元天才選手の俺が同級生の女子野球部のコーチに!
合同練習!!!
七瀬さんのキャッチャーとしての能力を判断した。
キャッチャーは普通の内野手や外野手と評価のポイントも全然違う。
キャッチャーは俺も野球を初めてからメインで守っていたので、全国大会の選手とそこまで比べなくてもプレーで大体のことが分かる。
捕手
守備能力
キャッチング能力 40
スローイング能力 20〜30
肩の強さ 90〜95
状況判断能力 50くらい?
フレーミング能力 不明
リード 不明
キャッチャーとしての能力で言えば、ギリギリ不合格だと思う。
全国大会にでたキャッチャーの平均から比べた数字なので、こんなものだと思う。
全国大会に出るようなキャッチャーは基本的に能力が高く、キャッチャーは必ずしもチームの中でムードメーカーである必要は無いが、最後の最後まで絶対に折れない精神力と守備で全員を引っ張る能力も必要なのだ。
投手を引っ張り、内外野に指示出しするキャッチャーが1番最後まで諦めない強い精神力がないといけないのは明らかだろう。
キャッチング能力はどうにでもなるが、1番重要な心の部分は試合で追い込まれた時を見て見ないとわからない。
そこで弱気になって逃げるようなリードをとったり、責任転嫁するようなら大人しくピッチャーをやった方がいいだろう。
スローイングと肩の強さを別にした理由は、スローイングは盗塁された時に、ボールを捕球してからセカンドもしくはサードに送球するまでの速さと正確さが重要になってくる。
肩の強さはどれくらい強い送球、速い球を投げられるか。
まだ彼女は肩の強さに頼りきりのプレーで強引に盗塁を阻止しているだけで、キャッチャーとしてのスローイング技術はまだまだ改善の余地ありだ。
あの肩の強さは確かにピッチャーとしては魅力的なのもよく分かる。
さっきの送球も120キロ近く出てそうだし上手く監督が育ててくれたら、ピッチャーだけじゃなくてキャッチャーとしてもいい選手になれるかもしれないのに。
俺はとても残念に思った。
あんなにキャッチャーを楽しそうにプレーしている選手もそんなに居ないと思った。
キャッチャーなんて練習だとそんなに面白い事もないし、投手がコントロールが悪いと体で止めに行くと痛いだけだし。
多分、技術が向上しないのは監督のせいだろう。
そんなに強制してまで投手をやらせたいのだろうか?
名門校からのスカウトでも来てて、投手として送り込みたいのだろうか?
女子中学硬式クラブチームも全国有数の花蓮女学院に特待生として送り出しました、甲子園で活躍しましたとなるとかなりの宣伝効果にもなる。
女子野球の大きな問題の1つとして高校野球部としてのコーチや監督が不足気味だということだ。
野球経験者なら腐るほどいるだろうが、チームを編成したり指導したり、結局試合に勝たせないといけない。
それが出来るとなるとやはりぐっと数が減る。
だからこそ中学生の監督でも優秀な人は高校野球の監督として雇われる例も結構あるみたいだ。
俺は他の球場に行くのを忘れて、七瀬さんと江波さんの守備を見て、守備交代して打者としての2人を見て、ランナーとしての2人をずっと観察していた。
「………くん。」
「……東奈くん!お疲れ様。」
「あ、田中監督と玉城監督!お疲れ様です。」
俺の元にやってきたのは一番最初にスカウトしたチームの監督で、今こうやって普通にスカウト活動が出来ているのはこの2人のおかげだった。
俺が野球をやっていた時のどの監督よりも俺にとってはいい監督に見えた。
「俺達の声掛けにも反応せずにかなり熱視線を飛ばしてたけど、どの選手か教えてもらってもいいかな?」
俺はいつの間にがメモをとるのを忘れて、2人のプレーをガン見の上の言葉があるならその言葉に当てはまるくらい集中して見てたみたいだ。
それを笑いながら指摘されてしまい、少しだけ恥ずかしかった。
「はは。ちょっと集中し過ぎてましたかね。」
「自分が見ていた選手は、七瀬さんと江波さんの2人を見ていました。」
二人の監督は少し驚いた表情を見せ、そしてグランドの方をちらりと少しだけ見た。
「なるほど。七瀬さんは分かるけど、江波さんというのはあの目立たない子だよね?」
二人の監督の言うこともよく分かる。
七瀬さんは投手としてはかなりスカウトが声をかけていてもおかしくない。
だが、江波さんは確かに全くスカウトがマークするような選手ではないだろう。
「意外ですか?確かに選手としての能力は周りの選手より少し劣っているかもしれませんね。」
「…………?」
俺が何故彼女を気にしているかが一切ピンときていない様子だった。
まぁ上手い選手だけを連れていくならスカウトなんて要らないと俺は思っていた。
実力だけでなく他の選手に無い何かがあれば、それはスカウトする対象になり得るのではないのだろうか?
「ちょっと意地悪ですが見ていた選手は教えたので後は彼女のどこが気になったかは、お二人が彼女のプレーをみて見出してみてください。」
「東奈くんも中々いうねー。そこまで言うのならちょっと彼女のプレーを見ていこうかね。」
2人はバックネット裏にどっしりと腰を据えて江波さんのプレーを見ていた。
俺は今日見た選手たちの評価表を少しだけ見直していた。
結局、気になっていた野手3人は俺の基準でいえばスカウトする気にはなからなかった。
C特待ならスカウトしてもいいかと思ったが、多分白星高校のC特待など鼻で笑われて断られるだろう。
投手の方も七瀬さんという選手を見つけたが、野手優先の俺には残りの投手はスカウト対象外になった。
さっきの熱視線と俺の事をちょっとだけおちょくった二人の監督だが、人のことを言えないくらい江波さんを必死に見ていた。
話しかけるのも悪いと思い、とりあえず他の球場に足を伸ばした。
「今日はここまでか。」
夕方過ぎになるとどこの球場も練習が終わり、解散の流れになっていた。
今日は七瀬さんをスカウトしようかと思ったが、明日もあるだろうから今日はもう帰ることにした。
「ひがしなくーん!!ちょっとー!!」
 
遠いところから俺の事を呼ぶ声がした。
玉城監督が駆け足で俺のところまで寄ってきた。
「玉城監督。どうかしましたか?」
「帰るのはちょっと早いよ。今から選手たちを移動させてバーベキューやキャンプができる大きな施設に行って食事会をするんだ。東奈くんもそこに参加したらいいよ。」
「え?参加してもいいんですか?」
「是非是非!流石に女の子達の中に入って行って話すのは難しいだろうけど、他の監督たちにも紹介したいし来てくれるとありがたい。」
「分かりました。行かせてもらいます!」
俺は玉城監督に連れられて、他の監督やコーチの集まるところに案内された。
「君が中学生スカウトの東奈くんか!よろしく!」
監督に集まる所に行くと、すぐに色んな監督やコーチから暖かい言葉を頂いた。
俺は七瀬さんと江波さんが所属する原ドリームガールズの監督がどんな人か気になったが、この場には居ないようだった。
「東奈くんも沢山食べていくといい! 選手達と恋仲になるのはダメだが、話してみたりするといい。」
思春期の恋愛という一番指摘されると恥ずかしいことを指摘され、周りに笑われながらも俺はバーベキューをする選手の近くに行くことにした。
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