負けないように鍛えはしますよ。」






そのようなことを話しながらこれからのチーム作りや、練習試合とかあのプレーが良くなかったなどを話したし、逆に質問も受け付けてそれについて答えた。








「なんかずっと話してたら球場に着いたね。」






去年ここのチームの選手はスカウトしなかったが、油布美紅さんのプレーを見るために確認しに来て結局見ることが出来なかったが、やっと練習で彼女の能力を確認することができる。








「あー!進藤先輩じゃないですか!チッス!」




そう言ってこんがりと焼けた肌に女性とは思えないくらいしっかりと鍛えられた身体が見え隠れしている。
髪の毛も短くしており、髪型も男としては長いくらいのショートヘアーがその男っぽさを際立たせている。






「えー!桜さん!久しぶりに会うけど可愛いですー。」


「あの人が桜先輩ですか!?噂通りの美人さんですね!」






このチームでは進藤先輩の話を日頃しているのか、進藤先輩を気づいた現3年生が続々と集まってきて楽しそうに話を始めた。
1.2年も話を聞いているのか後ろの方で進藤先輩の方をみて可愛いとか美人とかうっとりして観察している。




俺たちは無理に参加することなく、近くでその様子を見たり俺たちは俺たちで話していたりしている。






「東奈くん。ちょっといいかな?」






俺は進藤先輩に呼ばれるとあんまり近づきすぎないように少し離れたところで止まった。






「この人が私達白星高校のコーチをしている東奈龍くん。今高校一年生で私たちに色んなことを教えてくれてるんだよ。私はとても信頼出来るコーチだと思う。けど私が男の人怖いからまだ指導はしてもらえてないけど…。」








「おうおう。あんたが女子野球部のコーチなんだよな?高校生で野球部にも入らず、女子野球部のコーチしてるって怪しくね?進藤先輩本当にありがとうございました大丈夫っすか?普通に考えたらおかしいと思うんだけど。」






なぜか一個下の女の子達は俺がコーチしてることにやたら突っかかってくる。


去年はあんまりそこの話をすることが少なかったが、ほぼ初対面におかしいとか変態だとかマイナスな印象からのスタートになるのか…。






「どうも。初めまして東奈です。まぁコーチしてることはおかしいと思うのは分かるよ。あんまりペラペラ話すの好きじゃないんやけど、俺が野球をやめた時にプロ野球選手の姉の東奈光にここのコーチするように言われたんだ。それで、コーチをすることになった。納得できるかな?」








俺はこの事実を隠しながら、嘘を言うのも面倒くさくなったし、本当のことを言えば大丈夫だと思ってこれから話す事した。






「あの東奈の弟?苗字も同じだし福岡出身か。信じてもいいけど、それだけでコーチになるっておかしくない?コネってやつ?そういう逃げ道なの嫌いなんだよ。」








俺と話せば話すほど俺に対して少しイライラ募ってるし、不信感も大きくなってきている。


隣ではこんなことになると思っていなかった進藤先輩がオロオロしているし、円城寺も俺の事を馬鹿にされて少し怖い表情で油布さんを睨みつけている。




大湊先輩は完全に俺に任せようとしてる。
これは俺のスカウトだから俺がどうにかしないといけないのは当たり前なのだ。








「あんまり女の子と勝負するの嫌なんだけど、久しぶりに分からせてあげるよ。力抜いてやって欲しいなら力抜いてやるけど?」






「はぁ?ふざけるな。私がどんな選手か知ってて言ってるのか?」






「去年は怪我しててプレーも見てないけど、コーチとして選手よりも劣ってたら話にならないよね?」








「くっそ!女子校にコーチとして入って好き放題しようとしてるその腐った考えぶち壊してやるよ。」








なんか俺が変な方向に悪者になってるんだが?
しかも中学生みんなが今の言葉で敵意剥き出しにしてくるのはやめて欲しい…。






こんなことになるのと思っていなかったが、どんな選手か知らない油布さんと勝負することになってしまった。




この後、監督さんが来た時に事情を話したら苦笑いしながら、ごめんねと謝られつつ相手してあげてと逆にお願いされた。








「はぁ…桔梗ちゃんとかならまだ百歩譲っていいけど、能力も知らない中学生の女の子と勝負する為にコーチしてるんじゃねぇんだよなぁ…。」







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