霊能者、異世界を征く!~奴隷からの出発、魂の能力継いで下剋上。
ドリスと畑
「ところでアンタの家ってどこ? 奥さん、気になるんだろ?」
『それはそうだが……』
買い物に行く前にティムにそう声を掛けると、彼は少し迷うような様子を見せた。
後悔やら申し訳ない気持ちやらで、いくらか尻込みする気持ちもあったのだろう。だが、それよりも最後は心配の方が競り勝ったようで、すぐに決意したように道順を案内し始めた。
商店街が立ち並ぶ町の中心を外れ、農地が広がる郊外にいくつか小さな家が並んでいる。どうやらその中の小さな一角を、知り合いの爺さんから貰い受けて、新たに生活を始めるつもりだったのだという。
『あ……、ドリス』
家ではなく戸外に視線を向けたティムは、小さな畑に目的の人物を見つけたようだ。白髪のお爺さんに教えを請いながら、畑仕事をしているようだ。すこしふっくらとして、お腹が大きいように見える。
『ああ……あんな体で畑仕事なんて』
ティムはドリスの方へ行こうとして、すぐさま引き戻されるようにぐんっと俺の方へ弾かれた。気持ちはわかるが、こっちも引っ張られるから勝手に暴れるのはやめて欲しい。
ティムの事情を知っているのか知らないのか、ドリスは元の畑の持ち主に農作業のノウハウを教えてもらっている様子だった。もともとドリスは、この町で生鮮食品を扱う小さな店の娘だったが、既に両親は他界しており、店は弟のレオが継いでいるということだ。
しばらく様子を見ていたティムは、すぐに振り切るようにして彼女に背を向けた。
「いいのか?」
『今更、視えもしねえ、しゃべれもしねえ俺が行って何が出来るってんだ。ドリス程の別嬪なら、他の男どもが放ってはおかねえよ。俺なんか忘れて、幸せになってくれればそれでいい』
それがただの強がりにしろ、とにかくここにこれ以上居たくないというのだけは本心だろう。新婚の妻が、身重の身体に鞭打って働いている姿など、見たくはなかったに違いない。
実際、ティムの言う通りで、死んだ人間が彼女に何ができるでもない。もう、見守るより他ないのだから。
俺は最初の予定通り、町の商店街に向かった。
小さな町ではあるが、ちゃんと各種ギルドが軒を連ねていた。
冒険者ギルド、商業ギルド、そしてその横には奴隷ギルドもあった。もともと奴隷ギルドは、商業ギルドから派生したギルドだ。
「そういえば昨日ヤトが、俺も冒険者として登録したほうがいいとか言ってたな」
肉体労働もしたことがない現代っ子で、しかも、こっちではそのなけなしの体力でさえ十全に発揮できず、冒険者なんかできるのかと不安だったが、仕事は討伐などの戦闘だけではないとのことだ。薬草を摘んだり、大きな町だと人探しに便利屋など、フィールドに出ない仕事もあるらしい。
討伐の類を一切やらないとなると、ランクを上げるのは困難になるが、今は身分証が欲しいだけなので構わないだろうとのことだった。
俺が冒険者になるのは、旅をするために身分を証明するものがあった方が便利だから、というそれだけのことなのだ。
「覗いてみようかな……」
自然と足は冒険者ギルドへと向かった。
『おいおい、キツネのにーちゃんが一緒に行くって言ってただろうが』
「ちょっと覗くだけだよ、町の中だし平気だろ?」
旅に必要な物を買うにしろ、必要な防具や武器などを買うにしろ、最終的には旅慣れたヤトに聞いた方が効率がいいだろう。いくつかお店を覗いたものの、結局なにも買えなかった俺は、じきに帰って来るヤトを冒険者ギルドで待って、店を回って一緒に帰ろうと考えたのである。
討伐もたいして時間がかからないって言ってたし、ギルドを見学している間に合流できるだろうから。
『それはそうだが……』
買い物に行く前にティムにそう声を掛けると、彼は少し迷うような様子を見せた。
後悔やら申し訳ない気持ちやらで、いくらか尻込みする気持ちもあったのだろう。だが、それよりも最後は心配の方が競り勝ったようで、すぐに決意したように道順を案内し始めた。
商店街が立ち並ぶ町の中心を外れ、農地が広がる郊外にいくつか小さな家が並んでいる。どうやらその中の小さな一角を、知り合いの爺さんから貰い受けて、新たに生活を始めるつもりだったのだという。
『あ……、ドリス』
家ではなく戸外に視線を向けたティムは、小さな畑に目的の人物を見つけたようだ。白髪のお爺さんに教えを請いながら、畑仕事をしているようだ。すこしふっくらとして、お腹が大きいように見える。
『ああ……あんな体で畑仕事なんて』
ティムはドリスの方へ行こうとして、すぐさま引き戻されるようにぐんっと俺の方へ弾かれた。気持ちはわかるが、こっちも引っ張られるから勝手に暴れるのはやめて欲しい。
ティムの事情を知っているのか知らないのか、ドリスは元の畑の持ち主に農作業のノウハウを教えてもらっている様子だった。もともとドリスは、この町で生鮮食品を扱う小さな店の娘だったが、既に両親は他界しており、店は弟のレオが継いでいるということだ。
しばらく様子を見ていたティムは、すぐに振り切るようにして彼女に背を向けた。
「いいのか?」
『今更、視えもしねえ、しゃべれもしねえ俺が行って何が出来るってんだ。ドリス程の別嬪なら、他の男どもが放ってはおかねえよ。俺なんか忘れて、幸せになってくれればそれでいい』
それがただの強がりにしろ、とにかくここにこれ以上居たくないというのだけは本心だろう。新婚の妻が、身重の身体に鞭打って働いている姿など、見たくはなかったに違いない。
実際、ティムの言う通りで、死んだ人間が彼女に何ができるでもない。もう、見守るより他ないのだから。
俺は最初の予定通り、町の商店街に向かった。
小さな町ではあるが、ちゃんと各種ギルドが軒を連ねていた。
冒険者ギルド、商業ギルド、そしてその横には奴隷ギルドもあった。もともと奴隷ギルドは、商業ギルドから派生したギルドだ。
「そういえば昨日ヤトが、俺も冒険者として登録したほうがいいとか言ってたな」
肉体労働もしたことがない現代っ子で、しかも、こっちではそのなけなしの体力でさえ十全に発揮できず、冒険者なんかできるのかと不安だったが、仕事は討伐などの戦闘だけではないとのことだ。薬草を摘んだり、大きな町だと人探しに便利屋など、フィールドに出ない仕事もあるらしい。
討伐の類を一切やらないとなると、ランクを上げるのは困難になるが、今は身分証が欲しいだけなので構わないだろうとのことだった。
俺が冒険者になるのは、旅をするために身分を証明するものがあった方が便利だから、というそれだけのことなのだ。
「覗いてみようかな……」
自然と足は冒険者ギルドへと向かった。
『おいおい、キツネのにーちゃんが一緒に行くって言ってただろうが』
「ちょっと覗くだけだよ、町の中だし平気だろ?」
旅に必要な物を買うにしろ、必要な防具や武器などを買うにしろ、最終的には旅慣れたヤトに聞いた方が効率がいいだろう。いくつかお店を覗いたものの、結局なにも買えなかった俺は、じきに帰って来るヤトを冒険者ギルドで待って、店を回って一緒に帰ろうと考えたのである。
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