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霊能者、異世界を征く!~奴隷からの出発、魂の能力継いで下剋上。

るう

胸騒ぎ

それは、宿屋で就寝中の深夜のことだった。

『起きろ! おい、マヒト!』

いきなり何者かに腕を引っ張られた。
不慣れな硬いベッドにもようやく慣れてきて、ちょっと深く眠っていたこともあり、その声の主はなかなか起きない俺に焦れたのか、かなり強い力で掴んだようだ。あまりの痛みで飛び起きる羽目になった。

「いつっ、痛いって! なんだよ……もう」

半分寝ぼけた俺の目の前には、ティムの必死な顔があった。
ということは、引っ張っていたのはコイツかよ。腕を見ると、くっきりと手形が付いている。完全にオカルトだな、これは。
何があっても傷一つ付かなかったこの右腕も、霊障の類は受けるということか。考えてみたら、霊に触れることができるということは、イコール、霊の干渉を受けるということなのかもしれない。

「何事だ、マヒト」

俺が騒いだせいで、さすがにヤトが起きてしまったようだ。隣のベッドのルルゥも身体を起こして目をこすっている。ちょっと不機嫌そうに耳が後ろに倒れているが、こんな夜中にたたき起こされれば文句の一つも言いたくなるだろう。

「ごめん、起こして。なんかよくわからないけど、ティムが……って、おい! 窓から行こうとするな」

引き留める俺の声に、それでも窓の外をしきりに気にして、ティムはじれったそうにこちらを振り向いた。その表情には、明らかな焦燥感が滲み出ていた。理由を聞こうにも、本人さえも理由はわからないらしい。とにかく気ばかり焦って、パニックを起こしている状態に近い。

「……上手く説明できないみたいだけど、どうやらティムは自分の家に行きたいらしい」
「自宅? そういえば、ティムはこの村の出身だといっていたな」
「一度行ったことがあるから、俺ちょっと行ってみる。このままじゃ、どうにもならないし」
「こら、待て待て! 俺も行く、ちょっと待ってろ」

感情をティムに引きずられている俺は、矢も楯もたまらず飛び出そうとしたが、それをヤトは慌てて止めた。
確かに勝手な行動は、何かあったとき困るのはヤトだろう。なにしろ俺が警備兵にでも捕まれば、その咎は持ち主であるはヤトに降りかかるのだ。
ヤトはルルゥに留守番を頼んで、荷物から外套を二つ取り出した。一つを俺に差し出し、自分も羽織りながら外へ出た。途端に凍るような夜風が吹き込んできて、俺は慌てふためいて外套でくるまり身を縮める。
この寒空の中、薄着で飛び出そうとするなど改めて軽率に過ぎた。

「場所は知っているのか?」
「外からだけど見たから行けばわかる。それに、ティムが先導してるから大丈夫……ああ、もうティム、待てってば! ごめん、ヤト。ティムがスゴイ先にいっちゃってるんで、もうすこし急いでいいか?」

グイグイ引っ張られているし、なによりティムの焦燥感がダイレクトに響いて来て、超しんどい。

「それは構わないが、お前の方が息切れしてるぞ」
「……う、まあ、そうなんだが。ティムがとにかく、急げ急げうるさくて」
「一体何があったんだ? ろくに説明を受けてないんだが」
「実は、俺もなにも聞いてない。ただ、いきなり家に帰りたいって、それだけで」
「もしかして、家族に何かあったとか?」
「わからない、ただアイツは俺に縛られている状態だから、見てくることは出来ないはずなんだけど」

なんだろう、幽霊の第六感とかそういうもんかな?
ティムの家は宿からそう遠くない。小走りに移動して、二十分程度と言ったところか。農地の一番手前側、商店街からそう遠くない場所という条件を、レオに付けられたのだとティムは言っていた。
ヨルゴとか言うエセ婚約者とゴタゴタしてたりもしてたし、レオも姉夫婦が心配だったのかもしれないな。
小走り程度とはいえ、軟弱な俺の肺がそろそろ悲鳴を上げ始めた来た頃合いで、ふとヤトが足を止めた。

「……あれはなんだ、なんか騒がしくないか?」

大型犬に引きずり回された飼い主のようにゼイゼイと情けない息を吐きながら、俺はヤトの指差す先を見るために顔を上げた。そこへきて、ようやく前方の明かりの下で押し問答をする集団に気が付いた。

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