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霊能者、異世界を征く!~奴隷からの出発、魂の能力継いで下剋上。

るう

冒険者ティムの後悔(ティム視点)

それはありふれた護衛の仕事のはずだった。
いやに報酬がよかったが、羽振りがよさそうな商人が依頼人だったので、そんなこともあるかと引き受けてしまった。何しろお金が必要だったからだ。
俺はティム、標準的なごく普通の旅の冒険者だった。
三十も半ばを超えた頃、そんな俺が一生分の運を使い果たすほどの別嬪と結婚して、もうすぐ子供も生まれる予定だった。
根無し草の冒険者としてフラフラしていた俺が、ようやく手に入れた安住の地。とてつもなく舞い上がっていた記憶がある。
冒険者ギルドの受付嬢が、報酬はいいが依頼者は数さえ集まればいいような口ぶりだったと言っていた。顔見知りの彼女は、この依頼をあまり勧めたくなさそうだった。
もちろん、冒険者の仕事には危険はつきものだ。けれど、基本的に依頼内容を偽ってはいけないし、特に命の危険があるような依頼の場合は、その旨を明記しなければならない。報酬が安かろうが高かろうが、だ。
けれど、この依頼内容を見るに片道一週間ほどの旅の同行という、よくある普通の護衛依頼であった。盗賊が出るかもしれない、モンスターが襲ってくるかもしれない、そんな危険があるのは承知の上だが、それ以上の追加項目はない。

「こんな大金どうしたの?」

出発日の前日、妻のドリスは受け取った金貨の入った革袋を訝し気に眺めた。

「ちょっと長距離の護衛依頼を受けてきた。これは前金だ。終わった時にまた同じ金額だけ入って来る」
「……冒険者はもうやめてって言ったじゃないの」
「わかってる、これが最後だ。ちゃんと左隣の爺さんの畑を引き継ぐことになってる、知ってるだろ? でも、種も苗もタダじゃない。初めにお金がかかるんだよ、わかってくれ」

俺は、ドリスを必死に説得した。もちろん資金不足は嘘ではなかったが、本当ならこの仕事をしなくても何とかなったと思う。けれど、依頼を見た時にこれだけの金があればもっといい農機具や種が買える、生まれてくる子供にも飢えさせることなく豊かに暮らせると短絡的に考えたのだ。
今となっては、その時の俺をぶん殴ってでも止めたいが、すべて後の祭りである。
そう、世の中にうまい話などその辺に転がっているはずはなかったのだ。
俺の他にも、根無し草の冒険者数人がこのクエストに参加した。もともとは俺もこいつらと同じ、この町に滞在する冒険者の一人だった。
妻のドリスに会うまでは。
ドリスは俺にはもったいないほどの器量よしで、しかも若い。もとはと言えば、彼女の弟をモンスターの群れから俺、というか俺のパーティが救ったのが縁だった。
彼女には婚約者を名乗る者がおり、襲われた弟は、その一方的な婚約に反対し、憤っていたという話だ。
証拠も何もないが、なんだかきな臭い話ではある。
彼女も困っている様子で、俺が相談に乗るようになり、一年二年とたつうちに俺とドリスは何となく好き合うようになった。初めのうちは警戒していた弟のレオも、最終的には俺たちを祝福してくれた。
けれど、そんな俺たちの新婚生活は順風満帆とはいかなかった。もちろん俺たちはラブラブだったんだが、外野が、である。
例のドリスに付きまとっていた男が、ことごとくいらぬちょっかいを出してくるのだ。最初は結婚式、俺の新郎用の晴れ着を泥だらけにされ、式の最中にはチンピラを乱入させた。その後も畑に嫌がらせをしたり、やることは幼稚だが下手に後ろ盾があるだけに始末が悪かった。
実はその男は町長の息子で、その祖父はこの周辺を牛耳る顔役だった。
街の連中は俺たちの味方をしてはくれていたが、彼らに表立って逆らえるはずもなく、泣き寝入りするより他なかったのだ。
金が必要だったのも、実はそいつからの嫌がらせ故と言ってもいい。
もし万一にも生活が立ち行かなくなれば、この辺りで金銭的に頼れるのはその男の縁者くらいである。そんなことになれば、弱みを掴まれ何を要求されるかわかったものではない。
そして俺は、冒険者として最後の依頼を受けることにした……本当の意味での、最後の依頼になるとは、これっぽっちも思いもしないで。

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