霊能者、異世界を征く!~奴隷からの出発、魂の能力継いで下剋上。
商人2
どうやら男は、自分が被った被害を加害者の身内に贖わせようとしているらしい。
「ですから、先ほどから説明しているように……」
「御託は聞き飽きた! お前では話にならん、さっさと女をつれて来んか!」
商人の怒号にもギルドの女性職員は気圧されることはなく、きっぱりと首を振った。さすがは荒くれ冒険者を毎日相手にしているだけはある。
「申し訳ありませんが、ご意向に従うわけにはまいりません。ギルドの依頼に対する報酬、損失は、すべて本人にのみ責任が生じます。たとえ家族といえど、それを肩代わりすることはありません。それに貴方には、すでにギルドの方から保険がおりているはずです」
冒険者はギルドに加入すると、定期的に会費を払わなくてはならない。これを一回でも怠ると、即座に冒険者の資格を失うのだ。そして、その会費はギルド運営費や会員が損失を出し、やむ負えない事情で(本人死亡時など)それを補てんできない場合にギルドが肩代わりする保険の役割もある。
ギルドは仲介するだけで、基本的には責任を負うことはないが、まれに冒険者の一方的な過失により依頼人が損失を負った場合、保険が適用されることがある。
「あんなもので足りるか! 大量の、しかもとびきり高価な荷物が、全て持ち逃げされたんだぞ。ギルドの保障が十分でない以上、家族に補ってもらわねばおさまりがつかん」
そう今回の場合、冒険者が窃盗を働き、姿を消したとの商人の証言が認められ、保証金が支払われたのだ。ギルドとしては、この後犯罪者となった冒険者を指名手配することが出来、捕らえた場合は然るべく対処(犯罪奴隷として引き渡すなど)がされ、その時生じた利益を回収する権利がある。
それで手続きは済んだはずだった。
けれど、当の商人がそれでは済まないと怒鳴りこんできたわけだ。
おちょぼ口から唾を吐きながら、顔を真っ赤にして商人はまくしたてている。周りを囲んでいる冒険者たちのヒソヒソ話をまとめると、どうやら彼の裏の商売は人身売買だという。
奴隷商は、基本的に奴隷ギルドに所属しなければならないが、彼の場合は、建前として貴金属や宝飾、服飾などを富裕層へ売買しており、奴隷の売買などではないと言い張っているらしい。
けれどモデルにされた服飾を身に纏った見目の良い少年少女は、その後戻っては来ないのだ。彼の専門は、労働力としての奴隷ではない。あくまで装飾品としての商品の一部なのだ。
彼は商業ギルドへも、冒険者ギルドへも多額の寄付をしており、まして人身売買自体は禁止されてはいない為、今まで誰に咎められることもなかったようだ。
そして今回の一件も、彼と彼の従者たちの証言が一致していることから、いろいろ不審な点はあれど認めるしかなかったのだという。
「結婚したばかりで子供も生まれようってあの男が、ここでの生活を投げ出してまで盗みをして姿をくらますかよ……アイツ、なんなんだよ」
人垣の隙間から覗き込む俺の横で、壁に凭れかかり腕組をした男が、胡散臭そうに商人をねめつけながらぽつりと零した。それに俺が気が付くより早く、すぐ耳元でおっさんがり素っ頓狂な声を上げた。
『……っ! おま、レオ!?』
「レオって、あんたの弟の、……あっ、しまっ」
ティムのあまりに驚いた声に、俺はまたしても声に出してしまった。やばっと口を押えた時はもう遅かった。物凄く体格のいい青年が、すごい勢いでグルンッと振り返り、俺をギロリと睨んだ。
……だって、俺には普通に聞こえるんだ。スルーは難しいんだよ。
「アンタ……なんで俺の名を? どう見てもこの町の人間じゃないよな」
「あ、いや……俺は」
「ですから、先ほどから説明しているように……」
「御託は聞き飽きた! お前では話にならん、さっさと女をつれて来んか!」
商人の怒号にもギルドの女性職員は気圧されることはなく、きっぱりと首を振った。さすがは荒くれ冒険者を毎日相手にしているだけはある。
「申し訳ありませんが、ご意向に従うわけにはまいりません。ギルドの依頼に対する報酬、損失は、すべて本人にのみ責任が生じます。たとえ家族といえど、それを肩代わりすることはありません。それに貴方には、すでにギルドの方から保険がおりているはずです」
冒険者はギルドに加入すると、定期的に会費を払わなくてはならない。これを一回でも怠ると、即座に冒険者の資格を失うのだ。そして、その会費はギルド運営費や会員が損失を出し、やむ負えない事情で(本人死亡時など)それを補てんできない場合にギルドが肩代わりする保険の役割もある。
ギルドは仲介するだけで、基本的には責任を負うことはないが、まれに冒険者の一方的な過失により依頼人が損失を負った場合、保険が適用されることがある。
「あんなもので足りるか! 大量の、しかもとびきり高価な荷物が、全て持ち逃げされたんだぞ。ギルドの保障が十分でない以上、家族に補ってもらわねばおさまりがつかん」
そう今回の場合、冒険者が窃盗を働き、姿を消したとの商人の証言が認められ、保証金が支払われたのだ。ギルドとしては、この後犯罪者となった冒険者を指名手配することが出来、捕らえた場合は然るべく対処(犯罪奴隷として引き渡すなど)がされ、その時生じた利益を回収する権利がある。
それで手続きは済んだはずだった。
けれど、当の商人がそれでは済まないと怒鳴りこんできたわけだ。
おちょぼ口から唾を吐きながら、顔を真っ赤にして商人はまくしたてている。周りを囲んでいる冒険者たちのヒソヒソ話をまとめると、どうやら彼の裏の商売は人身売買だという。
奴隷商は、基本的に奴隷ギルドに所属しなければならないが、彼の場合は、建前として貴金属や宝飾、服飾などを富裕層へ売買しており、奴隷の売買などではないと言い張っているらしい。
けれどモデルにされた服飾を身に纏った見目の良い少年少女は、その後戻っては来ないのだ。彼の専門は、労働力としての奴隷ではない。あくまで装飾品としての商品の一部なのだ。
彼は商業ギルドへも、冒険者ギルドへも多額の寄付をしており、まして人身売買自体は禁止されてはいない為、今まで誰に咎められることもなかったようだ。
そして今回の一件も、彼と彼の従者たちの証言が一致していることから、いろいろ不審な点はあれど認めるしかなかったのだという。
「結婚したばかりで子供も生まれようってあの男が、ここでの生活を投げ出してまで盗みをして姿をくらますかよ……アイツ、なんなんだよ」
人垣の隙間から覗き込む俺の横で、壁に凭れかかり腕組をした男が、胡散臭そうに商人をねめつけながらぽつりと零した。それに俺が気が付くより早く、すぐ耳元でおっさんがり素っ頓狂な声を上げた。
『……っ! おま、レオ!?』
「レオって、あんたの弟の、……あっ、しまっ」
ティムのあまりに驚いた声に、俺はまたしても声に出してしまった。やばっと口を押えた時はもう遅かった。物凄く体格のいい青年が、すごい勢いでグルンッと振り返り、俺をギロリと睨んだ。
……だって、俺には普通に聞こえるんだ。スルーは難しいんだよ。
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