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霊能者、異世界を征く!~奴隷からの出発、魂の能力継いで下剋上。

るう

町へ

デコボココンビは、もはや所有権が得られないとなったら、潔くさっさと逃げていった。
例のキツネの兄妹は、倒した獲物を解体して、麻袋のようなものに小分けしてまとめている。逃げた男たちが仕留めた大きな犬のような獣も、ついでだからと素材剥ぎをして、ありがたくいただくことにしたようだ。戻って来るとは思えないし、迷惑料みたいなものだろう。
彼らは、もともとは薬草摘みと角兎ホーンラビットの討伐に来たらしく、その途中で例のオークに襲われたという。この辺ではめったにない大物だったので、追いかけてきて仕留めたとのことだ。
依頼の討伐は途中だったようだが、今日はもう遅くなってしまったので、取りあえず町に戻ろうということになった。

「俺はヤト、こっちは妹のルルゥ、二人とも冒険者だ」
「あ、えと。お、俺は、有栖川 真人だ」

森を抜けたところで、兄妹が自己紹介をしたのでこちらもそれに答えた。

「……アリス? まさか君は女の子なのか」
「いやいやっ! マヒトだよ、アリスガワマヒト!」

いくら何でも女には見えないだろ?! もしかして、こちらには苗字という概念がないのだろうか……。
こんな具合に、こちらの常識がなにもわからない状態で異世界に放り出されたわけだが、こうして彼らに出会えたことはラッキーだったのかもしれない。
でなきゃ、路頭に迷うところだ。というか、さっそく奴隷にされて連れ去られるところだったわけだが。

「それでさ、これって外れないの?」

当然、首に嵌った輪っかの事だ。もちろん助けて貰って感謝してるけど、犬じゃないんだから首輪は勘弁して欲しい。従属の首輪とか言っていたが、これが奴隷の証とかいうなら、結局のところ奴隷にされたってことなんだよな。

「そのことなんだけど……うーん、話すと長くなるし、詳しくは町に着いてからだ」

ヤトとルルゥはこの先の町で宿を取っているらしい。

「……え、あれ?」

取りあえずついて行くしかない俺は、彼らに続いて歩き出そうとしたが、すぐに足をもつれさせて前のめりに倒れ込んだ。
いきなり身体から何かが抜けるような虚脱感に、辛うじて身体を支えたものの腕からも力が抜け、すぐにカエルのように潰れる羽目になった。

「うおっ!? またかよ、身体重っ……」

目の端に蜃気楼のように揺らめく人影が映って、フイッと姿を消した。あの時の幽霊なのか……もしかして、さっきまでの強化状態はあの霊の影響だった? 憑依とかそういう?
なにがなんだかさっぱりだ。わからないことだらけで混乱しているが、とにかくあの幽霊が身体から抜けたせいで、もとの状態に戻ったって考えればいいのか。
ずっとあのままというわけじゃないんだな。
それはそれで正直それも怖い気がするけど、だが困った……動けないぞ。

「だ、大丈夫か? どうしたんだ、いきなり……って、これは」
「……お兄ちゃん、この人」
「ああ、そうだな……やはり人族だったようだ。一体、どういう術なのか」
「動けないみたいだけど、どうする?」

妹ちゃんのちょっと冷たい声がチクチク刺さる。
情けないけど……頼む、置いて行かないで!
俺は、結局ヤトに荷物のように担がれて運ばれることになった。この辺は、夜になるとモンスターがたくさん出現するらしく、とても危険だということだ。
お兄ちゃん大好きなルルゥはちょっと面白くなさそうだったが、俺だって不本意極まりない。感謝はしているけれど……ね。
しばらくすると、やがて大きな門が見えてきた。
辺りはすっかり薄暗くなり、門番が松明に火を入れている所だった。

「ギリギリだったな、もうすぐ閉まる時間だ。早く入りな」

大柄な男で、肩幅が俺の倍はあろうかという巨漢だった。そして、もちろん可愛い耳が付いている。
なんだろう、熊?
プロレスラーみたいな男の頭に、丸くてキュートな耳……いやもう辛い。

「あれ? ……人族なんて連れてたか」
「……事情があってな」
「そうか、ちょっと待ってろよ」

門番の詰所から、もう一人の若い男が出てきた。門番の男とは違って、なんだかインテリ風の男だった。それでも俺から見たらやっぱり筋肉がスゴイ。たぶん、脱いだら腹が割れているだろう。

「逃亡奴隷や犯罪奴隷だと困るからな」

俺の前に水晶のような透明な玉が差し出された。若い男がそれを両手で掬うように持っており、上に手を乗せろと言った。なんだろう、鑑定かなにかだろうか。
透明な玉はスゥーッと濁り、白っぽい色になるとすぐに青に染まった。

「犯罪、逃亡奴隷のチェッカーにはひっかからないな……というか、登録がないのか。はぐれだな?」
「らしいな、そこの森で保護した」

報告を受けた門番は頷いて、しかしすぐに首輪に気が付いてニヤリと笑った。

「あんたも手が早いな……でも、こりゃ弱っちそうな個体だな。せっかく捕まえた人族なのに、もったいないこった」
「これは……いや、いい。それで、通っていいのか?」

ヤトが会話に乗ってこないのを見ると、門番はつまらなさそうに肩を竦めて、芝居じみた仕草で中へ促すようなゼスチャーをした。

「失礼な奴だ……マヒトも、気にするなよ」
「え? あ、おう……」

よくわからなかったが、あのマッチョが俺を物扱いしていたのはわかった。ここでは獣人が上位で、人族が下位という扱いということだろうか。
どちらにしても、こちらの世界のチュートリアルをもっと聞きたい。
いまとのころ、この兄妹に頼りっきりで一人では歩くことさえままならないが、いずれ一人になってもどうにかできるように、もっとたくさんの情報を集める必要がある。
そうして俺はヤトに抱えられたまま、明かりの灯り始めた町への門をくぐった。

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