元天才選手の俺が同級生の女子野球部のコーチに!

柚沙

問題児!





「たまたまバスで30分くらいのところでよかったな。」






「ホントだよー。時間かかっちゃったからね。けど、なごみちゃんスポーツ少女って感じの風貌だったけど喋られないって辛いだろうね…。」






「そうやね。けど、それでもあれだけ技術を磨いて頑張ってる選手おらんくない?凛は尊敬出来るんやけどね。」






凛は尊敬出来て、美咲は可哀想という全然違う印象を抱いたみたいだが2人とは上手くやれそうな感じはする。




やっぱり喋られないというのはみんなの協力もいるし、理解がいる。
スカウト成功したと思っているが、正式になにも言ってないから断られる可能性もあるし、他のチームメイトにも出来れば合わせてあげたい。






「なごみちゃんみたいな選手の後に前島さん見に行くの凄く可哀想な気がする…。」






「まぁあんな色んな意味で詰め込みまくった選手の後に、オールラウンダーの選手は仕方ないっちゃない?その選手が霞むかもしれんけど、ちゃんと実力を見定める力を東奈くんは持ってるし大丈夫っちゃないと?」






凛の言う通りだ。


確かに彼女のインパクトのせいで次のバランスがいい選手を見ると物足りなさは感じるかもしれないけど、その子がいい選手だったらいい選手という評価は変わらない。




俺が今1番考えてるのは今の2年生が抜けた時に、穴になりそうなポジション。


投手は海崎先輩、梨花の右左のエースとキャッチャーでピッチャーの出来る七瀬と美咲だけはちょっと投手の層が薄いかもしれない。




キャッチャーは柳生、七瀬の2人がいるし七瀬の頑張り次第ではいいキャッチャー2人居ることになるからキャッチャーは先々のことを考えてら1人だけでも大丈夫だろう。




ファーストには桔梗がいる。
まず1年生で桔梗からレギュラー取れる選手はうちには来ないだろうし、野手の優先度的には1番低いポジションだろう。




セカンドはかのん、美咲、月成が守れる。
主にはかのんがセカンドのレギュラーをしっかりと確保するだろうけど、あのタイプは1度スランプになると抜け出せないだろうから1人はバックアップは欲しい。






サードが薄いところにはなるのだろうか?
月成、美咲、円城寺の3人が守れるがもう少しだけみんな頑張らないといい一年が入ったりした時はレギュラー争いに負ける可能性がある。




ショートも新キャプテン大湊選手がいるが、抜けたあとは月成、美咲とか雪山とかもいるがメインポジションでは無いからここにもいい選手は欲しい。






とりあえず外野手は、夏実、凛、氷、などがいるが外野手の層も薄いかなと思う。
2年生では剣崎選手、瀧上選手、遠山選手など上手い選手達が外野に揃ってるためいなくなった時に薄さが目立つ可能性がある。






左から優先してスカウトしたいポジション。
投手、外野手、ショート、サード、セカンド、キャッチャー、ファーストの順番だろう。




上木さんは外野手兼投手というドンピシャだからこそ更に魅力に感じた。






「確かあの球場だったと思う!レッツゴー!」




自信満々な美咲の後ろを凛と俺は後ろからゆっくりと着いて行った。
凛と美咲はあんまり話してるところを見たことがないが、さっきまで楽しそうに話しているところを見ると俺が見てるところ以外でも女の子には色々とあるのかもしれない。






「凛と美咲が仲良くしてるのそんなに気になると?練習中は話さんけん知らんやろうけど、仲良いとよ?」




「女の子には女の子の付き合い方があるんだよー。龍くんもコーチならそういうところをしっかりと見極められないとね。」






無茶言うなと思いながらも適当にはいはいと返事をしておいた。
美咲は俺がその気がないのに気づいたのかちょっとむくれていた。






「前島さんか。去年のデータと比べてみてもかなりいい感じに上手くなってるな。守備練習見てる感じだとバック走が早くて体の入れ替えも上手くなってるし、球際にも強いからいい外野手になってるね。」






凛と美咲は彼女の守備をじっーとみていた。
凛は外野だし、美咲も最近は外野手にも挑戦してるから技術を盗もうと真剣に後輩のプレーを見ている。






「守備上手いなぁ。龍くんが守備上手いから色んなポジションやってるけど、外野手ってこれまでと全然違って難しいんだよね。舞先輩と私じゃ足の速さも変わらないし、肩は私のが強いのに実際に守備すると倍くらい守備範囲違うんだよね…。」






「わかるー。硬式の打球の伸びって凄いっちゃんね。桔梗とかとんでもない打球打ってくることあるから対処するのにやっとって感じなんよね。舞先輩は難なく処理してるからやっぱり違うなって思う。」








2人とも瀧上先輩の外野守備の凄さに気づいていた。
あれを平然とやってるから分かりずらいだけで、同じポジションを守ってみたらその凄さが分かっているのだ。








「瀧上先輩に色んなこと聞くといいよ。瀧上先輩なら教えてくれると思うし、それ会得するのは瀧上先輩が引退して普通にいなくなってる頃だと思う。」








ライバルには塩を送らない人もいるが、瀧上先輩は何故か友達が少ないみたいなので、頼られたら多分喜んで教えてくれる人だと思う。






「ねぇ、美咲あの選手の打撃フォームよくない?」


「えー?そう?もっと大きく振った方がいいと思うけどなー。」




2人とも野球が好きなのだろう。
色んな選手のいい所や悪い所をあれやこれや話し合っている。






俺も全体を見ながらいい選手が居ないか見ていたが、投手がそこそこという感じ以外はみんなバランスがいい選手が多い。




その中でも高い次元でバランスが良さそうな前島さんはいい感じな選手だと思うし、守備型の瀧上先輩に似たような外野手という評価が妥当だろう。




「それで、東奈くんは前島さんスカウトすると?」






「うーん。ありだね。けど、ちょっと困ったこともあるからなぁ…。」






「???」






2人とも俺の考えてることは分からないだろう。
俺も去年ならそんなこと考えなかったが、1年経つと少しは色んなことを考えるようになるものだ。






彼女の特待生のランクが困る。


Aは流石に物足りない気がするし、Bで来てくれるなら喜んできてもらいたいがBだと白星には来てくれないような気もする。






打撃練習を始めてそのまま打撃もチェックしたが、どうよく評価しても美咲と並べるかどうかというようなレベル。


そこそこ飛ばす力はありそうだが、マシン打撃でゴロ打ったり、フライあげたり、詰まったり、先っぽに当たったりとかなりバラつきが目立つ。




これには美咲と凛も微妙な表情をしている。
彼女達はライバルになるということよりも、完全にスカウトとしての目線になっているのが可愛く見えてくる。






「うーん。打者としてはイマイチなのかな?」


「そうやろうね。凛も今は人のこと言えんけどこんなに酷くない気がするんよね。」






中々辛辣な評価だが、概ね俺も同じ評価だから守備型の選手としてスカウトして、もし成功したらその時に打撃指導してみたらいいか。






前島柚季まえしまゆずき


中学生としての評価。


推定身長体重162cm.53kg
右投左打の外野手。




打撃能力




長打力 40
バットコントロール 25
選球眼 不明
直球対応能力 25〜30
変化球対応能力 20〜25
バント技術 40
打撃フォーム
ややオープンスタンスで、少し振り回し気味。
踏み込んでスイングする時に体の開きが結構酷く、ボールを捉えられていない。


守備能力


守備範囲 80
打球反応 80〜90
肩の強さ 50〜55
送球コントロール 70
捕球から投げるまでの速さ 50
バント処理 外野手の為不明。
守備判断能力 90〜95
積極的にカバーをしているか 不明




走塁能力


足の速さ 50〜55
トップスピードまでの時間 60
盗塁能力 不明
ベースランニング 40
走塁判断能力 不明
打ってから走るまでの早さ 不明
スライディング 70






守備型の評価になっている。
ここには評価ポイントはないが、球際はしっかりと捕球して落とさないし真後ろの1番難しい打球の反応も素晴らしいものがある。






「よし。行くか。」






俺はいつも通りに監督らしき人に挨拶をしてペコペコと頭を下げて、選手とお話出来ないかというのを頼み込む。
俺は顔が広まってるので話くらいはさせてもらえるが、上手くいくという訳では無いのはこれまで痛いくらい分かっている。






「こんばんわ。スカウトの方ですか?」




「初めまして。白星高校でコーチをやってる東奈龍です。後ろにいる彼女たちは白星の1年生で右の人が中田美咲。左の人が王寺凛。」








「「こんにちは。」」






「単刀直入に聞きますけど、私の長所と短所を教えて貰えませんか?」






「んー。打撃ははっきり言って改善の余地しかないくらい上体の使い方がよくないね。けど、守備は高校生でも結構上手いレベルだと思う。」






俺はこういう時は包み隠さず言うのが俺の鉄則だ。
あんまり気を使って持ち上げても本人が納得しない時ももちろんあるから、そういうことがあるくらいたら最初から本当のことを言うのがいい。






「あはは!正直な人。私は特待生として白星高校に行ってもいいですよ?けど、あなたや監督の指導は聞かないですけど大丈夫ですか?自分がしたいようにします。それで試合に出れないなら仕方ないと思います。」






うーん。


思ったよりも結構問題児感があるな。
だから、こんなに打撃がイマイチなのか。
監督もこんなフォームでほっとくとは思えなかったが、多分全く指導しても話を話を聞かないからこんなに事になっているんだろう。






「ちょっと聞いてもいいかな?」






「はい。なんでしょう?」




美咲が彼女に質問をしようとしている。
どんなこと言うかは知らないが、なにやら嫌な予感がする。






「選手としての気持ちは分からないこともないけど、指導者のことをどう思ってるの?」






「指導者ですか?別になんとも思ってないから指導されたくないです。野球やってるのは私なのになんで人の言うようにプレーしないといけないんですか?もしそれで私のプレーが崩れたら責任とってくれるんですかね?試合に勝つためにバンドとかのサインは従いますけど、そこまでの過程は好きにやらせてもらいます。」






「それで通じると思ってるの?百歩譲って指導者の話を聞かなくてもいいけど、チームメイトがそれを見て本当の意味でチームになれると思う?」






「チームですか?野球はほぼ個人技ですよ。自分がやることをしっかりやって全員がそうれば勝てるし、負ける時は力が足りないだけです。」






「そんなことなんてない。そういう気持ちじゃなくて、絶対に負けないという気持ちを持って、チームメイトを信頼して試合に望むことでいつもの実力が出せると思ってる。」






「そんな精神論は聞きたくないですね。スポーツは精神力とかそんな事を言ってるからいつまで経っても何かに縋らないといけないんですよ?」






「それなら本当の個人種目をやったらどう?個人競技する自信がないの?」






2人の言い合いは白熱していた。
初対面とは思えないくらいお互いに言いたいことを言い合っていた。
凛と俺は口を挟むことなく2人の言い合いを黙って聞いているだけで、思うこともあるがここは美咲に任せてみようと思った。






「はぁ…。龍くん流石にこの子をチームメイトとしてみんな受け入れてくれないと思うけど…。」






「そうですよね。話が終わったなら練習に戻りますね。」






「前島さん、さっきスカウト受けてもいいって言ったよね?それなら是非白星高校に来て。」






「え?」






前島さんはここまで顔色一つ変えなかったが、ここは流石になんでという顔をしていた。






「俺の指導なんて聞かなくても別にいいよ。その代わりに試合中は俺や監督のサインには従ってくれるんだよね?後、練習内容無視して1人で打撃練習とは出来ないのは分かってくれる?練習内容にはちゃんと従ってもらって、試合も従ってもらえば別に俺や監督指導を聞かなくてもいいよ。」






俺はあっさりとそう言い切った。
彼女にとっては最高の条件だろうが、かなり躊躇している感じを受けた。






「その代わり来年1年は外野手を多めに取ろうと思ってるし、俺の指導でどんどん上手くなる1年生に負けてもそれは文句言い合いっこ無しで。指導して欲しかったらその時はちゃんと頼んでくれたら教えるから。」






「なるほど。私が他のチームメイトに負けてあなたに結局指導してもらいに行くってことですか?有り得ません。けど、いまさっきの条件なら白星高校に特待生として行きますよ。」






「わかった。それなら監督に連絡をしておくから正式に今度内容とさっきのちゃんと話しもしておく。その時にもう一度今の話を監督にしてみて?俺がそれでもいいって言ってたって言ってくれていいから。」








「わかりました。スカウトわざわざありがとうございます。それでは練習に戻りますので。先輩方も来年からよろしくお願いしますね?」






「龍くんがスカウトしたから変なことしたりはしないけど、私はあなたのこと嫌いだからねー!」


「一応よろしく。」






そういうとさっさと練習に戻って行った。
その後に監督がとても申し訳なさそうに俺たちに謝りにきたが、俺は気にしないでくださいということしか出来なかった。






「龍くん!なんであんな子スカウトしたの!?私が推薦したけど、流石にあの子は野球に向いてないと思うし、チームで上手くやっていけないよ!」


「流石に凛もそう思うっちゃけど。野球が少し上手いからってあんな言い方する選手と野球したくないけん。」








2人ともなかなかおかんむりの様だ。
まぁ俺はコーチだから少しは優しい目で見れるけど、彼女たち選手は一緒にプレーしないといけないから流石に嫌なのだろう。






「気持ちはよくわかるけど、別に彼女が守備が上手いからって理由だけでスカウトした訳じゃない。彼女からは悪意を感じなかったんだよね、ってことは純粋に指導されたくないって思う何かがあったって考えることが出来ない?まぁ純粋にそう思ってる可能性もあるけど、俺の言うこと聞かないくらいなら引退した3年も同じようなことしてる人達がいたから、あんまり気にならないけどね。」








2人とも俺の話を聞いてすぐに納得はしていなかったが、俺が言うならと無理やり我慢してくれていた。






「早めに来年そういう子が入ってくるって知れてよかったんじゃないかな?言う事聞かないってことは上手くなる可能性も低くなるから、結局外野のライバルにはなりずらいだろうし、そう考えたら少しは許せない?」






「うーん。そこまで言うなら…。凛も納得出来る?」




「微妙やね。言ってることはわかるっちゃけど、それを納得出来るかは微妙。」






「別にそれでいいよ。あんまり生意気言うなら先輩として怒ってもいいけど、しっかりと野球に取り組んで、俺や監督の言うこと聞かないだけなら仲間外れにしたり、いじめたりするのは絶対だめ。みんなにも俺から話しておくし、陰湿な事せず実力で分からしてあげて。」






俺は最後に強めの口調でお願いすると渋々2人とも頷いた。
前島さんはあんまり褒められたことをやってる訳では無いが、それを頑なに責めるのも何か違う気がした。






「ふー。まさか今年のスカウト第1号がまぁまぁ問題児になるとは思わなかった。去年の純粋な夏実が懐かしいぜ…。」




俺は去年のことを思い出しながら、少し怒っている2人を宥めるためにクラスメイトの女の子にあらかじめ聞いておいた、安くて美味しいスイーツのお店でごちそうすることにした。






「おいしー!龍くんよくこんなお店知ってたね!」


「安くて美味しい。今度はフルーツタルト食べようかな。」






ちょっと痛い出資になったが、これも必要経費と思いながら美味しそうにスイーツを食べる2人を見ながらコーヒーを飲むのであった。













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