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霊能者、異世界を征く!~奴隷からの出発、魂の能力継いで下剋上。

るう

種族2

「勇者召喚は、結局、失敗に終わった」

なんだ、失敗したのかよ。それじゃあ、こっちには誰も来なかったってことでいいんだよな。なんというか、ホッとしたような肩透かしを食らったような。
正直に言うと、ちょっとだけ期待していた自分に気が付いた。なにしろ、こんなわけのわからない世界に、完全ボッチが決定したからだ。

「俺が物心つく前のことだから、その時のことを直接知っている訳じゃないが……」

そう前置きして、ヤトは当時の事を話し始めた。
儀式はそれを主催した大国の聖堂にて行われた。各国から集められた優秀な魔導士と、魔力の強い神官たち、さらに王族も加わった。
そんな儀式の失敗は、人族に厳しい試練を与える結果になった。
強大な魔力を有する魔導士が大勢亡くなり、そればかりか世界の歪みによる時空嵐が周囲何百キロにも渡って吹き荒れ、主要都市はおろか周辺の森、湖、山を跡形もなく吹き飛ばしたというのだ。
これにより大陸の三分の一が更地になったというから、それこそ魔族大侵攻よりエライことになったわけである。

「その事件のせいで人族は絶滅といっていいほどの状況に瀕した。獣人や魔族にも多少の被害はあったが、人族はその比でなかった」

この頃には、ルルゥがウトウトと船をこぎ始め、今や完全にヤトの肩に凭れかかっていた。まあ、子供にはちょっと退屈な話だよな。
ヤトは、少し言いにくそうに一つ咳払いした。

「それで、だな……獣人族の国々に滞在する人族を、保護することにしたんだ」
「保護? 俺はいきなり奴隷にされそうになったが」

有力者の庇護を得ること、すなわち所有を証明できる奴隷として、ひとまずの保護下に置くことにしたらしい。人族には魔力があり、大なり小なり魔法が使えるので、当初、無頼の輩による誘拐……ある意味での略奪行為を危惧したのは本当だったようだ。地位ある者が仮所有することで、難民と化して救助を必要とした人族を保護したのだ。
もともと、魔法が使える人族は戦闘奴隷としてかなり高価な値がついた。今回のことで、獣人族が数で圧倒的優位に立ったこともあり、人族と獣人族の立場は逆転してしまった。もともと、魔力という特殊能力をもつ人族は、魔族侵攻の際も獣人族よりも優位に戦えた。そう言った面でも、獣人族は人族には逆らえなかったのだ。
そんなわけで、人族が弱ったこの機を獣人族は逃すことはなかった。いつの間にか、奴隷ギルドを仲介するのが暗黙の了解となり、正式な奴隷契約をする今のような風潮になったのだという。

「そのままズバリ、奴隷商人だな」

最初はどうだったか知らないが、最終的に金銭のやり取りが発生するなら、それはただの奴隷売買である。もっとも、ここでは奴隷商人もいるらしいから、それ自体は犯罪ではないのだろう。ただ、普通は借金奴隷、犯罪奴隷がほとんどで、何かしらの罰としての身分である。
つまり、生まれついての奴隷や、種族を理由とした奴隷、罰則なくして奴隷になることはほぼないのだ。その点においても、人族だから奴隷にできるというのは根本的に理屈に合わないが、既に十数年の慣例により正当化されつつあるのだという。

「……もともとはちゃんとした保護システムが確立していたんだ。人族の国が存在する中立地域に送り届けたり、それまでの面倒をみたりとな」

慈善事業として崇高な取り組みをしていたはずが……まあ、だんだんとおかしくなっていったという良くある話なのだろう。とはいえ、最低限の良心は残っているらしく、罰奴隷以外の人族の奴隷の主従契約は、双方が了解しないとならない、など、いくつかの厳しい取り決めはあるようだ。
ちなみに人族の婚姻制限は、獣人族ではなく人族の国、要は中立地域が合同で提案した法律である。いわゆる純血種の保存のための処置というわけだ。
それを守らせるのを条件に、獣人国が人族を奴隷として保有しているのを容認しているのだという。

「奴隷として売っぱらってるのを黙認してるってこと?」

ヤトは肩を竦めて頷いている。
数が減り、何より重大な失態を冒した人族が強く出られないのはわかるが、中立地域以外では、捕まえたもん勝ちみたいな感じになってしまっている。
俺、マジに危ない所だったのかもしれない。
ただ、人族の減少によって魔族との微妙な三竦み状態が崩れ、獣人族も人族の持つ魔法という優位を蔑ろにできないところはある。何しろ魔族の多くも、魔法を使うことが出来るのだ。
例外的に上位種が妖力を持つが、ほとんどの獣人族は魔力を持たないので、いざというときの為に手元に人族を残しておきたいというのも本音なのだろう。

「ああ、だから変なところで人族が優遇されているのか」

さっき聞いたように相互契約に、十全な衣食住の提供が確保できること、そして種族保存の条約により性奴隷禁止、などがそうだ。
とはいえ奴隷なのだから、主人に絶対服従は根底にある。決まりや条約なども、主人のモラル一つで踏みにじられる可能性が絶対にないともいえないのだ。
どこまでいっても奴隷は奴隷だということだ。

「おおまかにはこんなところだ。後は、その首輪だが……じつはすごく厄介な代物でな。かなり大きな都市の奴隷ギルドにでも行かないと解除は難しいんだ」
「そうか……」

どうやらすぐには外せないらしい。心底がっかりして思わず溜息が漏れる。なにしろ金属製の首輪は、これ自体がめちゃくちゃ重くて肩がこって仕方がない。
それに人族の奴隷は、契約も解除も基本的には中立国の……どこだったか保護施設で正式な許可がいるらしく、簡単なことではないらしい。
めんどくせぇよ、人族!
なんだよ、絶滅危惧種か! 俺は朱鷺か、ウナギか!
やっとの思いで愚痴を呑み天を仰ぐと、そこにはくたびれたおっさんがプカプカ浮いていて、俺はまたもやガックリと肩を落とすことになった。

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