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霊能者、異世界を征く!~奴隷からの出発、魂の能力継いで下剋上。

るう

宿屋にて2

「何でも……いや、また改めて話すよ。どうせいろいろ聞かないとならないし、その後にでも」
「そうか、大丈夫ならいいんだ。早く済ませて服を着ないと風邪ひくぞ」

冗談抜きで風邪をひきそうだったが、俺は再びごしごしと手拭いで身体を拭う。

「……それで、なに? アンタついてきたのかよ?」
『いや、どっちかというとつれて来られた、だぜ』

小声で聞くと、相手もどこか声をひそめて答えた。どのみち聞こえるのは俺だけなんだけど。
これまでの経緯をまとめると、身体が軽くなり急に剣術が使えるようになった要因は、間違いなくこの霊に身体を乗っ取られ……いや、意識はそのままだったから、力を借りたような状態だったようだ。
憑依、そう言っていいのかどうかわからないが、ともかくそんな感じの状態だったわけだ。意識を持っていかれなかったのは助かったが、これが神様の言っていた能力の一端なのだろうか。
理屈はわからないけれど、おそらく霊を纏うことでそいつ、その魂の持っているスキルや能力の影響を受けるようである。
正直、驚いていないわけではないし、半信半疑なのは間違いない。
けれど、神がいて、ケモ耳がいて、異世界があるのだ。喋る霊がいたって不思議ではないではないか。
幽霊という存在を身近に感じてきたので、それ自体を疑うことはなかった。

『俺も驚いたんだが、いつの間にか同化? のような感じになってて、それは解除したようなんだが……』
「アレは憑依っていうか、アンタが俺にとり憑いたような状態だったんだと思う。俺が、無意識に呼んじまったのかもだけどな。どういう理屈か知らないが、俺はそのおかげで助かった。アンタ、剣士だったのか?」
『そんな大したものじゃないが、まあ冒険者としてそこそこやっていけるだけの力はあったと思う。その慢心が今回の失敗を招いたとも言えるがな』
「……」

こんな姿になったのには、もちろんなにか事情はあったのだろう。けれど、ほとんど初対面の俺がそれを突っ込んで聞いていいのか躊躇った。
そう言えば直接見ることは出来なかったが、憑依している時、おそらく俺は犬耳だった。
もしかして能力だけでなく、姿形まで当人そっくりになるのだろうか? いや、それなら俺からコイツが落ちた時のヤトたちの驚きはあんなものではなかっただろう。そうなると、特徴など一部が影響されるということだろうか。
天井辺りで胡坐をかいた犬の獣人霊を仰ぎ見て、俺は一つため息をつくと、畳んで置いてある服を取り、すっかり鳥肌になってしまった身体に羽織った。
それがまたひんやりと冷たくて、ヒエッという声が溜まらず漏れる。
寒いの寒くないのって、ぶるっと身震いをして連続でくしゃみをした。慌てて上から下まで着こんだが、案の定というかサイズがまったく合わない。
足の裾がだいぶ引きずり、襟ぐりは片方がずり下がり、袖からは手が出ない。
想像してみてくれよ、二メートルの細マッチョの服を、せいぜい百七十前後のひょろ男が着たらどうなるか……まあ、こうなるよな。

『おまえ……気の毒にな。よっぽど貧しい暮らしをしていたんだな。そんなにやせ細って』
「いや、待て! そこまで言われるほどじゃないと思うぞ。それより、アンタまだいたのかよ……」

確かにガタイが良いとは言わないが、日本の俺くらいの年齢ならこんなもんだ。もちろんアスリートなんかと比べるなよ。なにより俺は、長いこと引きこもってたしな……って、自慢にはならんが。
それはともかく、相変わらずつかず離れずの距離に陣取り、未だに話しかけてくるそいつに思わずため息を付いた。

「どういうつもりだ? 確かに連れてきてしまったのは悪かったが、もう憑依はしてないんだからどこへでもいけばいいだろうに」
『だから、言っただろうがなぜだか移動ができんのだ』

ぷかぷか浮いているそいつは鼻の頭をかきながら、うーんと頭を抱えた。

『なあ、一つ聞いていいか?』
「なんだよ?」

今まで着ていた血だらけの服を、ヤトが用意してくれた袋に突っ込みながら生返事を返した。

『……俺ってどうやったら成仏するんだ?』

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