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霊能者、異世界を征く!~奴隷からの出発、魂の能力継いで下剋上。

るう

心底困った顔で聞いてくる男に、俺はポカンとするより他ない。
……いやいや! そんなん知るか。もともと視ることしか出来なかったんだよ、俺は。

「マヒト、くしゃみばっかりしてたが、着替えは済んだのか?」
「あ、おう! 着替え助かったよ。これ、汚れ物……どこで洗えばいいんだ?」
「汚れ物は出しておけば、昼に出かけてる間に宿屋の方で洗って貰える」
「そうなんだ、便利だな」

連泊の客のみらしいが、お金さえ払えば食事に洗濯、身体を清める水の用意など、いろいろとしてくれるらしい。

「それにしても……」
「マヒトって、すごいやせっぽっちだね」

余りまくる服をなんとか引き上げつつ歩く俺に、ヤトはさすがに気を使って口ごもったが、ルルゥはまったく遠慮がなかった。女の子に言われるとちょっとショックだ。

『ほら、だから俺もそう言っただろ』
「うるさいっ! もうどっかいけよ……あっ? ち、違う! ルルゥに言ったんじゃないぞ!」

反射的に揶揄する声に反論したが、びっくりしたルルゥが慌てて兄の後ろへと隠れた。ひたすら平謝りする俺に、ヤトはひとまず全員をテーブルへと誘った。
俺は、悪びれることなく傍にぷかぷか浮いているおっさんを睨みつけたが、これはもう先手を打っておいた方がよさそうだ。

「……先に話を聞いてからと思ったけど、まずは俺の事を話しておいた方がよさそうだから先にいいか?」

椅子に座ると、俺はヤトが話し始める前に口を開いた。
ルルゥはさっき怒鳴られたせいか、なんだか口を尖らせ頬を膨らませている。いや、本当にごめん。

「まず最初に、今日は助けてくれてありがとう! 何から何まで面倒見てもらって、世話になってばかりですまない」

まずは二人に頭を下げてお礼を言う。これは当然のことだ。だが、あまりに突然だったので、ヤトもルルゥも面食らったような顔をしている。

「それと今更なんだが、この話し方はマズイか? 俺はここのルールをしらないけど、成り行きとはいえヤトの奴隷になったってことだよな。あ、いや……えーと、ヤト様?」
「いや、やめてくれ。やむを得ず契約はしたが、本当の意味での奴隷ではないし、これまで通りで構わない」

苦笑したヤトが首を振り、話しを続けてくれというゼスチャーをしたので、俺は頷いた。

「ありがとう。じゃあ、俺の能力について聞いてくれ」

元の世界でも、この能力のせいで碌な目にあったことがない。奇異の目でみられたり、信じてもらえなくて苦しんだり、このことを話すこと自体、俺にとってはトラウマだった。
けれど、ここまではっきりと存在し、会話まで出来るとあっては、この先隠し通す自信がなかった。

「俺には、あまり一般的ではない能力がある」

神様は、魔力が稀な変化をしたと言っていた。ということは、元の世界でいう霊能力は、こちらでは普通ではないということだ。
唯一の救いは、こちらでは特殊能力といえば大抵の事象は容認されるようだ。話の端々から、人族は魔法やまじないのようなことも出来るようだし、だから変に隠さずに明かした方がいいと思った。

「霊が視えるんだ。……死んだ人の魂というか、そういったものだ。声も聞こえる」
「死んだ……というと、ゾンビとか死霊とかそういう?」
「いや、肉体を持たないからゾンビは違うかな、むしろ肉体から抜け出たもの、というか……」
「死者が稀に人を襲うモンスター化するのは聞いたことがあるが、どうやらマヒトが言っているのはそういうものではなさそうだな」

というか、そんなモンスターがいるほうが驚きなんだが。人がモンスターになるとかマジか。幽霊と、その辺の線引きはどうなっているんだろうか。
おっさんを見ると、一心不乱に首を振っている。

『……他にもたくさん死んだが、こんな風になったのは俺だけだ。ただ、幾つか死体が減っていたからそいつらはどうなったかわからない』

どうやらおっさんは、何かたくさんの死者を出した事件に巻き込まれたようだった。彼はティムという名で、つい先月までこの町で奥さんと暮らしていたらしい。
俺は、ひとまずヤトに向き直ると、未だ推測の域をでないとだけ前置をしてから、今現在わかっているだけの自分の能力のことをかいつまんで話した。

「なるほどね。俺たちが見た獣人の姿のマヒトは、ティムという青年をとり憑かせた状態だったというわけだ」

こちらでの過酷な現状を乗り切るためにも、能力を上乗せできそうなこの能力は役に立ちそうではあるんだけど、まだ詳細がわからない。もしかして、いちいち力を貸してくれる霊を探して回らないとならない、とかいう感じなのだろうか。
まだまだ検証が必要のようである。

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