元天才選手の俺が同級生の女子野球部のコーチに!
決意!
桔梗の練習を手伝ってから2日後。
姉は珍しく家に帰ってきているが、色々と仕事があるみたいで家にいる時間はあまり長くない。
昨日、天見さんから夜電話があった。
白星高校は正式に俺を特待生扱いで女子野球部のコーチとして入学して欲しいと言われた。
「んー。どうしようかねぇ。」
結局蓮司にまだ話してもいない。
多分、話せばかなり楽になるしいいアドバイスをくれると思う。
だが、今更改まって真剣な話をしづらいというのはある。
「龍?どうした?ぼっとして。」
「ん?あぁ、ちょっとだけ考え事してただけ。」
蓮司からは俺の事を心配しているような雰囲気を感じている。
俺はそれに気づいていながら、なんにも言わない。
これを本当の親友と言えるのだろうか?
桔梗にも言われたようにまず一番最初に話すなら蓮司しかいない。
その後に桔梗にも話してもいいかもしれない。
「蓮司、実は…。」
俺は蓮司に3日前にあったこと全てを話した。
最初は真剣な表情で聞いていたが、少しずつ話が進んでいくとそんな話あるのかっていう難しい顔をしていた。
「なるほどな。お前がどう思ってるか分からないけど、俺ならやってみるかな? なんでかって言われても困るけど、俺は常に新しいことをしたいんだよな。」
「新しいことか…。」
「ちなみに、俺は高校になったら野球もサッカーもやらないね。また新しいことに挑戦してみる。」
小学生のときは野球では全国大会優勝して、中学校ではサッカー部のキャプテンだがチームは弱いらしい。
「この際だから言っておくけど、やっぱり女にモテたいやん?だから高校は軽音楽部でバントやろうと思ってる。」
蓮司らしいというか、これまで頑張っていたことにあっさりと見切りをつけて自分がやりたいことを見つけてまたそれに向かって頑張る。
「蓮司らしいっちゃらしいね。けど、モテたいならバンドじゃなくてもいいんじゃない?」
「馬鹿っ!お前、ステージでギター弾いて歌えば、女なんてイチコロだぜ? 漫画でそう書いてあったから間違いねぇぜ。」
こいつは大物になるか、バカのまんま野垂れ死にするかどちらだろうかなと思った。
90%くらいは野垂れ死にするだろうけど。
その時は親友として少しだけでも助けてあげないとと思うのであった。
「だから、失敗しても辞めてもいいから龍が少しでもやってもいいと思うならやってみろよ。」
あんな馬鹿なこと言ってた奴がいいこと風なことを言っても響かない。
だが、これくらい単純でもいいかなと少しは思うのであった。
「白星高校だったよな?今年から共学になるって言ってたけど、軽音楽部とかあんのかな?」
「そこまでは流石に知らんね。おい、蓮司。まさか白星に行くとか言わないよな?」
蓮司は俺の話を聞いていなかった。
携帯で何かを調べている様子だった。
ほぼ間違いなく白星に軽音楽部があるか確認しているのだろう。
もしあったらこの男は本当に白星に来るのであろうか?
「おい!龍!軽音楽部あるらしいぞ!それじゃ俺は白星に行こうと思うけど、お前はどうする?」
俺は蓮司の優しさというか、思いっきりのよさに負けた。
どっちみち断っても俺はやりたいことも無いし、もし全然ダメなら蓮司とバンド組んで女の子にモテモテになるのも悪くないかもしれない。
「あぁ。俺も白星高校に行こうと思う。もしダメだったら蓮司とバンドでも組もうかな。」
「あ?そんな気持ちでバンドが出来る訳ねぇよ!そんなやつは野球のコーチでもしてた方がマシだぜ。」
俺は改めて蓮司と友人でよかったと思った。
まぁ完全に乗せられた形だがそれでもよかった。
「おい、蓮司。白星って偏差値55位あるらしいからちゃんと勉強しておけよ。」
「マジで?」
俺は絶望している蓮司の肩をゆっくりと叩いて頑張れと心の中で応援だけしておいた。
その日の夜。
「姉ちゃん、白星に行くことにしたわ。」
「そっかそっか。同世代の女の子をコーチするのは大変だと思うけど最後までやりきれたらきっと、りゅーは何かを見つけられると思う。」
「それは今の俺には分からないね。少し想像しただけでも大変なのは分かってる。 けど、姉ちゃんの
相手するよりはだいぶマシだろうからきっと出来るさ。」
姉は嫌味を言っても嬉しそうに笑っていた。
安心したのか、自分の思い通りになって嬉しいのかは分からないがやると決めたらしっかりとやる。
「もしもし。天見さん、コーチの話受けようと思います。」
「そう!それはよかった!昨日の今日で悪いんだけど明日白星高校の方に来てくれる? 龍くんがコーチの話を受けてくれると思って、どうしてもお願いしないといけない事があるからその準備とか話しとかをしておかないといけなくて。」
「分かりました。なら学校が終わったら白星高校まで行きますね。それでは…。」
天見さんに連絡した後、姉の練習にかなり遅い時間まで付き合わされた。
今日は技術的な事ではなく、かなり厳しい筋トレと心肺機能を鍛える為に10キロ走と10m.20m.30mと距離を伸ばしてダッシュを繰り返して体をいじめ抜いた。
「あー!疲れた!りゅー早く帰ってご飯食べよ!」
「あんだけ全身の筋トレさせられた後にこんだけ走らされたらそりゃ疲れるわ。はよ風呂入りたい。」
一階お風呂と二階にシャワー室があった為、2人でささっと汗を流して近くの焼肉屋に食べに行った。
トレーニングの後はプロテインも摂るがしっかりと肉を食べるのも重要なので、2人で大量の肉を食べまくった。
「りゅー。私、明日からアリゾナに野球しに行くから一時は帰ってこないけど頑張るんだぞ。」
「やっぱりいつも急だよね。姉ちゃんも頑張って!また姉ちゃんのプレー見れることを楽しみにしてるから。」
「ふふ。ありがと。これからりゅーは大変なことに挑戦しないといけないから、こんなことしかしてあげれないけど、これだけでも受け取っておいて。」
俺は姉から封筒を受け取った。
姉弟だし、目の前で封筒を開けても失礼にはならないと思い封筒を開けた。
ざっと30万くらいは入っていた。
大変になるのは分かっていたが、現金って一体どういう事なのか…。
「これって一体…。」
「さーねー。それはこれから起こることで使うと思うからおねぇちゃんからのプレゼント! 利子は一年で50%だから来年45万で返してね?」
俺は貰ったお金を黙って姉に突き返した。
「うそうそっ。けど、これは必要経費だと思う。無駄遣いしなければ遊ぶために使ってもいいから貰っておきなさい。」
そういうと封筒を俺の手を取って、その封筒を握らせてきた。
「それじゃ、帰ろうか。」
「よく分からないけどありがとう。無駄遣いしないようにするけど、必要な時は使わせてもらうよ。」
姉はいつもの笑顔でうんうんと頷いた。
「お会計3万4250円になります。」
「ねぇ、りゅー。お金足りないからその封筒のお金貸して?」
「………。」
流石俺の姉。
さっそく必要経費が役立つ時が来た。
1万円を取り出し姉に渡した。
姉は悪びれる様子もなく会計を済ませた。
そして、その1万円は返ってくることはなかった。
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